くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「エヴァの匂い」「女は二度決断する」

kurawan2018-04-16

エヴァの匂い
センスのいい監督というのはどんな俗っぽい物語も端正でスタイリッシュに仕上げてしまうなと思います。この映画もそんな一本。シンプルな室内のセットを有効に使用し、鏡の演出を交えた映像作りはもちろんですが、外の景色の捉え方も実に美しい。しかも、流れる音楽の選曲も素敵。監督はジョセフ・ロージー

自分の小説が映画化され脚光を浴びているタイビアンの姿から映画が始まる。女優のフランチェスカとの結婚も決まり順風満帆な彼は、ある時ホテルに戻ると一人の女と付き人の男が勝手に部屋に入っていた。彼女の名前はエヴァ。一時は追い出そうと身構えたタイビアンだが、その美しさに滞在を許す。そしてみるみる彼女の魅力に夢中になって行く。

室内の調度品は非常にシンプルなものが揃えられていますが、鏡やカメラアングル、長回しによるカメラワークの妙味で、非常に広々した空間を見せてくれます。さらにエヴァが場面場面でかけるレコードの音楽が実に美しく、映画がとってもスタイリッシュに見えてきます。

タイビアンは、エヴァの望むように最高級のホテルの部屋を取り、エヴァと週末を過ごすが、帰り際にエヴァはお金を要求する。それも常識の額では満足せず、どこかタイビアンを弄んでいるかのごとくである。そんな彼女の態度でもエヴァの魅力から逃れられないタイビアンは、エヴァが別の男と遊んでいても、入り込もうと躍起になる。

一方で、そんな自分を責めるタイビアンは間も無く予定通りフランチェスカと結婚
愛する妻と幸せな生活になるかに思われたが、フランチェスカには次の出演依頼が舞い込む。一方エヴァを忘れられないタイビアンはエヴァと過ごすがそこにフランチェスカが現れ、現場を見た彼女は半狂乱にボートに乗って去り、事故で死んでしまう。

そして二年、タイビアンは未だにエヴァを追い求め、彼女の行くところに現れている。カメラは大きく俯瞰で引きの画面を取り、ゆっくりと港の景色を捉えながら映画が終わる。

映画のクオリティの高さはやはり監督の才能でしょうか、見ていて気持ちがいいほどにスタイリッシュなのが印象的な作品でした。


女は二度決断する
圧倒的な迫力で迫る復讐ドラマの傑作。確かにやるせないラストシーンだし、社会テーマがそのメインであろうと思う一本ですが、ダイアン・クルーガーのものすごい演技力に圧倒されながら最後まで目を離せない映画でした。監督はファティ・アキン

ひとりの男が留置所で祝福される姿から映画が始まる。この男ヌーリーはカティヤと今日結婚をするのです。そして数年後、二人の間には男の子ロッコが生まれヌーリーも堅気の仕事を頑張っている。この日、カティヤはロッコをヌーリーの事務所に預け出かけようとする。事務所を出たところで新品の自転車を放置する女性に注意し、その場を後にする。そしてその夜、ロッコを迎えに事務所に着くと人だかり。爆弾が仕掛けられ負傷者が出たという。間も無くヌーリーとロッコが死んだ旨知らされる。

程なくして犯人はネオナチではという疑いがでるが、全てを失ったカティヤはわずかの麻薬と酒に溺れ、間も無く浴槽で手首を切る。しかしすんでのところで、友人の弁護士から連絡があり、犯人が捕まったという。

こうして、後半は裁判シーンとなる。ほとんど発言することもないダイアン・クルーガーの演技が抜群に光るのはこの場面である。

明らかに有罪と思われた展開で裁判は終わるが、結局、犯人は無罪に。カティヤは犯人たちの居場所を突き止め、ネットのサイトなどから同じ爆弾を作り殺そうと計画するが、あと一歩で断念する。

友人の弁護士から、上告しようと提案がありカティヤは了解するが、再度、作った爆弾を持って犯人たちが浜辺で過ごすキャンピングカーのところへ向かう。そして爆弾をだき、車の中に乗り込んで爆破。映画が終わる。

とにかくものすごく作り込まれた演出が見事で、ただただ圧倒されるし、ダイアン・クルガーの抜群の演技がさらにクオリティを上げる。素晴らしい映画ですが、物語やテーマとしては好みではありません。