くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語」「ザ・フォーリナー 復讐者」「らせん階段」

イングランド・イズ・マイン モリッシー、はじまりの物語」

ボヘミアン・ラプソディ」のヒットに乗って公開された感のある映画。イギリスのザ・スミス結成前夜を描いた青春物語。良質の映画ですが、バンド結成前までなのでかなり地味な普通の青春ドラマという感じでした。監督はマーク・ギル。

 

水の流れる様子を見つめる一人の青年のカットから画面が幕を開け、ライブハウスのバンドの批評を投稿しながら毎日を送る主人公スティーブン・モリッシーの姿から物語が始まる。

 

バンド募集の張り紙を見ながらもつい引っ込み思案な毎日を送る彼は、たまたま知り合ったリンダーという芸大生と友達になる。彼女と付き合ううちに、同じくバンドを作ろうとしているビリーと出会い、ようやくボーカルとしてライブハウスに立つモリッシー

 

評判も良く、大手からの誘いが来るのだが、必要だったのはギタリストのビリーだった。そのことにショックを受け、引きこもってしまうモリッシー。リンダーの誘いでロンドンに来いと言われ、病院の仕事を見つけて旅費を貯めようとするが踏み出せない。

 

そんな時、放射線治療をしている患者のカルテに目が止まる。かつて読んだ本の原作者だと知ったモリッシーは、人生を無駄にすることの虚しさをようやく知り、再び歌を作り始め、バンド募集も積極的になる。そして一人の若者が彼を訪ねてくる。こうして映画は終わる。おそらく、この後ザ・スミスが結成されるのだろう。ただ、さすがに知識が全然ないので、この後のくだりがわからないのは残念。

 

静かなシーンの連続ですが、落ち着いた画面を徹底した絵作りは美しい。ただ、モリッシーの描き方がひたすら陰にこもるばかりで、生の姿に見えないにはちょっと残念です。

 

「ザ・フォーリナー 復讐者」

予想以上に面白かった。掘り出し物の一本。展開のスピーディさと二重三重に走ろドラマが厚みを生み出して単調なアクションに仕上がっていないのがとにかくいい。監督はマーティン・キャンベル

 

ロンドン、学校帰りの娘を迎えに来た中華店を営むクワンの姿から映画が始まる。娘が買いたいという服がありその店に車で行き、娘は先に店へ、クワンは車を止めようとしてトラブルになった瞬間爆発が起こる。この導入部が実にうまい。そしてその爆発に巻き込まれたのがクワンの唯一残された家族の娘だった。

 

悲嘆にくれたクワンは、犯人を捕まえるように警察に執拗に迫る。このテロ事件の背景にはアイルランドイングランドの長年の確執があり、アイルランドの副首相ヘネシーは、市民を犠牲にした強硬派の犯人を調査し始める。しかし、そもそも銀行爆破の指示は彼が出したものだった。

 

物語はクワンが警察などがあてにならないと判断し、自らの力で娘の復讐をすることを決意し行動に移す流れとヘネシーイングランド市警と裏取引をするくだり、愛人との話などなどが複雑に絡み合わせて展開する。

 

ヘネシーはかつてアイルランド武闘派の一派であったこと、クワンがアメリカ特殊部隊の戦闘員で、次々と巧みな戦術でヘネシーを追い詰めて行くなど、娯楽としてもドラマとしても実によくできた脚本になっています。

 

そして、テロ犯人は次のターゲットにイギリスのバスを爆破する。その辺りで真犯人が次第に明らかになっていき、とうとうテロリストのアジトにイギリス市警の狙撃班が向かう。一方でクワンもそこに向かい、市警よりも先に踏み込んで殺してしまう。そして最後のターゲットの飛行機爆破を阻止する市警の展開から、愛人とのキスシーンの写真をネット上に送信させるクワンのカット、そしてもとの中華店に戻ったクワンに市警の狙撃手の赤い点がつくが、署長の指示で見逃すカットでエンディング。

 

とにかく娯楽として一級品に仕上がっているのがいい。ジャッキー・チェンのアクションも程よいレベルで押さえているのもうまいし、すでに引退したという設定を巧みに織り込んで、時々ピンチになる面白さもリアリティが生まれてとっても良かった。

全体にうまくまとまった作品で、楽しめました。

 

「らせん階段」

これは面白かった。映画作りの基本というのはこういうことなのだろう。閉鎖された空間を有効に使った光と影の演出、仰々しいセットなど排除したシンプルな構成、ただひたすら観客を楽しませるためだけの職人的な演出。これがフィルムノワールの醍醐味です。監督はロバート・シオドマク

 

サイレント映画を見ている主人公ヘレンは口がきけない。幼い頃、両親を目の前の火事で亡くして以来、喋れなくなった。映画館の二階で殺人事件が起こる。足の悪い少女が絞殺されたのだ。このところ、この街で、体の不自由な少女が殺される事件が起こっていた。

 

ヘレンは、駆けつけたパリー医師に付き添われて、女中をしているウォーレン教授の家に帰る。パリー医師とは恋人関係にあった。屋敷に戻ろ直前、嵐がやってくる。

 

邸宅には10年近く寝付いている教授の義母ウォーレン夫人がいて、何かにつけてヘレンは気に入られていた。そして、夫人はヘレンに、今夜この家を出るように勧める。ヨーロッパから教授の義理の弟のスティーブが戻ってくる。彼はこの家の使用人のブランチといい仲だった。

 

外は激しい嵐、不気味な影が邸宅の中に入っているカットが入る。地下室に続く階段は螺旋状で、光と影が不気味な雰囲気を作り出している。巨大な邸宅はまるで迷路のように広い空間を作り出している。

 

そして、使用人が一人また一人と外出したり酔い潰れたりし、夫人付きの看護婦も暇を出され出て行く。ブランチも出て行く決心をし、ヘレンと出て行くことにし、地下にカバンを取りに入りて行くが、そこで犯人に出くわし殺される。

 

ヘレンが降りていってブランチを発見、そこへスティーブが降りてきたので、てっきり犯人と思ったヘレンは彼をワイン庫へ閉じ込め、近くに診療に行っているパリーを呼ぼうとするが、電話に番号が言えない。

 

そこへウォーレン教授がやってくる。彼の言葉で真犯人はウォーレン教授と知るヘレン。こうして逃げるヘレン、追う教授のクライマックスになる。そして追い詰められてどうしようもなくなったところへ、階段の上から銃で狙う夫人の姿があった。

 

夫人は、真犯人を捕まえるために待っていたのだ。そして、ヘレンはパリー医師に再度電話をしようとする。声が出るようになり、パリーに電話するヘレンのカットでエンディング。

 

次々と状況設定を畳み掛けて行くクライマックスが見事で、こんなシンプルな設定でここまで見せられるものかと思うと頭が下がります。これが職人芸と言うのでしょうね。本当に面白かった。