くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋」「グラマ島の誘惑」

「ロング・ショット僕と彼女のありえない恋」

テンポもいいし、面白い展開で、よくある話ながら退屈せずに楽しめたのですが、いかんせん脚本に芸がないというかセンスがないというか、この手の話を面白くするにはSEXとドラッグしかないという工夫のない物語の核が残念。しかも、クライマックスの切り口が下ネタというのも、あまりに素人くさいのがなんとも言えなかった。監督はジョナサン・レビン。

 

うだつの上がらないジャーナリストのフレッドは、この日、ネオナチの集まりのようなところへ潜入していた。そこで、なんとか特ダネ映像をゲットするも、ジャーナリストとバレてしまい、這々の体で脱出。勤めている出版社へ戻るが、なんと大手の会社に吸収されると聞き、そのまま失職してしまう。相談しに親友のところへ行き、そこで、人気のバンドのパーティ会場へ誘われ出かける。

 

一方、美貌と聡明さで人気の女性国務長官シャーロットは、大統領に今期のみで引退予定だと告白され、自身が次期大統領選出馬を決め動き始める。その中で、たまたま出かけたパーティで、少女時代ベビーシッターをしたフレッドと再会する。たまたま、大統領選出馬の時のスピーチ原稿を書く担当を探していたシャーロットは、フレッドを起用することにする。

 

いきなり国務長官付きとなったフレッドだが、シャーロットと仕事を進めるうちに幼い頃の恋心が蘇り、一方、ストレスで自由を奪われていたシャーロットもフレッドが気になり始める。そして、ある日、二人はSEXをする。急激に接近する二人だが、シャーロットには大統領になるという夢が控えていた。

 

現大統領の全面支持を得るために奔走するシャーロットの前に、フレッドの会社を吸収し、自分の利益だけを考える出版社の大社長の利害が絡んでくる。フレッドが作成した原稿の中の一部を削除することを要求するが、難を示すシャーロットに元大統領と大社長は、フレッドのオナニー映像をハッキングし、ネット撹拌しないことと引き換えに元大統領の意向通りの原稿にすることを要求。シャーロットはフレッドを守るためと自身の出馬を有利にするために取引に応じる。そんなシャーロットに嫌気がさしたフレッドはシャーロットの元を去る。

 

そして出馬表明のスピーチ、シャーロットは突然原稿を覆し、元大統領らを罵倒した上、何もかも告白し、フレッドの元へ。世論はそんな彼女を受け入れ、彼女は女性大統領となる。映画は、シャーロットの夫として座るフレッドのシーンで映画は終わる。

 

途中、ドラッグを体験したシャーロットが、第三国に拉致された軍人を救うエピソードや、フレッドの映像のちょっと品のなさ、シャーロットのSPの使い方の弱さ、出だしのリアリティが次第に平凡なラブストーリーに変わっていく様など、弱点だらけの普通の映画でしたが、この辺りをもう少し煉りこんだらもっと楽しいものになったかもしれません。

 

「グラマ島の誘惑」

奇才川島雄三監督のカルト作品の一本。とにかく珍妙な映画でした。何をどう考えてどうしようと思ったのかという作品で、どう見るかという常識がふっとっんでしまいました。

 

東京の市電の街並みのカットから、ある書店に並ぶ「グラマ島の悲劇」という本のカット、そして、戦時中下、グラマ島に漂流した皇族の軍人二人とその部下が目を覚ますところから物語は始まります。とまあ、ここから珍妙。

 

一緒に漂流したのは従軍慰安婦の女たち、画家、ジャーナリストらしい女、そしてこの島の元住民で夫が戦死した美しい後家。彼らをなんとか助けた船もアメリカに爆撃され、彼らはこの島で孤立する。島には原住民らしい妙な南国の土人風の男もいる。

 

映画の前半は、この島での暮らしから、皇族の軍人の一人が慰安婦の一人とカヌーで脱出、部下の軍人は心臓麻痺で死亡、仕方なく残る人々は民主主義により平等な生活を始める。折しも、海の彼方にキノコ雲が現れ、しばらくしてアメリカ軍がやってきて彼らは助けられる。島の未亡人は現地人と一緒になり島に残る。

 

次第に復興する日本で、引き上げた人々はそれぞれの暮らしをするが、死んだと思われていた、カヌーで逃げた皇族の軍人も生きていて、また、妙なスープで商売を始めるその軍人の弟やら、グラマ島での出来事を書いた本がベストセラーになったりと、てんこ盛りの物語が続く。

 

やがて、グラマ島で水爆実験が行われるというニュースが入り、あの未亡人夫婦はどうしたのかという危惧の中、水爆のキノコ雲が画面に広がって映画は終わる。

 

クローズアップを多用したカットやら、ふざけたようなストップモーションを使ったり、なんとも言えない映画です。ふざけているのか、いろいろ試しているのか、なんとも奇才らしい映画でした。よくまあ、こんなもの作ったなという感じです。