くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「名もなき野良犬の輪舞」「29歳問題」「ビューティフル・デ

kurawan2018-06-01

名もなき野良犬の輪舞(ロンド)」
少々作り込み過ぎている気もしますが、韓国バイオレンス映画としてはかなり面白い一本でした。ストーリーの組み立て、カットバックの手腕もなかなかのもので映画になっている映像作りが秀逸。監督はビョン・ソンヒョン

映画が始まると岸壁で魚を食べている二人の男。魚をうまそうに食べている男が突然撃たれ映画が始まる。実は撃たれた男は潜入捜査官だったらしい。

カットが変わると一人の若者ヒョンスが刑務所を出てくる。真っ赤な車が迎えにきていて、出てきたのはジェホという男。時が少し遡り、ヒョンスが刑務所の中でちょっとした殴り合いの勝負で頭角を現し、刑務所内のボス的存在のジェホに認められる場面へ。

しばらくして刑務所に別の実力者キムがやってきて、ジェホの地位が奪われるが、命を狙われたジェホをヒョンスが助けたためにさらに仲が良くなり、その上ジェホは刑務所内の実力を奪い返す。

ところが実はヒョンスは警察の潜入捜査官で、ジェホらの組織を壊滅させるために3年間刑務所に入ったのである。そして、その見返りは母親のドナーを優先してもらうということだったが、手術が決まった日交通事故で死んでしまう。その葬儀に帰宅させるようにジェホが懇願した為に、ますますヒョンスとジェホは親密になって行くのである。

こうして出所し、ジェホはヒョンスに自分の組織に来いと誘う。ヒョンスはその時自分は警察官だと打ち明ける。

実は刑務所でジェホを殺そうとしたのは組織のボス、コ会長であることを知ったジェホは会長の甥も巻き込んでトップにおどり出る計画を立てる。折しもロシアの組織と50キロの麻薬取引の話が進み、ヒョンスにも警察本部のチョンチーム長から情報を取るように依頼が来ていた。

しかし、ジェホは最初からヒョンスが警官であることを知っていて、逆に利用する為懇意になるべく母親の交通事故も計画したのだった。そしてそのことをチョンも知ったのだが、目的達成のためにヒョンスに告げなかった。

そして取引の夜、チョンの待ち構える中、ジェホたちが取引現場でいる。チョンが踏み込むと、なんと、荷物の中身はアダルトグッズで、まんまと騙されてしまう。しかし海に投げ込んだ荷物は塩が溶けて2時間後に麻薬となり無事取引が終了。この計画もジェホらが仕掛けたものだった。しかし、最後の最後ジェホはコ会長を殺し、組織のトップにおどり出る。

そしてここに来てチェンは母の死の真相を聞かされ、ジェホを殺すためにジェホの心に疑念を抱かせ、まず甥を殺させる。その後、ヒョンスはジェホを麻薬取引で逮捕するべく待ち合わせ場所に呼び出し、チェンも待ち構える。しかし、チョンは甥を殺して出て来たジェホを車で轢き殺す。そこへ降りて来たヒョンスは、自分を駒のように使ったチョンを撃ち殺し、ジェホに銃を握らせジェホに最後のトドメを刺し、殺してしまう。

騙しあい、裏切りと策略の中で生きることに飽き飽きして来たジェホの顔には安堵があった。

男のドラマとしてやたら重苦しいものの、二転三転、パズルのように組み合わせられたストーリーの組み立てが実に面白くて最後まで飽きさせない。フィルムノワール的な画面作りもなかなかの一本で、見応えのある映画でした。


29歳問題
香港で12年間も一人芝居で舞台が演じられて来た作品の映画版らしいですが、なかなか見応えのある楽しい作品でした。監督は自ら演じていたキーレン・パン

朝、目覚めるといつものように起きて歯磨きをして、化粧をして、身繕いして会社に出かける主人公コックワンのコミカルなシーンから映画が始まる。絵画的に配置された画面や映像にまず引き込まれる。

会社では仕事ができるOLで、オフには同じ年の仲間と女子トーク、彼女は間も無く30歳を迎えよう雨としていた。彼氏もいるが、最近は疎遠な関係になっている。父は痴呆気味で、やたら電話をかけてくる。

そして彼女はこの日昇進することになるのだが、30歳を前に何か自分に吹っ切れないものをに感じていた。そんな矢先部屋が水漏れで引っ越さなければいけなくなり、とりあえず紹介された部屋に一時、間借りすることにする。その部屋の住人ティンロはパリに旅行してしまい、コックワンはたまたま見かけたティンロの日記を読み始める。

レスリー・チャンが好きで中学生の時からパリに行くのが夢で、ようやくその夢を叶え出かけたらしい。ポラロイド写真をやたら撮っては日記帳や壁に貼っている陽気なティンロの日記を読んで行くうちに、コックワンは自分の中の何かを発見して行く。そして会社も辞め、恋人とも半分別れた状態になり、ティンロの日記を読み進む。間も無く、父も亡くなり、過去の思い出などもフラッシュバックされる。

そして日記の終盤、ティンロが乳がんであると知る。そして、パリに発つ前に恋人とSEXしようとするが恋人は快復してからにしようと彼女を送り出す。

やがてティンロの姿とコックワンの姿は一つになり、二人でパリの街で楽しんでいる姿でエンディング。コックワンはティンロのおかげで新たな一歩を前進したのである。

映像にするにあたり、やや無理のかかったところもあるものの、フラッシュバックと二人の人物が重なって行く下りの面白さがなかなか見応えがあります。舞台劇の方がいいかもしれませんが、見て損のない一本でした


ビューティフル・デイ
だらだらとした意味ありげな画面を繰り返すなんとも間延びした映像展開に辟易としてしまった。原作があるらしいが、結局どう言う方向で映像化しているのかわからないままに終わってしまいました。監督はリン・ラムジー

暗い画面に数字を逆に数える声が被って、袋を顔にかぶった男のカット、女の子の持ち物らしいアクセサリーの散乱から映画が始まる。どうやらこの男ジョーが主人公らしく、空港に向かっていき、公衆電話から「完了した」と報告する。

帰ってみれば年老いた母がいて、彼は行方不明になった少女を探す仕事をしているらしいが、それも解説を読んでいたからわかったような描写。元請けらしい男にあって、次の仕事はある上院議員の娘ニーナを見つけて欲しいと言う。

で、難なく娘を見つけて、救出し、ホテルにかくまい、父親の来るのを待っていると
テレビニュースで父親は飛び降り自殺し、間も無くして得体のしれない男がやって来て、ニーナを連れ去ってしまう。

戻ってみれば元請けの男も殺されていて、母も殺されていて、どうやらウィリアム市長が少女を買い連れ去ったらしいことがわかり、ウィリアム市長の別荘らしいところに行くと市長も殺されていて、ニーナだけ一人いた。

ジョーはニーナを連れて脱出し、レストランで二人が食事している。突然ジョーは自分を撃ってその場に倒れるが、実は眠っていただけで、ニーナが戻り「今日はビューティフル・デイ」とつぶやき出かけて行ってエンディング。

どこかトラウマがあるようなジョーの振る舞い、薬を常用しているようで、全てが彼の幻覚だったのか夢だったのかわからないという理解の仕方もある映像展開である。
いずれにせよ、独りよがり的な演出で、こちらに伝えると言う意思が見られない作品だった。