くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

映画感想「クレマチスの窓辺」「明日になれば、アフガニスタン、女たちの決断」「北の橋」

「クレマチスの窓辺」 平凡なローカリ映画かと思っていたが、意外に面白い作品でした。カメラが美しいので画面へのこだわりが感じられて素敵だし、どこか今泉力哉やホン・サンスを意識した演出も楽しい映画でした。監督は長岡俊幸。 東京育ちの絵里は、無く…

映画感想「息子の面影」「白いキャラバン」「エリソ」「アラヴェルディの祭」

「息子の面影」 慌てず騒がずじっくりと映像だけで物語を語っていく、恐ろしいほどの傑作でした。物語の背景、登場人物の心の動き、何もかもを映像で描いていき、そこに言葉さえもいらないのではないかと思えて来る。もちろんカメラが美しいのだが、それは全…

映画感想「メリー・ゴー・ラウンド」

「メリー・ゴー・ラウンド」 思いつきのストーリー展開と即興演出のような場面が続く作品で、果たして二時間を超える意味があるのかと思えるようなシーンが多く、まとまりのない物語は難解というよりも、未完成という言葉の方が当てはまるような映画でした。…

映画感想「トップガン マーヴェリック」

「トップガン マーヴェリック」 約三十年ぶりの続編。素直に面白かった。娯楽映画の王道を走り抜けるストーリー構成の面白さ、旧作へのオマージュシーンも程よい感じで、クライマックスのドッグファイト戦の迫力は半端なくのめり込んでしまいました。監督は…

映画感想「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー」「大河への道」

「鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー」 前作がいかにも貧相なアクションでひどい仕上がりでしたが、今回はドラマ部分を中心に展開するし、原作を読んでいない人にも優しい脚本が映画全体をまとめていて、原作のメッセージがうまく伝わって来るので、映画とし…

映画感想「太夫さんより 女体は哀しく」

「太夫さんより 女体は哀しく」 さすがに日本映画黄金期の名作だけあって、本当にいいものを見たという感動に包まれました。京都島原遊廓を舞台に繰り広げられる群像劇で、誰に焦点を置いた物語では無いですが、太夫たちの悲哀が見事に描かれています。クラ…

映画感想「セリーヌとジュリーは舟でゆく」

「セリーヌとジュリーは舟でゆく」 めくるめく迷宮のような展開で進む即興演出と悪戯心満載の映像世界という感じで、一回見ただけではストーリーの全体を把握できないほどの三時間余りの作品でした。正直、出だしからしばらくすると頭がついていかなくて睡魔…

映画感想「シング・ア・ソング!笑顔を咲かす歌声」「ハケンアニメ!」

「シング・ア・ソング!笑顔を咲かす歌声」 実話という制限もあるのだが、何ともまとまりのない演出、ラストに向かっていかない脚本にまいった。凡作というレベルの一本でした。軍人の残された妻の苦悩は見え隠れするものの、それも弱い。監督はピーター・カ…

映画感想「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」

「ワン・セカンド永遠の24フレーム」 さすがにカメラアングルが抜群に美しいし、映像としては一級品ですが、ストーリー構成や脚本が弱いために、登場人物の心理描写が希薄になってしまい普通の映画に仕上がったという感じの一本でした。監督はチャン・イーモ…

映画感想「おれの行く道」「ノロワ」「デュエル」

「おれの行く道」 たわいにないプログラムピクチャーで、なんの変哲もないストーリーと、気楽に仕上げた演出という感じの一本でした。監督は山根成之。田中絹代の遺作である。 信州で大学に通う耕三が、父の一周忌で、成田で旅館をしている兄の家に帰ってく…

映画感想「生きててよかった」「チェルノブイリ1986」

「生きててよかった」 非常に荒削りな映画ですが、映画作りのセンスを感じさせる演出とストーリー展開がとっても良い作品で、ラストはどこか不思議な感動に胸が熱くなってしまいました。掘り出し物発見という一本でした。監督は鈴木太一。 暗闇にスパーリン…

映画感想「グロリアス 世界を動かした女たち」「スージーQ」

「グロリアス 世界を動かした女たち」 アメリカのフェミニズム革命家グロリア・スタイネムの物語。非常に面白いスタイルの作品で、幼女時代、少女時代、女学生時代、大人の女性の時代のグロリアを四人のそれぞれの役者が演じ、時に同じバスでお互いに会話し…

映画感想「流浪の月」

「流浪の月」相当にクオリティの高い作品でした。今どきのDV、ネットの暴力、性虐待を描きながら、その奥にある本当を描き出していく脚本が見事。ただ、やや技巧的に走りすぎた部分があり、細かくフラッシュバックを繰り返してジグソーパズルのように交錯さ…

映画感想「乳房よ永遠なれ」「恋文」「月は上りぬ」

「乳房よ永遠なれ」 贔屓目に見ていたわけではないですが、なかなかの佳作でした。この時代にこう言う女性の描き方も見事ですが、クライマックスの映像の組み立ての美味さはやはり才能でしょうね。いわゆる難病ものですが、非常に中身の濃い映画でした。監督…

映画感想「シン・ウルトラマン」

「シン・ウルトラマン」 出だしは非常にスピーディで面白い。かつて「ウルトラQ」を見て育った人たちには一気に引き込まれる。それに続く怪獣、この映画では禍威獣登場からウルトラマン登場までがなかなかと思えるのですが、いかんせん、美術が良くない。禍…

映画感想「不気味なものの肌に触れる」「天国はまだ遠い」「オードリー・ヘプバーン」

「不気味なものの肌に触れる」 のちに制作される「FLOODS」につながるパイロット版的な中編で、エピソードを断片的に繋いだような作品でした。監督は濱口竜介。 二人の青年千尋と直也が演劇の稽古をして体を動かしている場面から始まる。カットが変わり、千…

映画感想「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」「マイスモールランド」

「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」 とっても素敵な映画でした。ファッションが抜群に素晴らしいし、ニューヨークの景色を切り取った映像が洒落ている。しかもセンスのいい音楽で映画全体がリズミカルにかつ心地よく展開していきます。手紙の書き手が観客に…

映画感想「親密さ」「PASSION」(濱口竜介監督版)

「親密さ」 決して贔屓目で見ているわけではないけれど、この監督の演出力は半端じゃない気がします。一見、淡々と映像を繋いでいるようですが、いつの間にか訴えるべきメッセージが見えてきて全体が一つの作品にまとまってくる姿を作り出す力量は半端ではな…

映画感想「メイド・イン・バングラデシュ」「インフル病みのペトロフ家」「湖のランスロ」

「メイド・イン・バングラデシュ」 これはちょっとした映画でした。まず、サビーヌ・ランスランのカメラが抜群に美しく、色とりどりのヒジャブを纏った女性たちの赤と黄色とブルーの衣装が映えるし、縫製工場での色彩演出も素晴らしい。ダリア・アクター・ド…

映画感想「死刑にいたる病」「ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス」

「死刑にいたる病」 怖い、ひたすらに怖い恐ろしいほどの心理サスペンスの傑作。しかも、カメラワークが圧倒的に素晴らしい。映像で語るというテクニックを可能な限り駆使した画面に翻弄され引き込まれ、片時も目を離せない。それゆえに、物凄くしんどい。く…

映画感想「何食わぬ顔」(long version)「ツユクサ」

「何食わぬ顔」 東京大学映画研究会によって全編8ミリフィルムにて撮影された作品。画面が荒いのは仕方ないけれど、映画イン映画という形式とセリフのテンポで見せる面白さは、ちょっとしたものでした。監督は濱口竜介。 競馬場で三人の青年が馬券を買って見…

映画感想「不都合な理想の夫婦」「アンラッキー・セックスまたはイカれたポルノ」(監督自己検閲版)

「不都合な理想の夫婦」 ちょっと面白い映画なのですが、今ひとつインパクトに欠けるのは、淡々と作りすぎたのでしょうか。それが意図したものなのはわかるのですが、その中に力を感じさせないと映画が弱くなる。いわゆる不条理劇という感じの心理サスペンス…