「メモリーズ・オブ・サマー」
映像も美しいし、映画としてのテンポもなかなかセンスがいい。カメラワークも見事なのですが、水面下の部分、行間の部分が分かりづらくて、推測が多すぎて、ちょっと難しかった。監督はアダム・グジンスキ。
少年ピョトレックと母ヴィシュアが歩いている。踏切を渡るがピョトレックは線路の上で立って動かない。気がつかず振り返った母ヴィシュアが叫んで暗転してカットが変わると、母とピョトレックが池に飛び込んでいる。何度も何度も。この繰り返しの映像がまずうまい。
仲の良い母と息子のシーンが続く。ある時、ピョトレックは都会からやってきた少女マイカが気になり始めるが、マイカは町の体の大きな不良少年と仲が良くなっている。
一方ヴィシュアは、おしゃれな服を買い毎晩出かけるようになる。ピョトレックが後をつけるがはっきりせず、ある時帰ってきたヴィシュアは泣きじゃくる。
ピョトレックは水辺で一人の少年と知り合うが、ピョトレックは少年が見ていて欲しいというのを後にその場をさる。しばらくして、子供が溺れたらしい出来事が起こる。ピョトレックはてっきりあの時の少年だと思う。
ピョトレックは、なぜか泣きじゃくる母と過ごしていると、そこへ大好きな父が帰ってくる。解説ではソ連に出稼ぎに行っていたらしい。ヴィシュアは、これからもずっと一緒にいてほしいと懇願する。
三人は移動遊園地で楽しく過ごす。そこで、ピョトレックは溺れたと思っていた少年と再会し、自分の勘違いだと知るが、その少年の母はなにやら不審な目でピョトレックを見て去っていく。
ある時、ピョトレックが家に帰ってくると入れ違いにあの少年の母とすれ違う。中に入ると、なにやら落ち込んでいる父の姿。夜になり母も帰ってくるが、父は再び家を出ていく。もしかしたら少年の母は何か政治的な何かに関わっていて、ピョトレックの父に何かを告げたのではないかと思う。
そして冒頭のシーン。父が土産に買ってきたチェス盤にカメラが移動してガランとして部屋。踏切にとどまったピョトレックに母が駆け寄ろうとするが、汽車は線路のこちら側を走っていて、汽車を挟んで母とピョトレックが立つ。そして、母の頬に涙が流れ映画は終わる。中盤でピョトレックとマイカのエピソードも挿入されていて、不良少年に突っかかっていくピョトレックや、マイカとの口喧嘩などのエピソードも入っている。
とにかく、伏せられている物語を映像で感じ取らないといけないのだが、ちょっと難しい。非常にクオリティの高い作品ですが、ポーランドという舞台でもあり、自分の理解以上の何かが隠されている気がして、すっきりと青春の甘酸っぱい物語と捉えにくい面のある映画でした。
「家族にサルーテ!イスキア島は大騒動」
長回しの流麗なカメラワークと、オーバーラップしていく様々な物語の交錯を楽しみながら、人生の機微を切々と感じる素敵な人生賛歌映画でした。監督はガブリエレ・ムッチーノ。
ピエトロとアルバ夫妻の金婚式に招待された親戚たち。それぞれがそれぞれの家族を抱え、それぞれに平穏に見える彼らがフェリーに乗って夫妻の住む島にやってくるところから映画が始まる。
無事に式を終え、さあ帰ろうというところ、シケで船が出ない。仕方なくこの島に泊まることになったのだが、次々とそれぞれの家族のほころびが見えてくる。
一つのいざこざを捉えるカメラが、すれ違いざまに次の家族のトラブルを捉え、さらに、いたるところで愛してる愛してないを繰り返しながらキスとSEX。この辺りまさにおおらかなイタリア映画の典型。
そしてそれぞれが崩壊し、どうしようもなくなったところで、無事船が出ることになり、それぞれが帰っていく。当初よりより良く変わった夫婦もいれば、破局になる夫婦もいる。新たな愛が生まれたカップルもいる。
皆が帰り、静かに食事を楽しむ夫妻のカットでエンディング。人生って楽しいものだなあとしみじみ感じるところですが、やはり国柄の違いでもう一歩のめり込めなかった。しかし、映画のクオリティは実に高い一本でした。