くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「女だけの都」「建築学概論」「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」

「女だけの都」

画面の構図の取り方といい、物語の軽妙な展開といい、これこそ名作と言わんばかりに見事な映画でした。たったひとときのアバンチュールを実に洒落たタッチで描いていくフランス映画の真骨頂という一本です。監督はジャック・フェデー。

 

フランドルの小都市ボームの街、時は17世紀初頭、男たちは日々怠惰で能天気な毎日を過ごしている。この日、街はお祭りなのだが、スペイン人が攻めてくるという噂が流れる。遊び半分の軍隊訓練をする男たちは這々の体で、隠れてしまうし、町長は、襲ってきたら向かうすべもないと死んだふりをして喪に服して隠れることにする。

 

そんな男たちに愛想をつかした女たちはやってくるスペイン人を真正面から迎える。ところがスペイン人の一行は公爵を先頭にした礼儀正しい紳士ばかりで女たちはみな、そんな男たちに惚れてしまう。

 

映画は、そんな女たちの姿を実に軽妙なコメディで描いていく。一方の街の男どもの不甲斐ない姿が対照的にコミカルである。

 

やがてひとときの喧騒とアバンチュールが終わりスペイン人たちは目的地に旅立っていく。それを見送る女たち。そして、スペイン公爵が認めた税の優遇を夫の手柄だと町長の妻が皆にふれ、夫を立てて映画が終わる。

本当に洒落たコメディで、さすがというほかない名作でした。

 

建築学概論」

ラブストーリーの名作だ名作だという声を以前から聞いていたが、韓国映画は基本見ないので、半信半疑で見た。物語が非常にだるい上に、リズム感のない演出で、正直中盤眠くなってしまった。さらに役者の演技が実に下手くそで、そこがさらに気になって、ラストシーンはジーンときたものの、肝心のところで入りきれずに終わりました。監督はイ・ヨンジュ。

 

建築会社に勤めるスンミンのところに一人の女性ソヨンが家の新築設計を依頼にくるところから物語が始まる。

 

大学時代、スンミンは同じ建築学概論の授業を受けにきたソヨンに恋心を抱いてしまう。最初は、ただ、友達程度だったがいつの間にかお互い惹かれるものがあり、プラトニックながら恋に落ちていた。

 

授業の最終日、打ち上げの後、スンミンは告白するためにソヨンの家の前で待っていたが、先輩に飲まされて先輩に送ってこられたソヨンを目撃する。その先輩とはソヨンがかつて憧れていた人物だったが、スンミンはその先輩が女たらしだと知っていた。

 

先輩はソヨンの部屋に入ってしまい、スンミンはやるせないままに翌日ソヨンに別れを告げ、以前借りたCDを返す。ソヨンは意味もわからずそのまま別れ今になった。

 

ソヨンは老齢の父を引き取るためと、自分の家をいつか作ってあげると言っていたスンミンの言葉をずっと信じ、彼のもとに現れたのだ。しかしスンミンにはすでに婚約者がいた。

 

スンミンは結婚しアメリカへ渡る。ソヨンは完成した家で土地と暮らす。そこへスンミンからの航空便。そこにはかつてソヨンがスンミンに貸し、スンミンが別れの日にソヨンに返したCDとCDプレーヤーが入っていた。家が完成した日、ソヨンはスンミンとの初恋を思い出したが、スンミンの人生を思い出し、そっと彼の実家にCDを置いて去っていたのだった。

 

窓の外を見て、時の流れを感じるソヨンのカットで映画は終わる。確かにラストはいい映画なのだが、やはり全体の演出力が弱いのと役者の力不足が目立つ作品なのが残念。

 

「ある映画監督の生涯 溝口健二の記録」

監督溝口健二の半生をドキュメントした作品で、2時間半あるが全く退屈しなかった。ドキュメンタリーとしても良くできていたのだろうが、やはり溝口健二という好きな監督にまつわる話が次々出てくるからだと思います。監督は新藤兼人

 

溝口健二にかかわった様々な人々へのインタビューが次々と映し出され、その監督デビューから、遺作、そして未完成の「大阪物語」から、臨終までを描いていきます。

そのどれもが興味津々で、面白くて仕方ない。本当に楽しみました。