「妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII」
いい加減に名作のをパロディにした題名はやめて欲しい。実力があるのだから真正面からリメイクにチャレンジしたらどうだろう。こんなことをしているから、若手監督が勉強しないのではないかと思う。しかも、前作はさすが山田洋次と思わせるほどの傑作だったが、今回はどこを取ってもみんなテンポが少しずれていて、全くリズムに乗り切れていない。しかも、展開も今ひとつでいいとこなしの映画だった。
例によって、平田家の日常から幕を開ける。せかせかと主婦の仕事をこなす幸之助の妻文枝。いつもの毎日が繰り返されると思われたが、幸之助が出張で家をあけた時に事件が起こる。
文枝がたまたま疲れて二階で居眠りをしている時、一回に泥棒が入り、文枝が貯めたへそくりを取られてしまう。帰ってきた幸之助は、自分が稼いだ金を取られたと文枝を責め、とうとう、文枝は家を出てしまう。
物語は文枝が家を出て右往左往する平田家をコミカルに描くはずが、どのシーンも滑っていて、どこかワンテンポ狂っている。しかも、幸之助が文枝を迎えに行く下りからのクライマックスも非常に弱いために、全体が畳みかけていかない。
結局、文枝が帰ってきてハッピーエンド、と言うのは最初からわかっているのだが
散りばめられる笑いのシーンのセリフのタイミング、仕草のタイミングが全部ずれている。一体、前作のあの絶妙の演出手腕はどこに行ったのかと言う感じである。
見るほどでもなかったなと思えるような映画を、天下の山田洋次が撮ってどうするのと言う一本でした。
「OVER DRIVE」
普通の映画ですが、スピーディに展開するので粗が目立つ前にクライマックスになりそのまま素直な感動を呼んで終わりました。監督は羽住英一郎です。
公道自動車レース「ラリー」の場面から物語が始まる。強気の天才ドライバー直純はその兄でメカニックの篤洋の助言を無視しては無茶をしながらレースを勝ち進んできた。どこか険悪なムードがちらほらする中直純のマネージメント担当で遠藤ひかるがやってくる。という流れだが、この遠藤ひかるの存在は別になくても物語に何の問題もないからおもしろい。
一応、遠藤ひかるが直純と篤洋の兄弟の確執の原因のナビゲーター的な役割を担っているが、ほとんど影響なく、兄弟は自分たちで解決しクライマックスに至るのが何とも微笑ましいほど薄っぺらい。
次々とラリーの舞台が変わっていき、過酷なレースシーンがスピーディに展開、ストーリー展開の雑座はそっちのけにどんどん物語が進む。
どうやら兄弟の確執の原因は若き日の三角関係的な女性の問題であるようで、その女性がボストンでの乱射事件で死んだという事件をきっかけに溝ができている風である。
そしてライバルチームとの鎬を削る攻防戦もクライマックスとなり、いよいよというときに、大トラブル。これで終わりかというところで水没した車を一晩で直した篤洋の前に兄の思いに応えるべく颯爽と直純が登場。二人の関係も修復されレースで勝利するという大団円。
脇役の心が次第にラリーにのめりこんでいく様をさりげなく描いて、映画が終わります。
非常にシンプルで、前半はどうなることかと思いましたが、後半に進むにつれてどんどん良くなって、何とかラストは感動しました。とはいえ、普通の映画でした。