くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「月給13,000円」「広い天」「戦艦ポチョムキン」「白い崖」

「月給13,000円」

これはなかなか良かった。田舎から東京の本社にやってきた若いサラリーマンが、北海道に飛ばされるまでの1ヶ月間のサラリーマン哀歌なのですが、展開するも物語のテンポがいい上に、演じる役者がしっかりと自分の役をぶれずに演じ切ってはいくので、とにかく面白い。監督は野村芳太郎

 

一人の生真面目で実直な若者が東京の本社へ赴任してくる。ところが、着任してみれば、同僚たちは上役の顔色を伺うばかりのもの、課の女性社員にちょっかいを出す上司、取引先のコネの力に屈する経営者たちなどなど、とにかく、生真面目な主人公には許せない。

 

しかし、そんな中で揉まれながら、どうしようもない現実を大人として受け入れていく成長ぶりが実にいい感じで展開する。今となってはこういう世界は過去の遺物なのだが、果たして捨ててしまうべきものだったのか疑問に思ってしまう。

 

脚本が上手いのが白眉の一本で、自分の知識の中にない映画ですが、掘り出し物のクラシック映画という感じでした。

 

「広い天」

一昔前のヒューマンドラマという感じの一本。監督は野崎正郎

 

東京の空襲が激しくなり、広島に一人疎開することになった少年新太郎は汽車の中で馬面の朝雲という男と知り合い、彼の故郷の四国へ行く。やがて戦争が終わり、東京へ戻りたい新太郎だが、両親の行方が分からない。朝雲は彫刻家で、新太郎の彫刻を掘り東京の美術館に出店すべく一人旅立つ。

 

一方、新太郎の両親は広島に行っていない新太郎を探していたが、たまたま美術館で朝雲の彫刻を見て新太郎と確信、朝雲の元へ。

 

新太郎は闇船に騙されたが、警官に保護され、彼を彫刻した朝雲の作品が飾られている東京の美術館に行く。そこで、朝雲と再会、そして両親とも再会して映画が終わる。

 

たわいないドラマですが、これもまた古き映画です。

 

戦艦ポチョムキン

今更いうまでもない映画史に残るモンタージュの教科書。エイゼンシュテイン監督の代表作を何回めかの鑑賞。

 

やはり、完璧に近い編集は、映画を作る人たちにはしっかり勉強すべき一本だと思います。映像表現のなんたるかが詰まっているし、どうやって繋いでいくかが語られているし、有名なオデッサの階段シーンのみならず、見ごたえは十分にあります。しかも、サイレントモノクロながら非常にスペクタクルな映像にもなっている。何回見ても頭に覚えきれないほどの見事なカットが素晴らしいですね。

 

「白い崖」

さすがに良質のサスペンスという感じの一本で、最後まで全然退屈せずに楽しむことができました。監督は今井正

 

主人公尾形が殺人で死刑執行に向かうところから映画が始まる。そして物語は彼がいかにこういう状況になったかが描かれていく。

 

中堅の証券会社に勤める尾形は、貧しい家庭に育ったが、その才覚で社長秘書として勤務して、社長の次女と恋愛関係にもあった。

 

信頼を得ている彼は社長の愛人との連絡などもしていたが、ある時、社長が愛人宅で倒れ、その世話をすることで社長宅でしばらく滞在する。しかし、ふとしたことで社長に嫌われる。

 

尾形は社長の愛人に頼み、社長にもう一度取り入ろうとした矢先、社長が再び倒れる。たまたまそこにいた尾形は、そのまま他界した社長の遺言の言葉を勝手に作って役員に話し、まんまと出世街道に乗った上、反対されていた社長令嬢との結婚も手に入れる。

 

ところが社長の愛人とそのまま付き合っていたため、妻に知られ、その言い争いの中で妻を死なせてしまう。尾形は妻を事故死したと見せかけるが、しばらくしてパリで住んでいた姉が帰ってくる。

 

尾形を疑う姉は独自に調査を始めるが、一方の尾形は女中と交際をしていた。姉は、事故現場に尾形を連れ出すことにするが、途中で不審に思った尾形に責められ、姉はそのまま別荘に逃げる。

 

追いかけてきた尾形が暗闇で誰かを殴り殺すが、それは付き合っていた女中だった。姉が依頼していた元刑事の興信所の男が居合わせる。

 

こうして尾形は冒頭の状態になる。虚しく夜景を見つめる姉のカットでエンディング。それほど優れた出来栄えではないとはいえ、さすがに一流の監督ならではの職人芸が見られる娯楽映画でした。