くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ダンケルク」(1964年版)「仮面の報酬」「ブルー・ガーディ

kurawan2018-04-19

ダンケルク」(1964年版)
先日公開されたクリストファー・ノーラン監督版のオリジナル版の方の作品で、こちらはフランス兵士を主人公にして映画が展開する。ただ、全体の雰囲気はほとんどおなじで、スケールの大きな浜辺のシーンを何度も写しながら、様々なエピソードを描いていく。時折くる爆撃機が実に迫力があり、この辺りのリズムづくりは流石に上手いなと思います。監督はアンリ・ベルヌイユ

主人公と呼ぶのかどうかわかりませんが、一人のフランス兵ジュリアンがダンケルクの海岸にいる場面から映画が始まる。なんとか脱出の船に乗ろうとするが、フランス兵は乗せてもらえず、その中で、たまたま知り合ったイギリスの司令官の口添えで、船に乗ったものの、その船も爆撃された再び海岸に戻る。

このエピソードに先立ち、ジュリアンは、海岸裏の家に住む無鉄砲なジャンヌと知り合っている。たまたまその家を再度訪ねると悲鳴が聞こえるので行ってみると二人の兵士におそわれていた。ジュリアンは二人のフランス兵を撃ち殺し、二人は急激に接近、体を合わせる。そして、その責任も感じたジュリアンはジャンヌに一緒に脱出しようと提案、普段アジトにしている壊れた車で待つ時刻を約束する。

しかし、その車で一緒に過ごしたジュリアンの仲間も一人また一人と死んで、残ったメンバーと、無事を約束して別れていた。

やがて約束の時間が迫るが、ドイツ軍の爆撃機が迫ってくる。そしてとうとうジュリアンのアジトにも爆弾が落ち、ジュリアンは倒れる。そして死の寸前、かなたに、こちらに向かってくるジャンヌの姿が映り映画が終わる。

この辺りの締めはやはりフランス映画だなと思いますが、はるかかなたまで広がる海岸の兵隊の群衆シーンや何機も襲ってくる爆撃機がすぐ頭上を通過する映像がとにかくもの凄い迫力である。スペクタクル性、ラブロマンスと典型的な娯楽映画に仕上がっているものの、所々に挿入される戦争の馬鹿らしさのメッセージもしっかり描けている。なかなか見ごたえのある映画でした。


「仮面の報酬」
うまい。その一言に尽きる。娯楽映画とはこう作るのだというお手本のような作品。テンポとユーモアを絡めてどんどんスピーディに進む。まさに職人芸でした。監督はドン・シーゲル

ベラクルスの街にデュークがやってくる。港に降りたところでジョーンという女性と絡み、この女性がフィスクという男と会う。実はデュークはフィスクを追ってきたのだが、ジョーンといる部屋に入ってきて、フィスクはまんまとジョーンを巻いてにげる。仕方なく、デュークとジョーンはフィスクをおいかける。

ここにデュークを追ってきたブレイクが現れる。こうして三つ巴のカーチェイスなのだが、古臭い車で、しかも荒れた道をひたすら追っかけっこをする下りのうまいこと。さりげないユーモアを次々と絡めながら、どんどん話が見えてくる演出の見事さに舌を巻きます。

そして、最後はフィスクも倒れ、ブレイクもたおれ、いつのまにか仲良くなったデュークとジョーンのラブシーンでエンディング。

さりげないカットや台詞に様々な伏線から、念の入ったサービス満点の映画づくりは絶品。これが映画です。もっと今の監督は勉強すべきだとおもいます。


ブルー・ガーディニア
面白い。ただその一言につける。これもまた映画の面白さを知った演出家が作るとこうなる。全体の流れがだいたいわかるにもかかわらずどんどん引き込まれる。監督はフリッツ・ラング

新聞記者のメイシーが電話交換手がいるところに入ってくる。そこに女好きな画家のハリーがいる。メイシーは一人の交換手の電話番号を聞く。それを傍で覚えるハリー。

場面が変わると、電話交換手のノーラが家に帰ってくる、同居人のクリスタルらは男友達と遊びに行くが、ノーラは朝鮮にいる恋人の写真を前に一人で自分の誕生日を祝おうとする。そして、彼からの手紙を開いたのだが、そこには別れの内容が書かれていた。

自暴自棄になった彼女は、ハリーからクリスタルにかかってきた誘いの電話に乗りハリーのところへでかける。そして、泥酔いしてハリーの家について行ったノーラは、ハリーの強引な態度に思わず火搔き棒を取ってしまう。鏡が割れて、意識を失う彼女。

翌朝、自宅で目覚めたノーラはハリーが殺害されたことを知る。記憶はないが、自分が殺したと思った彼女は、証拠として警察が探しているらしいドレスやパンプスを焼いてしまう。

メイシーは、犯人に接触するべく、極秘に連絡をくれるように記事を出す。精神的にに追い詰められたノーラはメイシーに連絡をとり、告白をする。そして、翌日再度会う約束をし、その場所へ行くと刑事が待っていた。そしてノーラは逮捕される。

ところが、ノーラが殺害現場で聞いたという曲が、殺害現場に駆けつけたときに流れていた曲と違うことに気がついたメイシーは、再度刑事に捜査を依頼。そしてレコード店の店員の女性に事情を聞きに行ったが、女性もハリーと付き合っていて、彼女は、すべてバレたと思い自殺未遂をする。一命はとりとめた彼女は全てを告白する。なんと、真犯人の女性を演じたのはアン・バクスターなのだからすごい。

だいたい、真犯人が別にいるのは最初から薄々わかっているのに、引き込まれてしまう。全く見事である。これが見せるということだと思います。


「ミステリー・ストリート」
これもまた面白かった。畳み掛けるような展開、事細かく埋め込まれた伏線、周到な脚本、とにかく緻密すぎる。監督はジョン・スタージェス

カフェのダンサービビアンがどこかに電話をしている。生活が苦しいらしく、女大家が執拗に家賃を催促してくるが、近々お金が入るからとはぐらかすビビアン。

ビビアンは勤め先のカフェで一人の酔っ払いを見つけ、その男の車に乗って出かける。そして途中で誰かに電話をし、その直後車を盗んで目的の場所らしいところに行くが、そこで誰かに銃で殺される。車は沼に沈められ犯人はさる。

浜辺で鳥の研究をしていた男が白骨死体を見つけ事件が起こる。そしてハーバード大学の法医学教授が呼ばれて、死体の状況を解明して行くのが前半。そして犯人は、ビビアンと一緒に乗った酔っ払いの男とされ逮捕するが、凶器の拳銃が見つからない。

一方、ビビアンのアパートの大家が、ビビアンがかけていた電話の番号を知り、その相手の男のところに行き、そこで、男が部屋を空けた隙に銃を見つけて持ち帰る。のちにこれが凶器とわかった大家の女は金を要求する下りとなる。

たまたま大家が住人の一人に銃のことを聞いたことから、刑事は大家が持っていると判断するが、一方真犯人の男も大家に呼ばれ大家の部屋にやってくる。そして、大家を殺そうとしたところへ刑事がやってきて、真犯人は逃げる。

銃は大家が駅の一時預かりに託していたため、真犯人はそれを取りに行く。一方刑事も大家の部屋で鍵を見つけ、一時預かり所へ。そして追跡の末犯人を逮捕する。

大学の法医学による科学捜査のような展開がおそらくこの当時では珍しい刑事ものになっている作品で、前半と後半の組み立ての構成や、細かい設定が実によく練られている。もちろん、ジョン・スタージェスの演出も見事で、知的なサスペンス映画としてもなかなかの一本だった気がします。本当に面白かった。