くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パペット大騒査線 追憶の紫影(パープル・シャドー)「あの日のオルガン」「THE GUILTY ギルティ」

「パペット大騒査線 追憶の紫影 パープル・シャドー」

思いの外面白かった。ストーリーがしっかりしているし、下ネタ満載だけど、マペットだからギャグになってしまう。しかも、人間とマペットの共存世界のファンタジー性も不思議な空気感でエンターテイメントとして楽しむことができました。監督はブライアン・ヘンソン。

 

かつて敏腕刑事だが今は私立探偵をしているフィルが、いつものように事務所にやってくる。やたらセクシーな秘書バブルスが出迎え、仕事を始めようとすると一人のマペットが脅迫されているので調査してほしいとやってくる。

 

フィルはその調査のため知り合いのマペットショップに行くが、奥で調べ物をしている時に、店が襲われ、全員が殺される。しかし、金も奪われず不審に思ったフィルはかつての相棒エドワーズと調査に乗り出す。

 

ところが、フィルの行く先々で殺人が起こり、彼の知り合いが次々と惨殺されていくに及び、フィルに殺人の疑いさえかかってくる。

 

かつてエドワーズと仕事をしていた時、彼女を盾にした犯人を撃とうとして弾がそれ、その弾で一人の市民が死んでしまった。その時エドワーズも肝臓を撃たれマペットの肝臓を移植されたいた。

 

捜査を進めるうち、犯人はどうやら最初にフィルに仕事を依頼してきた女だと判明。そしてその女こそ、かつてフィルが誤って殺した男の娘だとわかる。しかし、その犯人も、復讐を繰り返すうちに殺人狂となっていた。

 

フィルは、海外に逃亡しようと目論む犯人を空港で捉え、再びエドワーズが盾にされるが、今度はフィルは見事な射撃で犯人を倒して映画は終わる。

全てが終わり、フィルは刑事に復職することになりハッピーエンド。

 

カットの切り返しといい、適当なお色気といい、全編エンタメの塊で実に楽しいし、マペットという独特の世界観も面白い。ちょっとした掘り出し物の一本でした。

 

「あの日のオルガン」

テレビスペシャルで放映してもいいレベルの作品ですが、脚本がしっかりしているので名画としても見るに耐える仕上がりになっています。素直に感動するのですが、それが、いかにもあざといという展開になっていないのがこの作品のいいところです。監督は平松恵美子

 

東京の戸越保育園、保母リーダーの楓は、園児たちの疎開の必要性を解いていたが、空襲さえも来ていない時期で、親たちは子供と引き離されることに抵抗をする。それでも、疎開に賛成の親たちの子供だけで埼玉の田舎に疎開することになる。

 

物語は疎開先で起こる様々な問題や微笑ましいエピソードを交えながら、やがて戦火が身近になっていくときの流れを描いていく。

そして終戦疎開保育園も閉園となり、皆が東京に帰って行って映画は終わる。

 

若干悲壮感の描写が弱いにが残念ですが、それを除けば良質な一本という感じでした。

 

「THE GUILTY ギルティ」

さすがに北欧デンマークの映画、アメリカ映画とは一線を隔した個性的なサスペンス映画の傑作。主人公の人間ドラマを中心にして背後に展開するサスペンスか、サスペンスを中心にした人間ドラマか、その表裏一体となった構成が見事でした。監督はグスタフ・モーラー

 

任務中の不祥事で、今は内勤の緊急コールセンターにいる主人公アスガーが、次々とかかってくる電話を受けている場面から映画が始まる。一見緊急なようで、全くふざけたものまで聞いていたアスガーは一本の電話に不審なものを感じる。こうして物語が始まる。

 

その電話はイーベンという女性からで、どうやら拉致されて車で連れ去られているらしい。逆探知基地局を突き止め、パトカーが向かうが、車を間違えて、取り逃がしてしまう。なんとか再度繋がり、情報を引き出す中、家に子供がいるという。早速、イーベンの自宅にアスガーが電話をすると、6歳だという少女マチルデが出た。狂ったように母を助けてほしいというマチルデに、すぐに警官を向かわせるから、部屋にいる弟のところに行くようにいう。

 

ところが、弟の部屋に絶対入るなと父に言われたと答えるマチルデ。しかし、アスガーはとにかく弟の部屋に行かせる。

 

一方、イーベンを連れて逃げているのは、夫ミケルだと判明。行き先が具体的にわからないため、アスガーはかつての相棒にミケルの家に行くように頼む。どうやらアスガーは、明日何かの裁判にでなければならず、相棒が証言をするらしい。それも供述通りにという念押しがあるらしく、嘘の証言くさいのである。

 

イーベンの自宅に行った警官がマチルデを保護するが、赤ん坊の弟オリバーは、体を引き裂かれて惨死していると報告を受ける。どうやらミケルが赤ん坊を殺したらしい。

 

一方、イーベンに電話が繋がり、トランクに入れられたのでと狂ったように喚いてきた。アスガーは、車が止まって、ドアが開いたら、手元にあるものでミケルを殴って逃げるように指示。イーベンは車に積んでいるレンガを持って待つ。

 

そんな時、アスガーの相棒から連絡が入る。行き先は、精神病の医療センターらしいことがわかる。一方、イーベンの電話で、彼女は、オリバーのお腹に蛇がいるのでそれを取り除いてやったとアスガーに話す。アスガーは全く勘違いしていたのである。

 

オリバーを殺したのはイーベンで、ミケルはイーベンを精神病医療センターに収容するべく向かっていたのだ。しかし、アスガーの指示通り、イーベンはミケルを殴り脱出したらしいとわかる。

 

イーベンは、逃げて陸橋にたどり着く。オリバーを殺したのが自分だと自覚したためである。そしていまにも飛び降りようとするイーベンに、アスガーは、任務中に、容疑者を故意に拳銃で射殺したことを告白し、イーベンを思いとどまらせようとする。明日のアスガーの裁判は、それを正当なものであることがわかり、相棒に、嘘の証言をするなと告げるアスガー。

 

説得の途中、イーベンの電話が途切れるが、間も無くして、駆けつけた警察が保護したと報告される。アスガーは、イーベンの命を助けたのだが、そもそも危険な状況にしたのが自分であることは本人が分かっている。

 

とりあえず、落ち着いたアスガーは携帯で電話をする。誰に電話をしたかわからないままに映画は暗転。見事な人間ドラマの締めくくりである。アメリカ映画ならこうは作らないだろうが、そこが北欧映画の奥の深さだと言わざるを得ません。

 

ほとんど、全編アスガーの一人芝居の作品なのですが、脚本が見事なのか、グイグイと引き込まれてラストまで行きます。久しぶりにサスペンスを堪能しました。