くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「グリーンブック」「移動都市 モータル・エンジン」

「グリーンブック」

とってもいい映画。そんな感想を最初に書きたくなる一本でした。アメリカの景色の捉え方が実に美しくてリアル。そんな中で展開する友情の物語が、ちらほら描写される黒人差別のエピソードを交錯しながらの男のドラマに昇華していく。台詞の細やかな美しさとリズムも必見の映画でした。監督はピーター・ファレリー。

 

1962年ニューヨーク。高級クラブで働くトニー・リップの姿から映画が幕を開ける。その場その場の状況を臨機応変に対応し、オーナーからも信頼を得ている彼の仕事ぶりが紹介されるこのオープニング、舞台上の軽快な音楽が実にリズミカルにクラブの様子、当時のニューヨークをまず描く。

 

そのクラブが突然改装のため休業になる。自宅の水回りの修理に来た黒人を差別的に見るトニー。しかし、妻は全くそんなことがないという場面から始まる。

 

その日暮らしに近いトニーはたちまち生活費が必要になり、大切な時計を質に入れたり、ハンバーガーの大食いに挑戦して稼ごうとする。そんな時、彼はドクター・シャーリーという男が運転手を探していると聞き、その面接会場へ。なんとそこはカーネギーホールの上階で、豪華な調度品が所狭しと置かれた部屋。出てきたのは天才ピアニストのドクター・シャーリーだった。

 

南部への8週間の演奏旅行に行くのに運転手兼身の回りの世話係を探していたのだ。時はまだまだ黒人差別が当たり前の時代。しかも、それが極端に根強い南部へのツアーなど危険極まりないのだ。

 

面接後、シャーリーからトニーに電話が入り、トニーはシャーリーと共にツアーに行くことになる。手渡されたのは黒人が快適に旅ができるという店のリストが載った本グリーンブックだった。

 

物語は、南部へ近づいていくにつれて次第に差別的な空気が色濃くなる様を様々なエピソードで描いていくが、絵作りが美しく、時として、そういうメッセージは二の次に見えてしまう。この映画はつまり、差別撤廃のメッセージ映画ではなく、たまたま白人のトニーと黒人のシャーリーの友情物語なのだと知る。

 

そして、最後の演奏会場で、レストランへ入るのを断られたシャーリーの姿を見て、トニーもここを出て行こうと決める。そして、ロードサイドの黒人バーへ。そこで、シャーリーはピアノを演奏し、バーに客たちと一体になる。

 

クリスマスまで時間もない中、なんとか家族のパーティに間に合おうと必死で運転するトニー。力尽きたトニーに変わりシャーリーが運転し、なんとか間に合う。

 

トニーはシャーリーを自宅に誘うが一旦は断るシャーリー。しかし、思い直して、トニーの家を訪ねる。そしてみんなに歓迎されて映画は終わる。

 

ニューヨークの夜のネオンの捉え方や、郊外の景色のショットが実に美しいので、黒人差別については影を潜めた脚本になっているが、それが返って、そのメッセージを浮かび上がらせるのかもしれません。ただ、黒人蔑視の意識があるトニーがシャーリーと過ごす中での心理変化の描写がやや弱い。

 

ただ、小気味好い練られた台詞が素晴らしく、それだけでも見た甲斐があるというもの。決して映画自体は大きくはないのですが、本当にいい映画という感じの小品でした。

 

「移動都市 モータル・エンジン」

つかみのあたりはとにかく退屈で、キャラクターの描写もちぐはぐな上に、独りよがりに設定が進むので参ったが、中盤を超えると、それなりに楽しめるようになった。まぁ、普通のエンタメファンタジーです。監督はクリスチャン・リバーズ。

 

60分戦争という、なんとも恐ろしい戦争で世界が滅んでから数百年立っている。移動都市と呼ばれる戦車のような巨大都市ロンドンだけが残り、生き残りの小都市の資源を食い尽くしながら存在している。今日もその巨大都市が小さな小都市を飲み尽くしたが、そこにへスターという少女がいた。

 

彼女はロンドンの実質的な実力者ヴァレンタインに母を殺された恨みがあってのり込んだのである。そしてロンドンでいかにも鈍臭いバカ青年トムと知り合う。

 

ヴァレンタインはトムが疎ましくロンドンから追放、へスターはヴァレンタインを殺すのを失敗して地上に放出される。

 

ヴァレンタインは過去の遺物で60分戦争で威力を発揮した量子砲の再建築を目指し、古の部品を集めていて、その一番重要な部分をへスターの母が持っているのを知り手に入れたのである。しかし、母は殺される直前にへスターに、装置の制御キーを手渡していた。

 

ヴァレンタインは壁で囲まれている反移動都市に攻め入るため量子砲を作っていた。クライマックスは、壁を破壊するヴァレンタインに対し、へスターらがスターウォーズよろしく移動都市に攻撃を仕掛け、すんでのところで制御キーで反移動都市を守って大団円。

 

今時なのでCGで見せる見せ場ばかりで、ドラマなどはおざなり。様々なキャラクターが出ては引っ込むエピソードの羅列で、だからどうなのという流れで物語が進む。まぁ、楽しむならこれもありという一本でした。