くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アリス」「グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜」

「アリス」

念願の映画を見ることができた。「不思議の国のアリス」を基にした実写とマペットアニメの合成作品で、かなりシュールな映像と展開になっていますが、見るべき作品の一本でした。見てよかったです。監督はヤン・シュヴァンクマイエル

 

アリスが姉の横で石を川に投げて退屈しのぎをしている。姉の本は字ばかりで面白くなく、アリスは家に入って物置に行くと、そこに剥製のウサギがいて、動き出す。体の中はオガクズらしく、ただ時計を見ながら大変だと繰り返していずこかへ。

 

マペットのセリフはアリスの口のアップで描き、実写のアリスはクッキーを食べて小さくなると人形の姿で動き出す。そして、「不思議の国のアリス」の物語のエピソードをちょっとシュールでグロテスクな映像に変換して展開していく。

 

ラストは、再び物置で目を覚ましたアリスが、やっぱり剥製のウサギは何処かへ行ったのを見て、今度は自分がハートの女王よろしく、首を刎ねないととハサミを持ってエンディング。

独特の世界観を描いたという感じで、噂どおりに作品でした。

 

「グッドバイ 〜嘘からはじまる人生喜劇〜」

太宰治原作「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロビッチが舞台劇にしたものの映画版。画面はレトロな色合いでとっても美しいし情緒もあります。さらにお話も面白い。のですが、お話が古い。それは構わないのですが演出のテンポは現代的なために食い違ってしまったという感じです。作りようによって傑作になる一歩手前で終わりました。でも良かった。監督は成島出

 

戦後の混乱期のモノクロ映像から幕を開ける。主人公田島が友人の漆山と酒を飲んでいる。女遊びばかりしてきて愛人もたくさんいる田島は、この辺りで妻と娘と幸せな生活したいと思っている。漆山は、美人の女を見つけてそれを女房だと偽り、愛人を回って別れればいいとアドバイスする。

 

田島は早速、美人を探し始める。そんな彼の前にいつも闇市で汚い格好で力持ちのキヌ子がいる。ある時、田島は着飾って映画に行く一人の美人を発見。キヌ子に聞くとそれは自分だという。早速漆山のアドバイス通り、キヌ子を妻に見立てて愛人のところを回り始める田島。

 

まずは花屋に勤める女、さらに編集部の挿絵画家の女と回っていく。そんな頃、青森にいる妻から田島宛に別れようという電報が届く。愛人からも別れ、妻からも逃げられる田島。しかも妻の相手は漆山だった。

 

田島はキヌ子と飲み、自暴自棄に金を撒いて夜の街へ。そこで一人の占い師に、本当に愛するのはキヌ子だといわれ、キヌ子の元に戻ろうとして暴漢に襲われ死んでしまう。

 

二年が経つ。田島を偲ぶ会でかつての愛人や妻が集まっていた。そんな頃、恐山の採石場で一人の男が高所から落ちて記憶を取り戻す。なんと彼は田島だった。田島は暴漢に襲われ気を失っていたところやくざ者に拾われ、労働者として売られた。また彼を襲った暴漢はトラックに轢かれ顔がぐちゃぐちゃで、持っていた田島の財布から田島と間違われたことがわかる。

 

田島は、恐山を出て、キヌ子のところへ来る。キヌ子は田島のかつての部下清川と婚約していた。清川は田島が死んだと思われたあと宝くじにあたり、事業を成功させ大金持ちになっていた。田島はキヌ子の幸せのために、最後の別れを窓の外でして去っていくが、キヌ子は後を追いかけ、田島ともつれあって映画は終わる。

 

原作が太宰治なので、物語はレトロで、その色合いで画面作りしているのだが、演出が現代風のテンポになっていて微妙なズレが生じている。さらに所々に散りばめられた舞台劇の面白さがうまく映画に生きていないのが残念。二転三転するくだりも、どうもとってつけたようになっている。ラストはもっと感動してもいいものだがと思う映画だった。