くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ヨシワラ」「テッド・バンディ」

「ヨシワラ」

やっつけ仕事のような脚本で、その場その場で書き加えられていった展開は雑だが、話なシンプルなので、気楽に見ることはできた。フランス人がちょんまげを結っていたり、どう見ても富士山ではない富士山や、吉原の景色が下町に見えたり、様々なところでフランス人の日本感が随所に見れてツッコミ満載というより、珍品映画を見た感じでした。監督はマックス・オフュルス

 

没落武士の娘が吉原に身売りしに行くところから物語が始まる。その娘を恋い焦がれる車夫がいて、まるで無法松の一生である。そんな時ロシアの海軍船が吉原近くに立ち寄り、士官達が吉原に遊びにくる。生真面目で紳士の一人の中尉がその娘に惚れ、お互い相思相愛となる。しかし中尉には中国からの密書を受け取る任務があり、一方車夫は娘と会いたいがために泥棒をして逮捕され、釈放の条件に中尉を見張るように言われる。

 

とまあ、色々詰め込んだ話の中心に中尉と娘の恋物語が展開していき、最後は、話がごちゃごちゃに入り組んでしまい、負傷した中尉はなんとかロシア船に乗るが、娘は中尉に手紙を渡したという咎で死刑が確定。でも、渡した手紙は娘が罪にならないように嘘に改ざんしたものだった気が。そして、泳いで戻る中尉は教会で神に祈るが娘は銃殺され、中尉も力尽きて死んでしまう。というか、なんで戻ったん?というツッコミのエンディング。

 

第二次大戦前とは言え、もうちょっと知識があるだろうにと思うが、いたるところが適当感満載。やたら霧が出る森や透き通っている障子や、女郎屋がどっかの農家にしか見えないし、伝え聞いた話だけで作ったセット感満載。まあ、この時代の映画は海外のみでなく日本も作れば売れた量産時代なのだから仕方ないかな。本当に珍品映画でした。

 

「テッド・バンディ」

実話とは言え、巧みに組み込んだ脚本の出来栄えがなかなかで、犯人と分かりながらも、物語の展開に翻弄されて、冤罪ではないかという混乱の極みに吸い込まれて行くようでした。なかなかの秀作という一本です。監督はジョー・バーリンジャー。

 

ガラスを挟んで面会人のリズと容疑者テッドが対峙し、カットが変わって二人が出会ったバーでのシーンが重なってくる。そして、物語は約十年近く前、リズとテッドの出会いへと進み本編になる。この導入部がまず秀逸。

 

バーで知り合ったリズとテッド、リズはシングルマザーで自宅には娘のモリーがいるが、送ってくれたテッドの人柄に惹かれ家に招き入れる。やがて愛し合い、モリーを含めた三人での微笑ましい生活が始まり、そのカットが挿入される。折しも女性を狙った残忍な連続殺人事件が続き、目撃者の証言から似顔絵が新聞に掲載される。その顔はテッドそっくりだった。

 

ある夜、テッドは警官に車を止められる。そして後尾座席にあったロープなどの荷物から、彼が連続殺人事件の容疑者ではないかと逮捕される。間も無くして保釈され、彼を無実と信じるリズの元に帰ってくるが、しばらくして、また彼は逮捕される。新聞の似顔絵に彼は似ているという通報があったためである。

 

やがて裁判が始まるも、テッドには次々と不利な方向へ展開し、さらに殺人事件が起こった州を転々としながら裁判が続く。法廷での行動やら発言もあり、弁護団は彼に振り回される。しかも彼を犯人と断言する証拠が手薄いように見え、マスコミにも騒がれ、テッドのパフォーマンスもあって、彼は冤罪であるかのように展開して行く。そして、とうとう弁護団を解任しテッド本人が弁護人として法廷で戦うようになる。

 

そんな中、リズに連絡が取れなくなってきたテッドの前にかつての恋人キャロルが現れ、彼女はテッドの無罪勝ち取りにために奔走し始める。やがてフロリダの裁判所まで流れた裁判はついに判決の日を迎える。そして言い渡されたにはすべての殺人への有罪判決だった。一方リズは、実は似顔絵に似ていると通報したのは自分であることを彼女を支えてくれる同僚に告白する。軽い気持ちの通報がこういう結果を生んだことに悩むリズ。

 

判決から十年が経つ。実はリズは、ある写真を開けずにいた。テッドの死刑執行が迫る中、リズはその写真を開く。そこには首のない死体の写真。リズはそれを持ってテッドに面会を求める。そして冒頭のガラス越しのシーンへ。まだ無罪を主張するテッドにリズは、自分が通報者であること。実は最初からテッドに恐怖を覚えていたこと、そして極め付けに写真を見せ、真実を迫る。そして、テッドは曇ったガラスに、首を糸鋸で切断したと書き込む。テッドこそ真犯人だったのである。

 

愛するがゆえに、愛していると信じたいがゆえに、十年間一人苦しんでいたリズはとうとう解放され、モリーたちの待つ車のところで抱き合ってエンディング。エピローグは当然実際のテッドの裁判の映像などが流され、警察の捜査がすべて正しかった部分が前面に描かれる。

 

物語の組み立てが実に巧みで、単純なミステリードラマで走らなかった工夫が成功している一本で、見終わって、満足感が残る秀作だったと思います。