くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジョジョ・ラビット」「ラストレター」

ジョジョ・ラビット」

これは面白かった。と手放しでハマりたいところなのですが、出だしの心地よいリズムが、中盤に続かなかったのが何とも惜しい。ファンタジーでありブラックコメディであり、ほんのり感動させ、さらに反戦メッセージを織り込んだ映画ならではの面白さは堪能できる映画でした。監督はタイカ・ワイティティ

 

10歳の主人公ジョジョは大のナチス信奉者で、いつも幻覚のヒトラーが現れ彼と会話をし、ナチス少年隊に入って、キャプテン・Kの元で訓練を受けている。いわゆる戦争ごっこに近いものの、子供ながらに嬉々とした毎日を送っていた。父は戦地に行っていると母に諭され、姉は亡くなっている。

 

ある訓練の時、ウサギを殺せと先輩に言われ殺せなかったジョジョジョジョ・ラビットのあだ名をつけられてしまう。しかし、汚名挽回のために訓練に飛び込んだ彼は投げた手榴弾が木に跳ね返って足元に落ち大怪我を負ってしまう。

 

顔に派手な傷を受けたジョジョを見て母のロージーは教官キャプテン・Kに掛け合い、ジョジョに宣伝の仕事をやらせるようにいう。ジョジョは一生懸命働くが、ある日母の留守に家に帰ってきたジョジョは壁の中に一人の少女を見つける。彼女はエルサと言いユダヤ人だった。ロージーが彼女をかくまっていたのだ。

 

ジョジョは今まで教えられてきたユダヤ人に対する奇妙な知識を色々とエルサと話して確かめ始める。ロージーは実はレジスタンス活動をしていて、父も外国でそういう活動をしているとエルサに言われる。またエルサにはフィアンセがいると聞かされたジョジョは嘘の手紙をエルサに読み聞かせるようになる。

 

そんな時、突然ゲシュタポジョジョの家にやってくる。そして、家捜しをし始める。そこに教官のキャプテン・Kもやってくる。彼はジョジョやロージーの味方だった。ジョジョゲシュタポに訓練所で配給されたナイフを持っていないことを聞かれ困っていると、エルサがナイフを持って現れる。エルサは、ジョジョと最初に会った時ジョジョのナイフを取っていた。

 

エルサは、自分はジョジョの姉だというがゲシュタポは身分証の提示を求める。引き出しから探した身分証を教官が取りエルサに生年月日を聞く。エルサはとっさに答える。それがきっかけで、ゲシュタポの疑いが晴れる。しかしみんなが帰った後エルサはジョジョに、生年月日を言い間違えたと答える。教官は彼女のことを知っていたのだ。

 

間も無くして、ジョジョが外で活動をしていて、気がつくと広場で処刑され吊るされた人たちの中に母の靴を履いた人物を見つける。母は処刑されていた。ジョジョは家に帰り、エルサに包丁を突き立てる。いつの間にかジョジョはエルサに恋をしていた。

 

間も無くして、連合軍が上陸、ジョジョの町のドイツ軍は必死で抵抗、ジョジョの親友のヨーキーも言われるままに戦うが、みるみるドイツ軍は破れ、戦争は終わる。ジョジョは、ドイツの服を着ていたのでアメリカ軍人に捕まるが、そこにキャプテン・Kがいて、ジョジョユダヤ人だと罵倒して、自らを犠牲に助ける。

 

ジョジョは自宅に戻り、エルサに、ドイツが勝ったと言い、恋人からの嘘の手紙で、ジョジョと脱出するようにと言ってきたと伝える。しかし、エルサのフィアンセは、一年前に死んでいたとエルサが言う。そして、二人は家の外に出る。エルサはそこで、アメリカ軍の姿を目撃、ジョジョの言葉が嘘と知りジョジョに平手打ちをするが、その後二人はダンスをし始め映画は終わる。

 

非常に映像的な素敵ない映画のはずなのだが、中盤の展開がやや弱いのと、ヨーキーや脇役の使い方がちょっと甘い気もする。さらに幻覚のヒトラーの最後のあたりももう一工夫あってもよかったかと思います。

でも、全体になかなかの佳作だし、必見の一本と言えるほどのオリジナリティある映画でした。

 

「ラストレター」

話を複雑にしすぎた感じで、肝心の語るべき、と言うか語りたい何かがぼやけてしまった気がします。部分的には涙ぐむところもあるのですが、全体に感動がまとまらなかった。あのシーンは必要?このシーンは必要?というものが散見された映画。でも人生ってこんな感じなのではないかと思い始めると自分に切々と胸がつまされることがあったことも確かでした。監督は岩井俊二

 

未咲の娘鮎美、その妹裕里の娘楓香、その弟が滝の下ではしゃいでいるところから映画は始まる。未咲が亡くなり、その葬儀に裕里らが実家に帰ってきていた。やがて葬儀は終わり、裕里らは帰ろうとするが、娘の楓香が夏休み中ここに残りたいと言って残る。裕里の帰り道、鮎美が、母未咲宛の同窓会の案内を持ってきたので、裕里はそれを預かり、同窓会へ出かける。

 

姉の死を報告するはずが姉と間違われ、何も言えず帰ってきたが、帰り、かつて姉を慕っていた乙坂鏡史郎と出会う。その場は別れたが、たまたま裕里を未咲と勘違いしたままの鏡史郎の裕里宛のメールを裕里の夫が見てしまい、携帯をお風呂に投げ込んでしまう。困った裕里は、鏡史郎に、その事情だけ手紙で知らせるが、自分の住所は書かなかった。

 

鏡史郎は、その返事に、未咲の実家に出せばなんとかなるかと手紙を送るが、それを受け取った鮎美は楓香と一緒に、母未咲に成り代わって鏡史郎に手紙を送ることにする。一方、裕里のところに、義母がやってきて、義母はこの地の同窓会に行ったらしいがその後、見知らぬ老人の家に行くところを裕里が目撃、直後ぎっくり腰で義母が病院へ搬送され、裕里はその老人と知り合いになってしまう。

 

義母の手紙をその老人に届けるようになった裕里は、老人の家の住所を使って鏡史郎に手紙を出すようになる。一方、鏡史郎は、未咲の実家に、かつての高校時代の未咲への思いを懐かしむ手紙を送り始める。鏡史郎は、未咲との大学時代の思い出を本にしてそれがきっかけで作家になっていた。

 

ある時、裕里が老人の家にいると、鏡史郎が突然たづねてくる。そして、裕里が未咲のフリしていたことは同窓会から知っていたことを告げる。さらに裕里から未咲の死を知らされ、高校時代の未咲と鏡史郎、裕里の物語が懐かしく挿入されていく。

 

未咲は、阿藤という男と結婚し、鮎美が生まれたが、阿藤がDVで、結局、ある時行方をくらまし、その後未咲は弱った末に自殺したことが語られていく。鏡史郎は、未咲が住んでいたアパートを尋ねると、そこには阿藤の今の妻がいた。そして鏡史郎は阿藤と酒を飲むが、実は阿藤は鏡史郎の先輩だった。阿藤を豊川悦二、阿藤の今の女房を中山美穂と、知る人ぞ知る「loveletter」のコンビを無理やり入れた感があるエピソードです。

 

鏡史郎は、間も無く取り壊されるかつての高校に行く。その帰り、たまたま犬を散歩させていた鮎美と楓香と出会う。そして、鏡史郎は、未咲の家に行き、線香をあげる。やがて鮎美と楓香に別れを告げ、帰りに、裕里の職場の図書館によって東京へ帰っていく。

 

エピローグに、楓香が好きな人ができたことを鮎美に告白し、鮎美は、母未咲の遺書を読む。それは、高校卒業の時、当時生徒会長だった未咲が鏡史郎に添削してもらった送辞の言葉の原稿だった。こうして映画は終わっていく。

 

高校時代に、鏡史郎が未咲に一目惚れし、妹の裕里に手紙を託していたが、鏡史郎に想いを寄せる裕里が、姉に手紙を渡していなかった切ない展開も物語に深みを与えようと設定されるが、ちょっとやりすぎ感がある。それより、裕里の義母のエピソードや阿藤のエピソードもくどすぎる。そこまで入り組んでしまわなくても切ないラブストーリーに仕上がったろうに、やはり岩井俊二も歳をとって、人生をたくさん経験してきたのを盛り込んだのかなと思ってしまった。

映画のできはそれほどではないけれど、個人的には好きな映画です。ついでに言うと手持ちカメラも妙に気になりました。