「ルル」
なんとも退屈な映画でした。というより、フランス人の感覚なら普通なのでしょうか、受け入れられないほどの淡々とした物語で、何がどうなるんだという感じでした。駄作とは言いませんが、日本人には合わないのでしょうか。監督はモーリス・ピアラ。
夫アンドレと妻ネリーは、時に喧嘩はするものの、夫婦としてそれなりの毎日だったが、あるダンスパーティで、不良的な男ルルと知り合う。その男臭い魅力に惹かれたネリーはどんどん引き込まれ、やがて体を合わすようになる。一方のアンドレはネリーを愛するあまり暴力的にネリーを取り戻そうとする。
物語は、アンドレ、ルル、ネリーの三人の付かず離れずを淡々と描き、時にルルの仲間とのエピソードを絡ませながら進んでいく。間も無くしてネリーは妊娠するが、ルルは定職に就く気もなく、産みたいものの中絶するネリー。そして、寂しさからアンドレに抱かれに行ったりする。ルルの家族に会いに行ったりもするが、どこかほのぼのしない。結局、変わる事なくルルとネリーが夜の街に歩いて映画は終わる。
アンドレもルルもそしてネリーも、いわゆる模範的な人物ではなく、その中でフラフラ揺れ動く人間模様という作品なのですが、日本人には受け入れられない感覚で進むので、捉えどころなく終わってしまいました。
「フォードVSフェラーリ」
二時間を超える作品ですが、全然退屈しない。物語の構成が良くできている上に、レースシーンのスピード感が半端なくうまい。さらに余計なメッセージを排除して娯楽一筋で仕上げたシンプルさもこの作品を上質の仕上がりにした感じです。面白かった。ただ、映像作品としてどうかと言われれば普通なのかもしれない。監督はジェームズ・マンゴールド。
1959年ル・マンレースゴール前、アメリカ人として初の優勝を果たすシェルビーがゴールに向かっている。カットが変わると医師の診断を受けるシェルビー。生きているのが不思議なほど心臓がやられているという。今は彼は車の販売をする会社を経営している。
あるレースで、一人の男マイルズの横柄な態度を目にする。車の整備にかけては誰にも引けを取らないが、ガンとした性格ゆえに貧乏暮らしをしていた。彼にはピーターという息子もいた。
そんな時、アメリカ最大の自動車メーカーフォードの工場では、ヘンリー・フォード二世の罵声が飛んでいた。何か一歩抜きん出るアイデアを求めていたのである。そして役員たちが集まる中、役員のアイアコッカは、四年間ル・マンで優勝を続けるフェラーリを負かそうと提案する。しかし、フェラーリは負債に追われていた。そこで、フォードは合併を提案しにいくが、エンツィオ・フェラーリはフォードをダシにしてフィアットとの合弁を果たす。
怒ったフォードの役員たちは、是が非でもル・マンでフェラーリを倒すべく計画を開始する。そしてシェルビーをリーダーにし90日でル・マン出場しようとする。シェリビーはマイルズと組んで、妥当フェラーリを目指すが、いよいよル・マン出場となった時、見た目の悪いマイルズをドライバーとすることにフォード副社長らが反対。マイルズは、アメリカで事の行方を見ることになる。しかし、レースは惨憺たるものとなる。
一時は諦めかけたフォード陣営だが、シェルビーは社長らを説き伏せ再度チャレンジする。そして今度はマイルズをドライバーとしてル・マン参戦となる。
そして明らかにマイルズ優勝かと見えた時、フォードの役員はフォード車3台の同時優勝を目論み、マイルズに減速を迫る。シェルビーは、マイルズに任せるからという一言だけを伝える。
絶好調で飛ばしマイルズだが、最後の最後、他の二台を待って三台でゴールする。同時優勝のはずだったが、一台がマイルズより後から出走したとして、マイルズは二位になってしまう。
レースが終わり、皆がくつろぐ中、レース車がまだガソリンがあるからと軽く走らせ始めたマイルズだが、かねてからのこの車の欠点のブレーキが燃えて、そのまま爆発、死んでしまう。
そして半年、シェルビーはマイルズの家を訪ねる。そこでピーターに会い、かつてマイルズと出会った時投げつけられた工具をピーターに与えて別れる。こうして映画は終わる。
とにかく、レースシーンのスピード感と編集が見事で、ほとんどをなんらかのレースシーンで描き、ドラマ部分はほんのわずかに挿入するだけで物語を語っていったのはうまいというほかない。ここまで娯楽に徹した映画を久しぶりに見た気がします。面白かった。