くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「初恋 お父さん、チビがいなくなりました」「パパは奮闘中!」「轢き逃げ 最高の最悪な日」

「初恋 お父さん、チビがいなくなりました」

見るつもりはなかったのですが、友人に勧められ見に行きました。これはなかなかの秀作。余韻が残ってとってもいい映画でした。映画のテンポもいいし、さりげない物語に潜む人生の機微がとっても素敵です。監督は小林聖太郎

 

主人公有喜子と勝の何気ない家庭の描写から映画が始まる。チビという黒猫と同居し、有喜子は猫と会話しているのがほとんどで、今や勝も有喜子に応えることもない。そんなありきたりの毎日だが、ある時チビがいなくなってしまう。それと同じくして有喜子は娘の菜穂子に、お父さんと離婚しようと思うと打ち明ける。

 

毎日、朝出かけ、将棋会館で将棋をし夕方帰ってくる勝。有喜子とは、若い頃見合結婚したのだが、実は勝が毎朝立ち寄る牛乳店の店員だった。若き日の有喜子は勝のことを密かに思っていたが、思いを伝えられず、たまたま手にした見合相手が勝だったために、運命の結婚をして今日になった。しかし、3人の子供も独り立ちし、今や家に中には夫婦のみと猫一匹だった。

 

ある時、勝は会社帰りに陸橋の上で方向がわからなくなり、右往左往してしまう。その日はなんとか帰ったものの、自分が認知症にかかり始めている現実に一人泣きじゃくる。それでも有喜子に話せなかった。勝はかつて牛乳店で有喜子と一緒にいた志津子と時々あっては相談をしていたが、先日の道に迷ったことを伝え、有喜子に話すよう言われる。

 

行方不明だったチビは見つからず、ある夜、とうとう有喜子は勝に離婚のことを打ち明ける。そして勝は、若き日、牛乳店にいた有喜子が好きだったが言い出せず、たまたま見合いをしたらそれが有喜子で驚いたことを初めて話した。その夜、チビは帰ってくる。

 

翌朝、お互いのわだかまりも消えて散歩する有喜子と勝。勝は話しておきたいことがあると有喜子に行って映画は終わる。

 

勝の将棋相手になる若者や魚屋の主人、子供達3人など何気ない脇役の存在も実にいい感じで、中心の話を決して邪魔せずに絶妙の味付けをしてくる荷が実に良い。これからの二人がどうなるのかその余韻もたまらなく切ない。

 

さりげない物語ですが、胸にゆっくりと染み入ってくるような感動が湧き上がってきます。良い映画でした。本当にいい映画でした。

 

「パパは奮闘中!」

フランス映画独特のめまぐるしいオーバーラップ的な編集と機関銃のようなセリフの応酬。それはそれで面白いが、結局なんなのだろうという映画でした。監督はギョーム・セネズ。

 

主人公オリヴィエは物流センターの勤務だが、ほとんど深夜のために日中は家にいない。二人の息子を世話するのは妻のローラ。ローラは洋品店で働いて子育てをしている。

 

そんなローラはある日、勤め先で倒れてしまう。一方オリヴィエが自宅に帰りローラとのささやかな食事を楽しむ。ある日、オリヴィエの職場に電話がかかり、ローラの迎えがないので子供達を迎えにきて欲しいという学校からの連絡。

 

オリヴィエが子供を連れて帰ってみたらローラがいない。仕事場にも無断欠勤のまま。どうやら家を出たらしいが、どこを探してもいない。とりあえず、オリヴィエは子供たちの面倒を見ながらの生活が始まる。

 

オリヴィエの職場では、労働問題がさりげなく起こっているが、オリヴィエは関わるまいとしている。物語はオリヴィエらのドタバタを中心に、子供達の微妙な心の揺れ動きを交え、オリヴィエの周囲の人との関わりが描かれていく。

 

とにかく唐突につないでいくカットの連続とセリフに応酬が目まぐるしく、オリヴィエの妹など、周囲の人が次々と助けにくるが、ローラは見つからない。

 

そんな中、オリヴィエに昇格の話が持ち上がり引越しの必要が出てくる。オリヴィエは子供達と多数決で決めて引っ越しすることにし、壁にお母さんへのメッセージと新住所を書いて車で去ってエンディング。

 

面白くないわけではないが、今ひとつ伝わってくるものは見えない。ローラが家出した理由は結局わからずに終わらせる映画的な手法はそれはそれで評価できるが、そこまでという感じでした。

 

「轢き逃げ 最高の最悪な日」

脚本が弱い。キーになる事件の創作が甘いので全体の物語に迫力とリアリティがなくなった感じです。こういうどんでん返しのストーリーを作りたいが前に出すぎて、肝心のドラマが作り出せなくなった。悪く言えば素人脚本ですが、もうちょっと丁寧に推敲して練り直せば面白くなったかもしれないに残念です。監督は水谷豊。

 

森田輝という青年が走っている。親友の宗方秀一との待ち合わせに遅れたのだ。待っていた秀一の車に飛び乗り目的地へ向かう。しかし渋滞でさらに遅れそうになった二人は抜け道として、以前見かけたスマイルという喫茶店のある住宅地の道を進む。ところが、喫茶店の前にカーブを切った瞬間目の前に女性が立っていて、撥ねてしまう。しかし、二人は、ここで人生を終わらせたくないと咄嗟に逃げることにする。秀一は数日後に会社の副社長の娘との結婚式を控え、輝もその司会を予定していた。この日、その打ち合わせだった。

 

その夜、動転したままの二人に、動物の目を張り合わせただけの脅迫状らしいものが届く。この展開もかなり不自然なのですが、やがて結婚式では脅迫まがいに祝電までくるがとにかくも終える。ところが間も無くして、秀一は逮捕され、続いて輝も逮捕されるが、輝は直接の加害者ではないとしてしばらくして釈放される。

 

場面は被害者の家庭へ移る。被害者の父時山光央は、悲しみに沈んでいる。毎晩酒に溺れ、娘のビデオを見ている。ここも薄っぺらい。刑事は、娘の携帯が見つからないと不審がるのだが、ここもまたとってつけたようである。

 

光央は、娘の日記から、事故の日会う予定だった人物を探し始め、とうとうその人物の家に忍び込み、娘の携帯やら目を切り抜いた図鑑などを発見。なんとその男は森田輝だった。とまあ、この展開も流石に無理がある。

 

そしてもみ合いながらベランダから落ち、輝は再逮捕される。彼は学生時代から秀一を羨み、彼を困らせるために、たまたま合コンで知り合った光央の娘を利用したと白状するのだが、なんとも弱い。しかも彼はサイコパスなのだがその経緯も描写も実に弱い。

 

とまあ、どんでん返しですよと無理やり組み立てた物語は、最後に秀一のフィアンセが光央の妻に会いに行って終わる。つまりどれもが弱いのです。底が浅いのです。あまりにもリアリティの弱さにどうにもならないという感想に終わりました。