くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「君が君で君だ」「エヴァ」

kurawan2018-07-18

君が君で君だ
物語が完全に破綻した独りよがりの映画。ラストまでストレスが溜まるだけの一本でした。いったいどこをどう描きたいのかが監督自身の頭の中にしかなくて、それを映像にするのに芸達者な役者の演技のみに任せている感じ。監督は松井大悟。

二人の若者がカラオケで歌っている。そこに入ってきた可愛らしい店員。帰り道、その店員が男たちに絡まれているのを見た二人は果敢にも助けに入るが返り討ちにあう。しかもその女の子は瓶を割って反撃。

怪我をした若者の一人にタオルを貸してやり、二人は近づくのだが、画面はそこから十年後に一気に飛ぶ。

とあるアパートの一室で何やら向かいの部屋を覗く三人。冒頭の若者二人と坂本龍馬のいでたちのおっさん一人。どうやら向かいのアパートにはかつての女の子がいるらしく、細かく観察し、同じ生活をしている異様な三人が描かれていく。

その女の子は韓国から日本にきたハンという名前の子で、いつの間にか彼女を守るために向かいに部屋をとって国を作って、ひたすら観察しているらしい。ハンの憧れの三人に扮した若者二人とおっさん。ブラビ、尾崎豊坂本龍馬となって十年間彼女を守ってきた、と言うらしいが異常である。

ハンの同棲している彼氏は借金を作りやくざ者に追われていて、この日も取り立てのチンピラとその親分肌の女がやってきていた。

たまたま子にヤクザもんに絡んでしまったために、尾崎たち三人とハン、そしてハンの彼氏との奇妙なドラマが展開し始めるのだが、なんともカメラワークも適当、演技演出も適当、展開もまとまりがない。

ハンを守るためにと居座る三人の行動は守ると言うより事細かに観察しているだけにしか見えないし、そもそも、冒頭のタオルの下はどうなったのか。

しかも、フラッシュバックで三人が今に至る経緯も描かれるが、尾崎豊になっている池松壮亮の存在が微妙に外れている。にもかかわらず、ラストでハンが去る時に、空港へ急いで駆けつける尾崎や告白するイメージ、韓国に旅立つ彼のショットで終わるという流れが突拍子も無い展開にしか見えない。

誰かの妄想とか、現実ではないファンタジーとか、そういうつくりならと考えなくもないが、それもどこか収束しない中途半端がある。

要するに尾崎はハンが好きだったのか?と言う根幹のメッセージが吹っ飛んだまま、ラストでいきなり取り繕って終わるには、よく分からなかった。カスのような一本でした。


エヴァ
オリジナル作品「エヴァの匂い」のリメイクらしいが、つい四月に見たオリジナル版と格段に出来栄えが違いました。やたら意味ありげに繰り返される暗転に近いフェードアウトと、イザベル・ユペールの魔性の女の空気がどうもしっくりこなくて、不気味で妖艶なムードが漂いきれない作品でした。監督はブノワ・ジャコー

主人公ベルトランが、戯曲作家の家を訪れる場面から映画が始まる。どうやらその老人の世話をしているのか、臨時で呼ばれたのかそういう感じである。その老人を風呂場に連れて行ったのだが、一緒に入ろうと金をくれる。どうやらそういう趣味があるようで、意を決して服を脱ぎかけたが直後に老人は発作を起こし死んでしまう。デスクに残された「合言葉」という戯曲を盗んだベルトランは夜の街へ。

時が経ち「合言葉」という喜劇が上演され大喝采を浴び一躍人気作家となったベルトランの姿になる。フィアンセに資産家の娘カロリーヌができ、順風満帆だが、次の作品を望まれているものの当然ながら筆は進んでいなかった。

気分転換にとカロリーヌの両親の別荘に一人で出かけたベルトランは、そこで勝手に入り込んでいちゃついている老人と娼婦のエヴァに出会う。ベルトランはエヴァを襲おうとして殴られ気絶するが、後日カジノでエヴァと再会する。そして名刺をもらい、関係ができ始める。

列車の走るシーンを挿入し、それをきっかけにベルトランとエヴァが会うようになる絵作り、さらに赤を基調にした妖艶な画面が印象的である。

自作を急かされるベルトランは、カロリーヌともうまくいかず、ついエヴァと会うようになる。エヴァには美術商を営むジョルジュという夫がいるらしいが、刑務所にいるようである。そんなことはベルトランは知る由もなく関係を続ける。

やがてベルトランはエヴァのことを次作にしようと描き始めるが、現実の関係は書けるがそこから膨らんでいかない。

ある時、別荘でエヴァと会っていたが、ベルトランが外出しているところへカロリーヌが来てエヴァと鉢合わせする。動転したカロリーヌは帰り道事故を起こし死亡。ベルトランはエヴァを再度自宅に尋ねる。しかし、エヴァの夫ジョルジュが仮釈放で帰っていて、袋叩きにあい重傷を負わされて追い出される。

エヴァは友人のマリリンとカフェに座っているとみすぼらしい姿になったベルトランがエヴァの前に現れる。しかし、エヴァは態度で彼を拒否する。映画はここでエンディング。

魔性の娼婦エヴァに破滅させられる若き作家の物語なのだが、冒頭からどう見ても才能があるように見えないベルトランのキャラクターが際立たないので、エヴァの魔性性が生きてきていない。

如何にもな赤の画面や映画的な演出は散りばめられているが、どうも物語や登場人物と噛み合っていない感じで、せっかくの芸達者なイザベル・ユペールの存在感が生きていなかった作品になったように思います。期待はずれでした。