「そらのレストラン」
普通の映画でした。監督は深川栄洋なので、いつものような綺麗な光の演出が見られるかと思いましたが、北海道の大地が目立ってしまって平凡な絵作りになってたのは残念。
真冬、一台の車から女性が降りてきて、一件の建物の中へ。そこで作業をしていた亘理に、ここは海の見える牧場ですか?と尋ね、ここで働くにはどうすればいいかと聞く。亘理は、冗談半分に自分の奥さんになれば働けるよと言った直後女性は倒れてしまう。
それから時が経ち、その時の女性こと絵と結婚した亘理は、牧場をし、近くの大谷と言う人がつくるチーズを目標にチーズづくりをしている。バイクで回りながら、この地の仲間たちを紹介する冒頭部分から、野菜づくりをする男、イカ釣りをするUFOを信じる若者、知人の跡を継いで羊牧場をする若者、などがからんでのほのぼのストーリーとなる。
亘理にはすでに小さな女の子が生まれているので、時の経過が見え、ここに有名なシェフがやってきたことから物語は動くかに見えるが、それもまた淡々と流し、やがて亘理の尊敬する大谷が病で死んでしまう。目標を失った亘理は、牧場を手放す決心をするが、大谷の工房に、かつて自分が牧場を継いだ時に作ってくれたチーズを目にし、もう一度頑張る決心をする。
仲間たちが、知人を招待し、大空の下でそらのレストランを開業して映画が終わる。まぁ、たわいのない物語である。これといって映画作品としての何かがあり訳ではない一本ですが、箸休めとしてはいいんじゃないでしょうか。
「ジュリアン」
シンプルな構造で描くDVを扱ったサスペンス映画。と言う感じですが、どこか人間ドラマ的な部分も見える一本。監督はグザビエ・ルグラン。
調停で、アントワーヌとミリアムに夫婦が離婚の話し合いをしている。弁護士か判事らしき人物が法律について機関銃のように説明するのがまず耳に響いてくる。そして、その法律用語などをまくしたてられ何かわからないままに、どうやら息子のジュリアンは母ミリアムの元に預けられ、隔週ごとに父アントワーヌと過ごすことになったらしい。
アントワーヌは、感情的な男で、危険を感じるジュリアンは決して母の今の住まいは教えないが、何度も脅されて、とうとう教えてしまう。
ミリアムとジュリアンは姉のパーティに出かけるが、そこにも執拗にアントワーヌが現れる。そして嫌がらせ半分に出て行く。
ある夜、ミリアムとジュリアンが眠っていると、外から何度も呼び鈴を押す音。それを無視していると、アントワーヌは猟銃を持って玄関の前に現れる。身を危険を感じたミリアムは警察に連絡、やがて室内にアントワーヌが入ってくる。そして警察が駆けつけ、アントワーヌは逮捕され、ミリアムたちは救出され映画が終わる。
非常にシンプルですが、この後、彼らがどうなるのかに余韻を残す方を優先した作劇になっています。
「太陽の誘惑」
上流階級の人々のめくるめく自堕落な毎日を描く群像劇で、誰が主人公というポイントがあるわけでない作品ですが、全体がよくまとまった秀作でした。監督はフランチェスコ・マゼッリ。
上流階級の男女のパーティの席で一人の女性が情緒不安定で笑っている場面から映画が始まる。そこに一人の医師がやってきて、やがてそれぞれの恋人が入れ替わり立ち替わりスキャンダルと退廃的な日々が描かれて行く。
冒頭の長回しから終盤の長回しで舐め回すように、上流階級の男女を捉えるカメラワークが特徴的。なかなかの作品でしたが、ポイントがわかりにくくてなんども眠くなってしまった。