くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」「サムライマラソン」

母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。

こういう映画に泣くようになったというのは、年をとったということか。とにかく、甘えん坊の少年のままいいおっさんになった主人公サトシを演じた安田顕がなかなかいいのです。監督は大森立嗣。

 

斎場での場面から映画が始まる。焼けた骨を骨壷に入れる主人公サトシは、思わず骨の一つを手に取りポケットに入れる。そして、葬儀振舞いの席から、物語は二年前に遡る。

 

サトシは母明子を子供の頃から慕っていた。というかいわゆるお母さん子であった。しかし小学校の頃、サトシは白血病になり治療のために入院することになる。落ち込むサトシの母は絶対を繰り返し励ます。そして、精子を取らないといけないと言う。

 

やがてサトシは無事退院。サトシは順調に大人になるのだが、ある時、不調を訴えた明子は病院で胃がん宣告を受ける。しかも転移していて手の施しようがないと言う。サトシはお百度を踏んだりさまざまな願掛けをして母を助けようとする。というより、現実を受け入れられないのだ。

 

サトシには恋人の真理がいた。サトシ同様、明子の世話をする真理。次第に弱ってくる明子を見ながら、サトシはさらに甘えん坊の子供時代に戻っていくようになる。

 

そして、明子は死んでしまうが、真理とも結婚し、夢だった漫画家にもなる。そんな時、レディスクリニックからの電話をサトシがとる。それは冷凍保存されていた精子の更新についてだった。

 

骨髄移植を受ければ子供ができないことを知っていた明子は、サトシの精子を保存していたのだ。やがて、サトシとマリの間に赤ん坊が生まれ微笑ましいシーンで映画が終わる。

 

子供のように泣き叫ぶサトシ、さらに、妻を亡くし、落ち込みきる父だが、その様子も妙に子供っぽい。サトシの兄も、あまりに純粋に母を愛していたことを叫ぶ。

 

母という偉大な家族の死によって生まれる家族の情感溢れる物語が見事な演出で描かれている。たわいのない、よくある話のはずが、いつの間にか目頭が熱くなって泣いていた。これっていい映画だったんじゃないか。そんな一本でした。

 

「サムライマラソン

どこか中途半端なのです。脚本がしっかり練られていない即席感が見られるのと演出にも統一感がない。前半は群像劇のスタイルで登場人物それぞれの背景が描かれるのに後半は完全に一人の人物のストーリーでまとめてくる。で、結局そういうことかと終わらせる適当さが雑。監督はバーナード・ローズ。

 

浦賀にペリーが来航するところから映画が始まる。なんともしょぼいオープニングから、舞台となる安中藩へ。ここに、新しい時代を感じ始めている雪姫というのがいて、勘定方に身を隠している幕府隠密の甚内などが紹介される。

 

外国からの脅威に、武士のたるみを正すため、殿様が突然、遠足をすることを思いつき、城下の武士を呼びあつめる。

 

ところが、これを勘違いした甚内が幕府に、安中藩に不審な動きありと報告した。直後、ただの遠足とわかったが時すでに遅く、また地方の藩を何かの機会に取り潰していこうとしている幕府の思惑も重なり、幕府はならず者の刺客を安中藩に向かわせる。

 

一方、遠足が始まり、様々な人たちが描かれてていくがどれも中途半端で、いきなり勘定方は次々と隠密になり、甚内も戸惑う中、なんとかことを収めようとする。

 

遠足の途中で、緊急事態を察した側用人なども急遽城にとって返し、途中でならず者たちをやっつけ、城でその棟梁もやっつけ大団円。

 

前半で描かれた様々なキャラクターのその後も放っておきで、あざとい光の演出も最初だけ、クライマックスに至っては城主が危険な状態なのに市井の人たちはふつうに遠足の武士たちを迎える始末で、なんとも適当。流石に雑な映画でした。