くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「愛と銃弾」「マチルド、翼を広げ」

「愛と銃弾」

見るまではどんなものか見当もつかなかったが、あっけに囚われる冒頭からの展開に、どんどん引き込まれ、まさかという名曲までさらっと挿入されると、もう呆れるというより映画作りってこんなに楽しいのかと思ってしまう。監督はマルコ&アントニオ・マネッティ

 

葬儀の場面から映画が始まる。ナポリの魚介王と言われる組織のボス、ヴィンチェンツォの葬儀の場面。地元の実力者で裏社会でも力のある男の葬儀に大勢が集まっている。棺桶の中の男が突然棺桶の中で歌い始める。このオープニングでまず開いた口が塞がらない。自分はヴィンチェンツォじゃないと歌う男。妻のマリアが悲しみに暮れる姿で現れたところへ一人の若者が近づく。その姿に驚くマリア。そして物語は五日前に戻る。

 

自分の工場で仕事ぶりを見回っていたヴィンチェンツォは、突然悪漢に襲われる。そこへ現れたのは彼のボディガードでタイガーと呼ばれる二人の殺し屋。バイクに乗り、巧みに悪漢を退治するが一人を逃してしまう。しかもヴィンチェンツォは、臀部に銃弾を受け、瀕死の中病院へ向かう。彼に付き添ったマリアは、こんな生活に嫌気が刺したこともあり、ある計画を思いつく。

 

それは、ここでヴィンチェンツォは殺されたことにして、今まで貯めた金で海外で優雅に暮らそうというのだ。そして、身代わりはたまたまマリアが出会ったヴィンチェンツォにそっくりの男。早速手下にその男を殺させるのだが、病院で治療中にヴィンチェンツォは一人の看護婦ファティマに姿を見られてしまう。ヴィンチェンツォはタイガーに彼女を見つけて殺すように依頼。自分たちは葬儀の段取りを進めながらパニックルームという隠れ部屋に移る。

 

タイガーの一人チーロが看護婦を見つけたのだが、なんと彼女こそかつて若き日に愛し合った女性ファティマだった。ここでファティマがフラッシュダンスを歌う。思わずニンマリ。そして、一気に二人は盛り上がり、彼女を殺そうと出てきた相棒のロザリオを尻目にチーロはファティマを連れて逃げる。当然チーロには組織の殺し屋らが迫ってくる。しかし、殺しのプロでエリートでもありチーロはファティマを叔父の元に匿い次々と彼らを迎え撃つ。

 

しかし、ヴィンチェンツォの部下は、チーロの叔父の元に隠れてると突き止め、叔父の娘がニューヨークにいることを突き止めたヴィンチェンツォらは、ニューヨークの親戚に彼女を脅し、チーロが死ぬまでは娘は危険だと叔父に連絡する。叔父は仕方なく、ヴィンチェンツォたちにチーロやファティマの居場所を話さざるを得なくなる。

 

そしていよいよロザリオたちとの決戦が近づくが、殺戮を繰り返すチーロにファティマは一計を与える。そして、冒頭のシーン。

 

葬儀の場に現れたチーロはマリアに抱擁し、まんまと隠し部屋の鍵を手に入れる。ファティマはその鍵を持ってヴィンチェンツォの自宅へ向かうが、一方で警察にも連絡する。マリアはヴィンチェンツォに危険を告げるため、親戚の弁護士に電話をさせる。ヴィンチェンツォは慌てて隠し部屋を出て仲間たちに顔を見せ、身を守れと命令。そこへ駆けつけた警察官は、ヴィンチェンツォが生きているのを発見、彼らを逮捕する。

 

一方海岸ではロザリオと対峙するチーロ。そして、ロザリオを殺したチーロに叔父のボートが迫る。そして叔父は機関銃でチーロを殺しその映像をニューヨークに送り娘を解放させる。

 

ハワイへ向かう空港ロビー。ファティマに抱きついたのはチーロだった。

彼は胸に血糊が出る細工をして叔父に撃たせ、そのフェイク画像で娘を助けたのだ。また、隠し部屋にはマリアが、ダイヤモンドをミニカーに隠しているのを知っていたチーロはファティマに、そのダイヤを手に入れるように指示していたのだ。

 

ダイヤを手にしたチーロと叔父はそれぞれ未来に向かって飛行機に乗り込んでいた。浜辺で抱き合うチーロとファティマ、ファティマのお腹は大きくなって妊娠していた。映画はここで終わる。

 

つまりミュージカルなのです。次々とダンスシーン歌唱シーンがあり、映画マニアのマリアが繰り出す名作映画のパロディ的な会話も散りばめられ、それでいて中心の話はフィルムノワールのような犯罪物で、しかもラブストーリー。とにかく楽しいです。こんな映画、ありそうでなかった気がします。最高でした。

 

「マチルド、翼を広げ」

ファンタジーですが、どこか切ないほどの残酷さも潜んでいるドラマでした。監督はノエミ・ルボフスキー。

 

主人公マチルドが学校が終わって出てくるところから映画が始まる。友達に相手もされず、ポツンと一人座り込む。カットが変わると、先生と話をしているマチルドと母。しかし、母の言ってる言葉がどこかちぐはぐである。

 

家に帰ってきたものの、どこか母の様子はおかしい。ある日、母は帰ってきたマチルドにプレゼントだと言って一羽のフクロウを渡す。突然部屋に入ってきたのだという。

 

マチルドは自分の部屋にフクロウを入れて飼い始めるが、夜二人きりになるとフクロウがマチルドに話しかけ始める。もちろん母の前では喋らない。

 

母親はどこか頭が悪いらしく、突然家を出て行って、訳のわからないところを歩き回って帰ってきたり、突然、引っ越すといって見ず知らずの家に押しかけたり、クリスマス、マチルドが準備して待っているのにどこかに出かけてしまって、マチルドを怒らせたりする。そしてとうとう父親がやってくる。

 

どうやら父は離婚しているらしく、時々マチルドと連絡を取っているようだった。そして、マチルドが学校に行っている間に、母は入院を決意し、父に連れられて病院へ行く。フクロウの知らせで慌ててマチルドは戻ってきたが間に合わなかった。

 

病院で母は父に、こうなることはすでにわかっていた旨の話をし、抱き合って別れる。時が経ち、成長したマチルドは母の元を訪ねる。そして二人で詩を読むように会話をし、マチルドは病院を後にする。

 

映画はここで終わる。マチルドの苦悩を助けるかのようにやってくる言葉を喋るフクロウ。湖に沈むマチルドの描写、そしてラストでそこから浮かび上がり、立ち上がるマチルド。少女の成長と母への愛を描いた感じの作品ですが、父はなぜか離婚したままだし、マチルドは一人であることに変わりはない。

できは普通ですが、切ない話でした。