「ウエストサイド物語」
スティーブン・スピルバーグがリメイクするという名作中の名作。上映される度に見にいく映画をまた見に行きました。監督はロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス。
何度見ても引き込まれますね。流石に展開をほとんど知ってるので、やや先が見えすぎるところもありますが、細かい衣装のデザインや色にも全て意味があるのがくっきりと見えてきました。名作の貫禄に酔いしれるひと時でした。
「“隠れビッチ”やってました」
大傑作にほんの一歩及ばなかったのは残念ですが、面白くて素敵な映画でした。物語の核がぶれなかったことと、エピソードの配分が良かった。いや何より、主演の佐久間由衣の存在感で映画がまとまった感じです。もちろん脇に入った村上虹郎らの存在も映画にいい味を加えた気がします。監督は三木康一郎。
男に告白させては振るという行為を繰り返し、自分がちやほやされることに生きがいを感じる主人公のひろみ。今日も男が好む仕草で次々と落としては家に帰って、同居人の彩や晃の前で豪語している。そんな彼女を彩たちは“隠れビッチ”と呼ぶが、そう呼ばれることもまたひろみには快感だった。
オープニングで一気にコミカルな導入部を描くが、それをさらっと終えて、ひろみのバイト先で一人の好青年安藤との出会いへとつないでいく。この展開が実にうまい。そして、こういう方向へ物語は進むかと思いきや、安藤はバイトを辞めて夢の美容師へ。ひろみも自分の本当の夢に向かってイラストレーターを目指すが、そんな時、たまたま安藤が別の女性をバイクに乗せているのと出会う。しかもひろみ用だと買ったヘルメットをかぶらせていた。
初めての屈辱で、ひろみは安藤と別れる。そしてたまたまバイト先で知り合った年配の男性と酒を飲み、そのまま酔いつぶれる。そこへ、バイト先の正社員三沢が通りかかる。そして、相談がてらみんなで飲みに行った時、三沢に告白される。勢いでひろみは三沢と同棲するようになるが、ふとしたことでキレて三沢に当たり散らすひろみ。次第に疲れてきた三沢は、一ヶ月距離を置こうと提案。
ひろみの父はDVで、いつも母とひろみに暴力を振るっていた。そんな父が癌だという知らせが届く。家族の同意書がいるということで入院先を訪ねたひろみは父の筆跡が自分に瓜二つなのを見て、自分にも父のような異常な性格が備わっていると思い、悲嘆する。
一ヶ月が経つ。その翌日ひろみが会社から帰ると三沢が来ていた。ひろみのこのまま別れようという言葉に三沢はそんなひろみと一緒にいたいと抱きすくめる。やがて、正式に三沢のところへ行くべく荷物を積んでひろみは三沢の元へ。
二人の幸せな生活が始まったかに見えて映画は一旦終わるが、エンドクレジットの後、ひろみの携帯に安藤から「また会いたい」と連絡が来る。その返事をどうしたかわからないままエンディング。
コミカルなオープニングから、シリアスなラブストーリーへ、そして過去の悲しい出来事から大団円へと流れる物語の構成のテンポが実にいいし、ひろみの成長というストーリーの核がぶれないのが良い。途中の同居人のエピソードもさらっとひろみのお話に絡ませる脚本もなかなか。もう一工夫欲しいところもないわけではないけれど、ちょっとした佳作という感じの映画でした。