くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「天才作家の妻 40年目の真実」「サイバー・ミッション」「ナチス第三の男」「暗殺指令」

「天才作家の妻 40年目の真実」

実力派二人の俳優による演技合戦の迫力を堪能する作品、その心理描写のすごさに圧倒、見事でした。監督はビョルン・ルンゲ。

 

作家ジョゼフとその妻ジョーンがベッドで寝物語をしているシーンから映画が始まる。性欲旺盛なジョゼフは彼女に求めるが、軽くいなすジョーン。そこへ、ノーベル財団から電話が入る。彼がノーベル文学賞に選ばれたという。二人はベッドの上で小躍りする。息子のデビッドも作家であるがいつまでも半人前扱いをする父に反感を持っている。

 

やがて、コンコルドストックホルムへ向かう三人。客席内で一人のジャーナリストナサニエルが近づいてくる。彼はジョゼフの伝記を書こうとしているのだが、その背景を調べるうちに、ジョゼフの小説に疑問を持っている。

 

ジョゼフは、ジョーンと結婚してから作風が変わり、傑作を生み出し始めたのだ。実は、小説は妻のジョーンが書いていたのではないかと疑っていた。

 

物語は、ノーベル賞の授賞式に向かって流れながら、ジョゼフとジョーンが大学で知り合うきっかけ、そして、妻と別れジョーンと結婚したジョセフ、書く本が、いまひとつ良くないというジョーンの姿などがフラッシュバックされる。また、デビッドも、母が本を書いていたのではと疑っていた。

 

しかし、展開の中ではっきりとジョーンは、自分が全て書いていたとは言わない。そこかしこに苦悩する表情や、ジョゼフの浮気癖に辟易とする姿なども描かれるが、はっきりとジョーンが書いているという具体的なシーンはない。一瞬、ジョーンが書いているらしき部分もあるが、果たして白紙から書いているかは不明。

 

そして授賞式、妻に感謝の言葉を述べるジョゼフの姿を見たジョーンは取り乱してホテルに帰る。そして離婚しようという。それに対し錯乱したジョゼフは、心臓発作を起こし死んでしまう。

 

帰りの飛行機の中、近づいてくるナサニエルに、あなたの憶測は全て嘘ですと断言するジョーン。そしてデビッドに、帰ったら全てを話すからといって映画は終わる。

 

実は、ジョーンが書いていたのだろう。しかし、いかにも子供みたいな行動のジョゼフが対局に存在し、中心はジョゼフだったのかと思う。ただ、共同作業であったことは明らかに見えてくるのですが、はっきりと断言せず、あくまで、妻としてのジョーンの心理描写に終始した作劇が見事でした。良質の一本、そんな感じの映画でした。

 

「サイバー・ミッション」

ハイスピードで展開する今時ハッキング映画、まさに香港映画テイストの娯楽に徹した作品でした。監督はリー・ハイロン。

 

オタクハッカーのハオミンがバーチャルゲームを楽しんでいるシーンをオープニングに、チャオとスー・イーがカジノをハッキングし巨額の資金を奪取するところから映画が始まる。

 

チャオは、ボスである日本人モリのところへ報告に行くが、そこで新たに依頼されたのは、新OS、オアシスの奪取だった。チャオは仕事の相棒に、かつて自分をハッキング大会で負かしたハオミンを選ぶ。

 

そして見事オアシスの権利を奪取し、モリに渡したが、モリはそのシステムで世界のコンピューターを制御し、大手金融機関のCEOを行方不明にして、ユーロの暴落を計画していた。

 

チャオは実はユーロポールの捜査官で、モリを逮捕する為に潜入していたのだ。モリの目的をつかんだチャオらはモリを倒すべくモリの元へ。その途上で、スー・イーは撃たれて死んでしまう。そして、とうとう追い詰めたチャオらは、モリを倒す。

 

前半のサイバーシーンのハイスピードがクライマックスは平凡な追っかけのアクションシーンになるのはちょっと工夫が足りない気がしますが、オープニングから物語の展開もスピーディで飽きさせないあたり香港映画の色です。中身こそ薄っぺらいけれど楽しめるエンターテインメントでした。

ちなみに、モリを演じたのは山下智久でした。

 

ナチス第三の男」

以前、この話を何かの映画で見た気がします。ナチスの高官ハイドリヒ・ラインハルトを暗殺した二人のチェコ人が、教会の地下で水攻めされて死んでいく。物語はともかく、映画としては普通の作品でした。監督はセドリック・ヒメネス

 

ナチスの高官ハイドリヒが自宅を出て車で走り出すところから映画が始まる。プラハの街中、目の前に一人の男が現れ銃を向けるが、銃がうまく作動しない。慌てて逃げて、タイトル。物語は1929年に遡る。

 

ドイツの将校ハイドリヒは、この日彼女を訪ねてきた女とSEXをする。しかし、間も無くして別の女と知り合い結婚となるが、かつての女が、軍の高官の知り合いの娘だったことから軍法会議にかけられ追放される。

 

結婚相手に選んだ女性はナチス党員で、ハイドリヒもナチス党員となり、非道なまでに反政府を掲げる人々を虐殺し始める。やがてヒトラーが首相となり、ハイドリヒはナチス高官として副総督の地位に登り、ますます、ユダヤ人を始め、反政府を掲げる人々を虐殺していく。

 

そんな彼の行動に、イギリスに亡命していたチェコ人ヤンとヨゼフは、ハイドリヒ暗殺のためチェコに送り込まれる。そして、冒頭のシーンとなる。

 

銃は失敗したが背後から手作りの爆弾を投げ入れ、車は大破、ハイドリヒは重傷を負い、やがて死んでしまう。ナチスによる犯人探しが始まり、ヤンらをかくまった村人が無差別に殺され、とうとう密告されて、教会に隠れていたヤンらにナチスが襲いかかる。

 

なんとか地下に逃げたヤンとヨゼフだが、ナチスが水を注ぎ込み、観念した二人は銃で自殺、映画は終わる。

 

格段、優れた映像も演出もなく、淡々と史実が続く映画で、人間ドラマとしても普通でした。

 

「暗殺指令」

しっかりと組み立てられたストーリー構成、オーソドックスなカメラアングル、見ていて安心できる作品で、なかなかのクオリティの一本でした。監督はエンツォ・プロヴェンツァーレ。

 

一台の車がやってきて、男たちが中から一人の縛った男を連れ出し気を失わせる。そこにトラクターがやってきて轢き殺してタイトル。

 

主人公アントニオは、父が付き合っていたマフィア組織の人間から、父の借りを返すようにと、ある侯爵の殺人を依頼される。一旦は断ったが強制され、侯爵の元へ向かう。

 

あらかじめ準備されていた銃で、侯爵を待つが、撃てなかった。一方侯爵にはグラジアという娘がいて、何かにつけ父や姉と確執があり、アントニオが小舟でこの島を出るときに一緒についてくる。

 

しかし、シチリアに戻ったものの、仕事を仕上げなかったアントニオに不気味な車が付いてくるようになる。アントニオはマフィア組織を交わしながら、自分の名付け親で実力のある男に助けを乞うため彼の元を目指す。

 

一方グラジアは金持ちで、かつて自分に求婚した金持ちのいとこの男爵の元へ向かう。しかし、この男爵にも、組織の声がかかり、アントニオを追う連中が近づいていた。

 

アントニオは行く先々でグラジアと再会、やがて二人は愛し合うようになる。しかし、組織はアントニオを放って置かず、グラジアを捨てて本土へ行くなら彼女に危害は加えないと脅してくる。アントニオはグラジアに別れを告げ、本土へ向かうべく離れるが、そこに組織の人間が現れ、名付け親の顔を立てて助けると告げる。

 

一方捨てられたと思ったグラジアの元に、男爵と姉が迎えにくる。しかし絶望したグラジアは階段の上から飛び降り自殺する。

 

本土へ向かうことを吹っ切れないアントニオはグラジアのホテルに戻ってきて、グラジアの死を知る。そしてアントニオをつけてきた組織の人間を罵倒、組織の人間はアントニオを撃ち殺して映画が終わる。

 

行ったり来たりのストーリー展開は下手をするとダラダラなるものですが、流石にフランチェスコ・ロージ作品の脚本などを書いた監督の力量か、ストーリーの行ったり来たりがリズムを生んできます。なかなかの作品だったと思います。