「ペット・セメタリー」(2019年度版)
ホラー映画をこういう感想していいものかと思うが、これは面白かった。旧作はただ怖いだけの印象で、物語もほぼ完全に覚えていても、今回の作品は楽しめました。原作の良さ、今回の脚本と物語の構成の良さでしょうか。怖かったし、切なかったし、面白かった。監督はケビン・コルシュ&デニス・ウィドマイヤー。
医師のルイス、妻のレイチェル、娘のエリー、息子の四人が都会の生活から離れ森の敷地までついている田舎の家に越してくるところから映画は始まる。家の前を一本の道が通り、猛スピードでトラックが行き来している。隣には気のいい老人ジャドが住んでいる。越してきた日、エリーは動物の仮面をかぶって動物の死骸を埋めている姿を見かける。森の入り口にペットセメタリーという動物の墓があるのだ。エリーとジャドはすぐに仲良くなる。
ある日、ルイスの勤める病院に車に轢かれた大学生ヴィクターが担ぎ込まれるが、間も無く死んでしまう。ルイスはヴィクターの亡霊を見るようになる。そんな時、ルイスの家の飼い猫チャーチが車に轢かれているのをジャドが発見しルイスに知らせる。そして、エリーが悲しむと思ったジャドはルイスにペットセメタリーの奥にある呪われた土地を教える。ルイスは半信半疑にチャーチを埋めて家に帰るが、エリーが、昨夜チャーチが部屋に来たという。そして、どこか凶暴になったチャーチがルイスに前に現れる。
怖くなっらルイスはチャーチを遠くに捨ててしまう。チャーチがいなくなり、沈んでいるエリーのために誕生パーティを企画し、レイチェルの実家の親なども呼んでパーティをする。レイチェルには、病気で寝たきりになった姉がいた。姉が怖かったレイチェルは、食事を運ばず、昇降機で届けたためその機械の事故で姉が死んだ。そのことがトラウマになっていた。
パーティの日、鬼ごっこをしていてエリーは車道に出る。そこには、帰ってきたチャーチがいた。弟も姉を追って出るが、慌ててルイスが弟を抱きとめる。そこへ走ってきたタンクローリーが運転を誤り、タンクがエリーを轢いてしまう。
エリーの葬儀が終わり、ルイスたちは引っ越すことを決め、レイチェルと息子は実家に先に行く。一人残ったルイスはジャドを眠らせ、夜中にエリーの死体を呪われた土地に埋める。間も無くしてエリーがルイスの前に現れる。
息子はヴィクターの亡霊にうなされ、嫌な予感がするレイチェルは、ルイスの元へ向かう。一方、蘇ったエリーは、ジャドを殺し、ルイスがジャドの家でジャドの死体を発見して事の次第を掴んだ頃、戻ってきたレイチェルも殺して、呪われた土地へ埋めにいく。
ルイスはエリーを追い、墓場でエリーの首を絞め、最後のとどめを刺そうとするが、蘇ったレイチェルに殺され、ルイスもまた呪われた土地へ。車の中で一人待つように言われていた息子のところに、蘇ったルイス、レイチェル、エリー、そしてチャーチがやってきて映画は終わる。怖い。切ない。まさにスティーブン・キングの世界だった。
「花影」
終盤の数分感だけがやたら力の入った作品で、そこまでのくだりが何とも主人公が安っぽく見えてしまって、ラストが浮いてしまった感じです。監督は川島雄三ですが、彼のシリアスものとしては普通の出来栄えという感じの作品でした。
銀座のバーで10年以上ママをしている主人公の葉子は、その美貌ゆえに、昔から名だたる名士に贔屓にされ、この店の看板になっていた。今日も一人の男と別れ話に発展し、アパートの鍵を返す結果になる。
彼女には、旧来から高島というかつては有名だった骨董鑑定の先生が付いていたが、彼は葉子に体の関係を迫りはしないものの程よい距離でお金の関係を持っていた。
物語は葉子に次々と言い寄ってくる男たちのドラマをエピソード風に描いていき、そんな男遍歴の末に、アパートで一人自殺していく葉子の姿で締めくくる。
終盤、桜のカットや日差しのカットが非常に作為的な演出になっているのが浮き上がってしまい、それまでのバーでの物語がもう少し味わいがあればラストの自殺で引き締まったのが、ちょっとうまく処理できていない感じで残念。面白い作品ながら、池内淳子の起用もちょっとミスキャストな気もする映画だった。