くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラスト・ワルツ」「マルクス・エンゲルス」

kurawan2018-05-16

「ラスト・ワルツ」(大音響リマスター版)
アメリカのロックバンド「ザ・バンド」のラストコンサートを映像にしたマーティン・スコセッシ監督の名作。私はこういう記録映画を映像として評する感性は持っていないと思いますが、これは名作の空気を感じてしまいました。

ビリヤードの玉をつくシーンから映画が幕を開けます。そして、バンドメンバーそれぞれを捉えるカメラアングルと全体の舞台のカットを繰り返す構成の美しさ、ゆっくりと動くカメラワークの流麗さ、挿入される音楽のうまさなどなど、一味違う何かが見える。

私はロックバンドに詳しいわけでもないけれど、このラストコンサートには、かつて「ザ・バンド」がバックバンドを務めていた時のボブ・ディランエリック・クラプトンニール・ヤング、ジョニー・ミッチェル、などそうそうたるメンバーが集まる。それゆえ、出てくるアーティストはどれもあまりにポピュラーで有名人ばかりなので、その辺りのとっつきも悪くなかった。

ツアーで死んでいった仲間達にはなりたくないという最後の言葉の後、全ての演奏が終盤を迎え、ぼんやりとセンターに浮かび上がる舞台上で最後の演奏が行われる。カメラはゆっくりと引いていってやがてエンディング。

音楽映画の名作とはよく言ったものです。見て良かった。


マルクス・エンゲルス
今まで彼らを描いた映画がなかった気がしますが、とにかく、カール・マルクスとフリードリッヒ・エンゲルスの若き火を描いた作品で、これということもない普通の作品でした。物語の結末に向かってしっかりと脚本が書かれていないために、終盤まではただ二人の出会いと交流が淡々と描かれて行きます。これも、ストーリーテリングでしょうか。監督はラウル・ペック

時は1943年、産業革命による貧富の差の拡大、経営者と労働者という二極化は社会に貧困層を拡大している。そんな中、過激な経済論を展開するマルクスはドイツから追われフランスにやってくる。

一方、イギリスの紡績工場の経営者を父に持つエンゲルスは、父の経営方針に賛同できず、フランスへやってくる。そして、マルクスと出会う。

それぞれの持論に共通点を見出し、意気投合した二人は、新しい労働運動を展開すべく協力して行く。物語は二人の活躍とそれぞれの人生を語りながら展開して行くが、どうも運動に対する彼らの個性が今ひとつ浮き上がって来ない。

結果、ストーリーの核になるものが見えず、ラストで「共産党宣言」をするクライマックスだけが引き立って浮いてしまった感じです。二人の人間ドラマの部分が弱いためにすっペラい作品に仕上がった感が強く、歴史の1ページの勉強になったというだけの感想になりました。