「リディバイダー」
普通のカメラアングルと一人称カメラの映像を交互に駆使しながら、現実の世界と全くコピーされた世界の攻防を描くSFサスペンスは、その斬新さは面白いが、もうちょっとストーリーにも工夫が欲しかった気がします。監督はティム・スミット。
主人公ウィルの平和な家族のショットから映画が始まる。彼方には巨大な塔がそびえていて、エネルギーの枯渇問題の解決のために、今まさにコピー世界が造られようとしていた。
カウントダウンの後、塔が稼働し、地球と全く同じ世界が完成、そこからエネルギーを獲得するはずだったが、何かの不具合が発生する。そこで、元NASAのパイロットでもあったウィルに、ある機械をエコーワールドに届ける任務が与えられる。そしてウィルはエコーワールドにたどり着くが、そこには死体が散乱し、荒廃した世界になっていた。
どうやらエコーワールドの塔にはテロ集団が潜入、元世界を破壊しようとしていた。ウィルは攻防の末、自らも犠牲になりエコーワールドを破壊、元世界の家族を守る。
というのがストーリーである。エコーワールドの攻防戦はまるでテレビゲームを見ているように一人称カメラで描かれるのですが、確かに斬新ですが、だんだん妙に苛立ちを覚えてくる。元世界ののどかな空気に潜む悲壮感が今ひとつ描写されていないので、エコーワールドでの緊迫した展開にリアリティが生み出されなくなったためかもしれません。
面白い発想の映画なので、もう一工夫ストーリー構成も工夫すれば、もっとシュールで斬新な仕上がりになった気がします。
「榎田貿易堂」
こういう、ひたすら会話のテンポで見せるゆるゆるな映画大好きです。これという中身があるのかないのかは見る人それぞれのいまの境遇に任せて、散りばめられるユーモアと、なんか人生訓をさりげなく盛り込む。だからどうという作品ですが好きな人には好きという一本。監督は飯塚健。
上京したものの、これという成果もなく故郷の群馬に戻ってきて、勘で「榎田貿易堂」というリサイクルショップを開いた榎田。この店には、どこか人生に疑問を持っている千秋、清春なども集まり、さらに常連のヨーコや映像で人肌あげようとしたものの助監督から目が出ず故郷の旅館に戻ってきた丈なども集まってくる。
あとはさりげない日常に、女、SEX、人生訓などなどが入り乱れてユーモア満点に展開して行く。
会話のボケとツッコミ、テンポ良い掛け合いで見せて行く話は、時にしんみりと人生を考えさせるシーンを盛り込み、やがて、これまた勘で店を閉めることにした榎と、思わぬ旅館の繁盛で千秋たちを誘う丈の姿でエンディング。
人生は予行演習ができないんだからとどんどん行動に移すヨーコの姿にさりげないテーマを盛り込んで、何気なくラストで、何か考えさせられてしまう。とってもゆるゆるのいい映画だった。こういう映画大好きです。