くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「永遠に僕のもの」「鑓の権三」

「永遠に僕のもの」

モダンで面白い作りをした映画なんですが、肝心の主人公の猟奇性にインパクトが足りないのと、物語の展開がなんともキレがないので、やたら長く感じてしまいました。監督はルイス・オルテガ

 

学生のカルリートスが、当たり前のように盗みに入って、当たり前のようにバイクを盗む場面から映画は始まる。侵入した部屋でダンスを踊り始めるちょっとモダンな演出がまず目を引く。

 

あまりにクールで、犯罪を犯罪と思わない仕草が目を引くはずなのだが、そのインパクトの弱さが気になる。

 

学校でラモンという青年と知り合い、二人で盗みを始める。ラモンの父親もひとかどの人間らしく、盗んだものをさばいたり、盗みの段取りをしたりする。

 

ラモンとカルリートスはラモンの父親に銃の撃ち方を習い、カルリートスは銃に惚れ込み、いつも二丁を腰に身に付けるようになる。そして、事あるごとに殺人をする。

 

しかし、この冷血な感じがあまり描き切れていなくて、ラモンとの色分けが見えないために、物語がぼやけてしまっています。

 

物語は盗みを繰り返す二人と、カルリートスの感情を伴わない行動が何度も描かれ、その繰り返しにあまり緩急がないので飽きてきます。

 

そしてとうとう逮捕されますが、まんまと脱走、ラモンの家に逃げ込み一人ダンスしているところへ警察が取り囲んで映画は終わります。ラストシーンの処理も面白いのに、どこか間延びした展開が何とも残念です。

 

「鑓の権三」

徹底した様式美で描かれる近松門左衛門の世界を堪能しました。素晴らしい一本。脇役の実力も遺憾無く発揮され、全てにおいて演出の手腕が光っていました。これまで見逃していたのは本当に失態です。いい映画に巡り会えました。ただ、主人公の権三の女癖の悪さの描写が若干弱いように思えるのは残念。監督は篠田正浩

 

槍をもたせたら右に出るものはなく、その容姿も端麗で、茶の道も抜きん出て、歌にも歌われるほどの好人物笹野権三の姿から映画は始まります。

 

権三は友人の伴之氶の妹お雪と懇ろだったが、なかなか祝言を上げようとしない。時に遊郭に足を運んだりもする権三のカットが入り、実はこの人物、好色家ではないかと思わせる。

 

藩主に世継ぎができることになりそのお祝いに茶席を設けることになる。市之進の家は代々茶の湯の家元で、一子相伝の秘伝があり、その秘伝を使ってのもてなしの任に権三と伴之氶が競うことになる。

 

江戸勤の市之進の留守を預かるおさゑは、自分の娘を嫁がせることを条件に権三に秘伝を教える約束をする。ところが、ここに伴之氶が力づくでおさゑを手に入れ、秘伝を聞き出そうと深夜に忍び込む。

 

一方、おさゑは、お雪という女がありながら娘との祝言を承諾した権三と言い争いになり、その時にお互いの帯を庭に投げたところを不義密通と伴之氶に見つけられ、権三とおさゑは不義密通の仲にされてしまう。

 

こうして権三らの逃避行とそれを追う市之進らの仇討ちが終盤の展開となる。当然ながら、仇討ち成就で映画は終わるが、様式美にこだわった構図と色彩演出が素晴らしく、最後まで引き込まれました。これぞ日本映画という一本でした。