ご存知、クエンティン・タランティーノ監督の傑作を何十年ぶりかで再見。細かいシーンはさすがに忘れていたが、まるでスクラップブックのように張り巡らされた物語が、不思議なくらいにさりげなく絡んでつながっている独特の脚本のスタイルが本当にオリジナリティあふれる。
懐かしい映画へのオマージュも散りばめられ、だからこんな話でしたとシンプルに説明できないのだけれども、複雑でもなく癖になるような映画の面白さを堪能させてもらいました。
何度も見直し、その度に新しい発見がありそうな魅力満載の一本ですね。
「ナポリの隣人」
非常に静かに流れる人間ドラマの秀作。元弁護士ロレンツォの心の葛藤がスクリーンから滲み出てくるような渋さのある作品でした。監督はジャンニ・アメリオ。
一人の女性が裁判所で弁護をしている。父ロレンツォ同様弁護士になった娘のエレナの姿である。父は妻を亡くして以来言葉を無くしたように無口になり、エレナとも疎遠な関係になっている。
一人暮らすロレンツォは、隣家の若い家族と親しくなる。その家族の妻ミケーラとは、特に親しくなるが、ある時、その家族の夫が家族を全員銃で撃ち、自ら命を絶つ。ところがミケーラは奇跡的に昏睡状態で病院へ搬送される。
ロレンツォはミケーラを献身的に見舞うようになるが、そんな父の姿に戸惑いを覚えるエレナだった。やがて、ミケーラは息を引き取り、ロレンツォは初めて娘エレナの弁護している裁判所へ傍聴にやってくる。
そして二人はようやく心を通わせ始めて映画が終わる。孤独に苛まれたロレンツォが、かすかな光で隣の家族を見守ることで気持ちを慰めるが、その家族の悲劇に立ち会い、さらにミケーラも死んでしまうことで、再び孤独の淵に落ちようとした時、エレナの存在にようやく気がつく。
ロレンツォのどうしようもない孤独感が映画全体を覆っていて、少々陰気な作品ですが、胸に迫ってくるものはなかなかのものがありました。