くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「芳華 Youth」「青年の樹」「白い夏」

「芳華 Youth」

近代中国史はほとんど知識がないのですが、そんな激動の時代を背景にした青春群像劇としては、とってもみずみずしくて爽やかな佳作でした。ただ、エピソードがちょっと散漫になって、あれもこれもになりすぎたのと、女の子が全部同じ顔に見えるにはさすがについていけなかった。監督はフォン・シャオガン。

 

時は1970年代、リウ・フォンが、新しく軍の文芸工作団に入団するためにやってきたシャオピンを迎えに行く時から映画が始まる。

 

文工団の使命は、前線で戦う兵士の慰問。毛沢東政権のもと国内安定のための戦いが繰り広げられていた。シャオピンは故郷では冷遇されいじめられていたので、ここに来れば皆暖かく迎えてくれると思ったが、ここでもいじめられることになる。しかし、何事にも模範的な兵士フォンのもと彼女は成長していく。

 

物語はこの文工団の中での少女たちの姿を中心に、様々な思いや恋、友情を描いていく。中心になるのは歌手でもあるディンディン 、シャオ、シャオピンらの姿を捉えていくが、ここにフォンの生き様が絡んでいく。

 

フォンは、実は入団以来ディンディンに恋心を抱いていた。ある時その思いを告白し、ディンディンを抱きしめるが、その場を見られてしまう。そして指導部より前線へ行くように命令されて戦地に旅立っていく。時は中越戦争勃発であった。そんな様子を見て、ここに嫌気がさしていたシャオピンは何かにつけて反抗的になり、とうとう野戦病院へ配置換えされる。

 

フォンは前線で重傷を負い、シャオピンは病院で献身的に働き、戦争後英雄となったもののその生活の激変から精神に異常をきたしてしまう。

 

やがて、文工団最後の公演、精神を病んだシャオピンも見にくるが、舞台の踊るシーンに体が自然と反応し、夜の広場で踊ってしまう。一方瀕死のけがを負っていたフォンは片腕をなくしたものの生きて戻ってくる。

 

時が経つ。文工団も解散し、国内の情勢も大きく変化してきた。街で必死で働くフォン。たまたまそこでシャオと出会う。そしてディンディンの今を教えられ、たまたまシャオピンとも再会。シャオピンとフォンは駅にベンチで寄り添い映画は終わる。

 

エンドクレジットに登場人物たちの過去の映像がかぶるので、じんわりと胸が熱くなってくるのですが、どうも、それぞれのエピソードを一本の物語にまとめ上げきれていない気がしいます。ただ、所々に挿入される文工団のダンスシーンは激動の時代との対比で実に効果的です。

 

とっても切ない青春群像劇なんですが、今一歩勿体無いと思うのは欲ですね。でもいい映画でした。

 

「青年の樹」

詰め込んだ詰め込んだ。当時流行り始めたあらゆる物語を無理やり1つにした一本。スター映画というよりなんとも言えない雑多な一本でした。これも時代色ですね。監督は舛田利雄

 

ヤクザの組の2代目の武馬は大学に入る。そこで知り合う明子という女性。一方、武馬の父の組のヤクザ同士の抗争に、当時広がり始めた労働組合的な考えとさらに大学の自治意識まで絡んできて、もうどこへ行くのかという流れになる。

 

武馬の父がライバルの組に殺され、2代目を望まれた武馬は組を解散するが、そのために組員らが困ったうえに、ライバルの組から襲われて、対抗した武馬が再度組を起こす。

 

となると大学側は彼を退学処分にすることにし、学生たちがその理不尽に立ち上がって映画は終わる。全く話がてんこ盛りの状態で、当時流行り始めた様々なエピソードを全て盛り込んだという仕上がりになっています。石原裕次郎のスター映画であるにもかかわらず、物語に翻弄された感じの映画でした。

 

「白い夏」

なんともしみったれた物語の作品ですが、これもまた映画全盛期の一本という時代色を感じさせる映画でした。監督は斎藤武市

 

海辺の田舎の村に一人の青年が郵便職員としてやってくるところから映画が始まる。なんともおとなしくて純真な彼だが、その素朴さに村の女性が惹かれる。しかし局長の娘に一目惚れしてしまった青年は、日々苦悩するようになり、一方で、その娘に言いよる村の名士の息子が実はいけ好かない野郎でとまあ、よくある歯がゆい展開で進むのですが、余計な選挙不正を描くためになんともめんどくさい出来上がりになってしまった感じです。

 

素直にこの青年のピュアなプラトニックラブを徹底すれば爽やかな映画に仕上がったろうにと思う一本ですが、これも試行錯誤しながらヒット作を生み出そうとしていた当時の映画関係者の苦肉の一本だったのでしょう。その意味では面白かったです。