くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「人間失格 太宰治と3人の女たち」「プライベート・ウォー」

人間失格 太宰治と3人の女たち」

実話を基にしたフィクションですが、全く蜷川実花監督は映像センスも色彩センスも演出力もないなと思う。色の配分は素人レベルで、全く美しくない。奇抜なCGを使いたいのはわかるがそれが生きていない。芸達者を揃えているのでそれなりに見れるが、よく見ると脇役があまり生きてこない。太宰治の狂気、カリスマ性が物足りない映画でした。

 

入水自殺から生還した主人公太宰治の姿から物語は始まる。献身的な妻美知子の淡々とした佇まい。愛よりも恋を求める富栄のさばけた感覚、そして情念の中で太宰治に溺れていく静子のまどろこしさを描きながら、太宰治が関わる3人の女を通じてその生き様を描いていきます。

 

周辺に群がる時代の文豪たちの姿も挿入しますが、いまひとつそれがいきていないのは残念。さらに、狂気の中で傑作へと邁進しる太宰治の姿は一本筋が通っているのですが、周りの脇役が濃いためにともすると埋もれてしまっています。最後の女に二階堂ふみを起用したのは唯一成功。

 

これまでの蜷川実花作品の中では一番マシな仕上がりになっていますが、青を基調にした色彩演出も美しくない。どうもセンスがない人というのはこんなものかと改めて思うことになりました。

 

「プライベート・ウォー」

世界中の戦地を取材してきたジャーナリスト、メリー・コルビンの半生を描いた作品で、ドキュメンタリー出身の監督らしい臨場感あふれる緊迫したカメラ演出が見事な映画でした。難をいうと、主人公の心理描写がただ狂気的にしか映らなかったのがちょっともったいないのと、全体の物語のリズムが整っていないので中盤ややしんどくなったというところでしょうか。監督はマシュー・ハイネマン

 

シリアの過酷な戦地から映画は始まり、時を遡って、主人公メリー・コルビンが、取材途中で片目を失う出来事に遡る。物語は、自分の安全を省みず、カメラマンポールとただひたすらに戦場の悲惨な現実を伝える姿を描いていく。

 

時にPTSDで、幻覚を見ながら、ただひたすらに現地を伝えることに固執する姿はやや偏執的にさえ見えるのですが、そんな彼女がいたからこそ伝わったものがあることは確かだと思います。

 

そして、シリアでの取材の中、とうとう爆撃を受けて死んで映画は終わります。しかし、大人の映画です。見ごたえ十分な作品でした。