くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「運び屋」「スパイダーマン スパイダーバース」

「運び屋」

落ち着いた大人の映画という雰囲気が詰まった作品。さすがにクリント・イーストウッド監督ならではの渋さのある深みのある作品でした。

 

花の栽培に生涯をかけ、認められる存在になった主人公アール。時は2005年、この日も品評会で最優秀に選ばれている。しかし、実はこの日は娘の結婚式だった。

 

これまで、家族のことを顧みず、仕事に打ち込んでいたため、妻からも娘からも見放されている。時は2017年になる。順調だった花の栽培もインターネットの普及でとうとうこの日、農園を手放すことになる。行き場もなくなり家族のところへ出かけたものの、今更受け入れられることもなく、一人車で帰ろうとするが、パーティに来ていた一人の若者が、車であるものを運ぶだけの仕事があると名刺を置いていく。

 

気楽な動機でその仕事に出かけたアールは、法外な報酬をもらい驚く。一回限りのつもりが、退役軍人の施設の難儀を救うために再度その仕事をする。

 

そしてトラックも新しいものに変え、何度も運ぶ仕事をし始めるが、ある時たまたま積荷を開いて、大量の麻薬だと知る。しかし、朝鮮戦争の勇者でもある彼にとっては、度胸が据わっていた。そして、毎回、取引に出てくる胡散臭い連中とも男同士の友情関係のようなものまでできてくる。

 

アールは自由気ままに走るため、警察から目をつけられないのだ。そんな時、麻薬捜査官のベイツらのチームが、組織の一人との司法取引で情報を収集、尚手の運び屋がいるということで追跡を始めていた。

 

アールは稼いだ金で孫を支援したりし、一方麻薬組織のボス、ラトンに気に入られ彼の邸宅に招かれたりするようになる。ところがラトンが手下に殺され引き継いだ新しいボスは、気ままな仕事をするアールを許さず、監視をつける。

 

ところが、運んでいる最中にアールの妻メアリーが危篤になる。孫達から戻ってきて欲しいと言われるが、期限が厳しくなった今はいくことができない。しかし、アールは勝手に妻の元を訪ねる。必死で探す組織の目付役を尻目に一ヶ月近くアールは妻のそばにいて、最後を看取り葬式にも出る。そして、やっと娘達からも受け入れられるようになる。

 

そして仕事に戻ったアールは目付役に見つかるが、そのまま仕事をする。そんな時ベイツらはとうとう運び屋を特定、アールは捕まってしまう。

裁判で自ら有罪を主張し、刑務所で花を育てるアールの姿で映画が終わる。

 

人間ドラマの一方でサスペンスフルな展開もしっかり挿入された分厚い映画ですが、どこかいつものイーストウッドより作品のほころびがさりげなく見えるのがちょっと残念。でもいい映画でした。胸が熱くなりました。

 

スパイダーマン スパイダーバース」

アカデミー賞長編アニメーション賞受賞の貫禄十分なアニメ映画の傑作。想像力の限界を超えた映像世界を二次元アニメとCG三次元アニメを融合させたキャラクター造形と、コミック画の様相を交えた背景映像と演出。縦横無尽にカメラアングルが転換する空間演出、それと、わくわくするスピード感にどんどん画面に引き込まれてしまいました。映像が面白い。そんな感想がぴったりの作品でした。監督ボブ・ベルシケッティ、ピーター・ラムジーです。

 

ブルックリンの有名私立校に通うマイルスはスパイダーマンだがまだその力を使いこなせていない。この世界にはピーター・パーカーという正義のスパイダーマンが活躍していたが、突然起こった地震で命を落としてしまう。しかしこの地震こそ空間を歪める装置が作動したことにより引き起こされたもので、その装置を休止する為のキーをたまたまピーターの死に際に立ち会ったマイルスが託される。

 

戸惑うマイルスだが、そこに現れたのが、さまざまな世界から今回の時空の歪みで飛び混んできたスパイダーマン。彼らは時にモノクロだったり、豚のキャラだったり、少女キャラだったり、女性キャラだったり、腹の出たキャラだったりと様々。彼らと一緒に戦ううちにマイルスは次第にスパイダーマンとして成長していく。

 

そして、もう一度空間を歪める装置を働かそうとする悪人を倒すため力を合わせ、異空間から来たスパイダーマン達を元の世界に返し、マイルスはこの世界で一人前のスパイダーマンとなって映画が終わる。

 

とにかくスピード感あふれるカメラワークと映像が最高で、空間の上下左右も全く取り払われた宙に浮いたようなビジュアルが素晴らしい。できればもう一回見たくなるような作品でした。