くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「コーヒーが冷めないうちに」

kurawan2018-09-24

コーヒーが冷めないうちに
もっと、薄っぺらい映画かと思っていましたが、意外と演出のリズムがしっかりしていて面白い作品になっていました。原作の活字を映像イメージに変換するテンポが良かったと思います。ただ、もう一歩物足りなさが見えたのと、テレビスペシャルの域を出きれていなかったのが少し残念です。でも泣きました。監督は塚原あゆ子

電車がスローモーションですれ違うショットから、街の風景がゆっくりと動く映像で幕を開ける。ここフニクリフニクラという喫茶店では、ある席に座ってコーヒーを飲むと望んでいる過去に戻れるという都市伝説があった。半信半疑の大学生新谷亮介がマスターと話しているシーンから物語が幕を開ける。一人のOL清川二三子が一週間前に戻ってアメリカに旅立った幼なじみに会いたいという。過去に戻れる席には一人の女性が座っていて、彼女が席を立った瞬間しかそのチャンスがないというウェイトレスの女性数の説明に、二三子はそのタイミングで座る。

過去に戻れるのは、数が入れたコーヒーが冷めるまでで、その間に飲み干さないと現実の時間に戻れず幽霊になってしまうのだという。二三子は勇気を出して過去に戻り、幼なじみに会うが、言い切れないうちに現代に戻ってしまう。しかし、言い切れなかったことはこれからの未来で言うことにして、二三子は前に進む。

ここに、アルツハイマーでその席を待つ佳代という女性がいる。毎日、夫の房木がやってくるのだが、ある時、喫茶店の閉店後にやってきたとき、たまたま席が空き、房木は過去に戻り、三年前、妻が渡したかったという手紙を受け取りに行く。そして、妻は房木にバースデーカードを渡す。そこには自分の病気のことも書かれていた。房木は、過去の妻を励まし、現代に戻り、いままで知らぬふりで妻と接していたのをやめて、改めて妻として接するように結審する。

ところで、過去に戻れる席に座る女性は誰かというと、実は数の母親であった。数の母は数の父親に会ったまま、コーヒーを飲み干さず幽霊になったと思っていた。数は自分が入れたコーヒーで戻らなくなった母に罪悪感を持っていた。

ここに、スナックを経営する平井八絵子という女がいる。田舎には仲のいい妹がいて、彼女が老舗の旅館を継いでいたが、ことあるごとに八絵子を連れ戻しにこの喫茶店に来ていた。あるとき、この妹が事故で死んでしまい、八絵子は一言謝るために過去に行く。そして、戻ってきた八絵子は妹の後を継いで旅館の女将になる。

大学生の新谷はこの喫茶店に通ううちに数と仲良くなり付き合い始める。やがて新谷も社会人となり、数のおなかに赤ちゃんができる。しかし、母への罪悪感に悩む数は複雑な気持ちになる。過去に戻って母に会いたいが時田家の女性が入れたコーヒーでないと時間の移動ができない。マスターはあの席に座れば過去のみでなく未来にもいくことは可能だと新谷に話し、それをヒントに新谷は数にある計画を実行する。

数が新谷の言われるままに早朝の喫茶店に行くとそこに一人の少女がやってきて、私がコーヒーを入れるからと、数にあの席に座らせ、数をさかのぼらせる。なんとこの少女は未来の数の娘だった。数の娘の力で数を過去に行かせたのだ。

数は、過去に戻り、母が何故戻れなかったのかを知る。余命三か月と知った母は、娘の将来を心配し、あの席から未来へ行く、そして、そこでトラブルで戻るタイミングを逸したのだった。

すべてを知った数は、母の元から戻り、やがて新谷との間に子供が生まれ、幸せになっていく。

映画は、ここで終わります。数と新谷のラブストーリーをさり気なく一本の話として通して、不思議な席で繰り返される感動のドラマを枝葉に配置した脚本がなかなかうまい。ただのエピソードの羅列にしなかった構成が映画を一本の作品としてまとめたという感じですね。もうひと工夫あれば傑作になりそうな出来栄えでした。有村架純がいい雰囲気を出していました。