くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「タロウのバカ」「櫻の園」「遠雷」「ロックよ、静かに流れよ」

「タロウのバカ」

全く日本は平和だなと思う。好き放題に生きて自暴自棄になっていても食っていけるのだから。一見、若者たちの無謀な生き方を描いたようで、その反面部分が見え隠れしてしまいました。監督は大森立嗣。

 

一人のヤクザが障害者を集めて金を稼いでいる妙な施設にくるところから映画が始まる。そこで管理を任せていた高校生のエージが、ちょっとした失敗をしたらしく障害者一人が血まみれで倒れている。容赦無くその障害者を撃ち殺すヤクザ。

 

エージにはスギオと戸籍もなく学校も行っていないタロウという友達がいる。エージは自分をこけにしたヤクザを3人で襲い、カバンを奪って逃げるが、そこにピストルが入っていた。タロウがそれを持つことになるが、三人の行動がどこか狂い始める。

 

一方ヤクザの男はエージを襲って来る。タロウはピストルを持ち歩くことで、やたらおばさんらに絡んだりする。スギオはクラスメートのヨーコが好きだが彼女は売春をしている。

 

物語は三人の自暴自棄的にわめき散らしながらやり場のない姿をただ追いかけていく。そして、ヤクザたちと争った末、撃ち殺してしまい、スギオは三人の隠れ家でピストル自殺し、エージは争いの時に頭を殴られ、間も無くして死んでしまう。タロウはひとりぼっちになり行き場を失って叫ぶ姿で映画は終わる。

 

なんとも、うちにこもった作品である。しかも、この三人の生活は普通に食べていけているのだから日本は平和だなと思う。こんなスケールの作品ばかり生み出すのは如何なものかと思ってしまうような作品でした。

 

櫻の園

30年ぶりくらいの再見ですが、やはりこの映画は別格の名作ですね。延々と回すカメラワークの中で展開する様々なドラマとシーンに次第に引き込まれていきます。素晴らしいです。監督は全盛期の中原俊

 

物語は毎年創立記念日に上演する「櫻の園」の舞台本番の二時間前に始まります。そして、出演する女子高生たちの様々なドラマが、時に恋があり、生き方があり、ほのかな憧れがあり、未来がある。

 

画面の至る所で繰り広げられるドラマが一つの映像の中でハーモニーを奏でていく展開は天才的というほかありません。しかも美少女たちがさりげない危うさを匂わせながら演じていく。

これこそ日本映画史に刻むべき名作の一本だと思います。見直せて良かったです。

 

「遠雷」

30年ぶりくらいの再見でしたが、本当にいい映画でした。自分の若き日がそのままノスタルジックに蘇りました。団地のそばのビニールハウスという今はなき景色の数々も含め、幼馴染同士の友情や、純粋そのものの健康的な恋愛観が素晴らしかった。監督は根岸吉太郎

 

団地が立ち並ぶすぐそばのビニールハウスでトマトを作っている主人公の姿から映画が始まり、彼の幼馴染、そして近くのスナックの女、見合いで知り合った女性との結婚式をクライマックスに描かれる、純粋で素朴な青春の一瞬。

 

どこを取っても健康そのものの日本の若者の姿が描かれていく。時折聞こえる遠雷の光と音が物語に意味深い感慨を生み出していく演出も素晴らしい。

 

主人公の結婚式の夜に幼馴染は一緒に逃げた女を殺してしまったと告白して警察署に自首する。自宅での披露宴という今や廃れた風習を舞台にして、主人公が幼馴染に逃げろという下りも素晴らしい。これが本当の人間らしいドラマ展開だと思います。

なんとも言えない懐かしさを呼び覚ます名作です。良かった。

 

「ロックよ、静かに流れよ」

この手のアイドル映画ではありきたりの物語ですが、一方でこの手のジャンル作品の中ではよくできた仕上がりの一本でした。監督は長崎俊一

 

要するにジャニーズの男闘呼組のアイドル映画です。主人公が東京から松本に引っ越すところから映画が始まる。転校先で不良メンバーと知り合うがそれぞれが同じロックバンドのファンだったことで急速に友情が深まり、やがてバンドをやろうということになる。

 

ところがコンサートが近づいたある日メンバーが事故で急死。残った三人が追悼コンサートを行うというクライマックスになる。

 

物語は平凡ですが、映像のテンポや構成がしっかり仕上がっているので、青春映画として爽やかに仕上がっています。その意味ではできのいい方という表現がぴったりのアイドル映画でした。