くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

2023-01-01から1年間の記事一覧

映画感想「イノセンツ」「古の王子と3つの花」

「イノセンツ」 北欧ホラーらしい静かで淡々としたストーリー展開と、森の中の集合住宅という郊外の閉鎖的な舞台設定、じわじわと迫って来る恐怖の中に見える子供の残酷さ、そんな様々がシュールな衣を纏って流れていく様が独特の魅力のある映画でした。子供…

映画感想「バラシファイト」「雌が雄を喰い殺す かまきり」「喜劇 各駅停車」

「バラシファイト」 典型的など素人映画で、とても入場料を取れるレベルではない出来栄えですが、アイデアはとってもいいので、もっとちゃんと作ればよかった。本気の演劇陣を集めて、しっかりと隅々まで演出にこだわればなかなかのエンタメになったろうに、…

映画感想「不安は魂を食いつくす」「658km、陽子の旅」「シモーヌ フランスに最も愛された政治家」

「不安は魂を食いつくす」エ 絵作りがしっかりしてめちゃくちゃに美しいし、物語の展開も軽妙に洒落ていて、とっても面白い作品でした。どこかウィットがあるようで実は軽く流すさりげなさがいい。監督はライナー・ヴェルナー・ファスビンダー。 初老に差し…

映画感想「さらば、わが愛 覇王別姫」(4Kリマスター版)「花のうず潮」「女のみづうみ」

「さらば、わが愛 覇王別姫」 初公開以来の劇場鑑賞でしたが、やはり名作です。中国近代史を背景に激動の時代の流れの中で、その変遷と京劇のたどる道を描きながら二人の京劇役者を通じての愛憎劇と恋愛ドラマの交錯が素晴らしい。前半の流麗なカメラワーク…

映画感想「我が人生最悪の時」(4Kリマスター版)「キングダム 運命の炎」

「我が人生最悪の時」 濱マイクシリーズ第一作。モノクロームで、古の日活アクションと光と影を多用したフィルムノワールのような絵作りが癖になる魅力のある作品で、ストーリー展開はシンプルな人探しとヤクザ抗争の話ながら、クライマックスの場面でモノク…

映画感想「豚が井戸に落ちた日」「海流」

「豚が井戸に落ちた日」 四人の男女の物語が最後に交錯してまとまるというホン・サンス監督らしい一本。何気ない場面のあちこちに伏線を貼られた画面作りの面白さは楽しいのですが、いかんせん韓国の人の顔立ちがわかりにくく、しばらくは混乱してしまった。…

映画感想「裸足になって」「セフレの品格(プライド) 初恋」「ナチスに仕掛けたチェスゲーム」

「裸足になって」 映画のクオリティは非常に高いけれど、アルジェリアという国の国情を訴えかけてくる内容は流石に重い。ほとんどのシーンがバストショットで描かれるので息苦しささえ感じてしまいました。男性社会、テロの横行、役人たちの癒着、そんな暗さ…

映画感想「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」

「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」 超一級品の娯楽大作なのに、ここまで緻密に脚本を書き込んだら面白くないはずがないと言う傑作エンターテイメントでした。とにかく、オープニングからラストシーンまで息をつかせない見せ場の連…

映画感想「アイスクリームフィーバー」「イメージズ」

「アイスクリームフィーバー」 青、黄、赤のポップ感覚満載の素敵な映画でした。感情に訴えるものではなくて、テンポ良く展開する女性たちのドラマがとっても素敵な作品で、二つのドラマを巧みに絡ませながら、それでいて別の世界として二つの人生のひととき…

映画感想「遠いところ」「土砂降り」

「遠いところ」 映画のクオリティはそれなりではあるのですが、いかんせん、物語に未来の希望がないので、見ているうちに自分が生きているのが嫌になる。沖縄を舞台にしているというのはつまり沖縄の現実がこうなのだと言いたいのでしょうが、問題定義のみに…

映画感想「坊っちゃん」(丸山誠治監督版)「死亡の塔」(日本初公開復元版)

「坊っちゃん」 ものすごく良かった。名作です。芸達者を脇役に配置したというのもありますが、キャラクタが際立っているし、今となっては二度と写せない懐かしい松山の風景や建物が見事に取り入れられ、しかもカメラ演出が見事で、映像のテンポが抜群に素晴…

映画感想「やくざ囃子」「芸者小夏ひとり寝る夜の小夏」「君たちはどう生きるか」

「やくざ囃子 日本映画量産時代の一本で、映画のクオリティとかそんなものはどうでもよくて、見ているだけで。時代が遡って、不思議な世界に溶け込んでしまう至福のひと時というのを味わいました。監督はマキノ雅弘。 船旅をする彌太郎と留八らは、船の中で…

映画感想「ヴァチカンのエクソシスト」「ロング・グッドバイ」「サントメール ある被告」

「ヴァチカンのエクソシスト」 出だしは普通のB級ホラー的な展開なのですが、脚本が丁寧に描かれているために、次第にそれなりに面白いサスペンスに変遷していく。一見、悪魔との対決ホラーのみの見せ場であるかに思えるが、謎解きをさりげなく挟んだ終盤の…

映画感想「CLOSEクロース」「雨にぬれた舗道」「マッド・ハイジ」

「CLOSE クロース」 素晴らしい映画だった。シンプルなストーリーなのですが、主人公レオの表情だけを追いかけていく演出と、手持ちカメラを交えた素晴らしいカメラワークで描いていく映像のリズムにどんどん惹かれていきます。まだまだ幼い二人の少年の繊細…

映画感想「マンダレイ」(4Kデジタルリマスター版)「イディオッツ」(4Kデジタルリマスター版)「大いなる自由」

「マンダレイ」 「ドッグヴィル」と同じ撮影形式をとって黒人差別問題を痛烈に批判する実験的な作品でした。映像作品としての面白さもありますが、ラストの強烈なドンデン返しのあまりの衝撃にかえって差別問題の恐ろしさ、人間の恐ろしさを痛感してしまいま…

映画感想「バックドラフト」「1秒先の彼」「トゥ・クール・トゥ・キル ~殺せない殺し屋~」

「バックドラフト」 人間ドラマを丁寧に描いていく展開と大作らしいスケール感が見応えのある映画ですが、ところどころに若干甘い脚本が見え隠れするのが僅かに勿体なかった。それでも、火事シーンの迫力は必見だし、スリリングな演出はさすがというほかあり…

映画館「ニンフォマニアックVol.1」(ディレクターズカット完全版)「Pearlパール」

「ニンフォマニアックVol.1」 日本公開版より約30分長いオリジナル版。あの30分はこの映画には必要だったのだと改めてわかりました。今回の完全版で、映画全体のリズムと映像のテンポが整った気がします。執拗に女性器を舐めるシーンや、ペニスを咥えるシー…

映画感想「ノクターン」「エレメント・オブ・クライム」(4Kデジタル修復版)

「ノクターン」 ラース・フォン・トリアー監督が学生時代に作った8分の短編。一人の女性がこちらに向いてのバストショットから、突然背後のガラスが割れて、男がスローモーションで入ってくる。ベッドで眠ろうとする主人公らしい女性のショット、電話で朝の…

映画感想「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」「劇場版美少女戦士セーラームーンCosmos 後編」

「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」 さすがに、古さは感じるけれど、シンプルなストーリーと娯楽大作のエンタメ感満載の面白い映画でした。旧作へのオマージュを散りばめ、見た人はにんまりするものの見ていなくても、奇想天外なストーリー展開にワク…

映画感想「山女」「小説家の映画」

「山女」 びっくりすりほどではないけれども、なかなかの仕上がりの作品でした。前半の暗さを次第に払拭していく後半の構成がうまい。神話の物語の中に潜む古き因習にとらわれる人々の苦悩が真面目に描かれている演出も好感でした。監督は福永壮志。 18世紀…

映画感想「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」「マルセル 靴をはいた小さな貝」

「探偵マリコの生涯で一番悲惨な日」 面白い映画なのですが、なんだか後一歩魅力に欠ける仕上がりだった気がします。二人の監督がそれぞれ三つのエピソードを撮って、一つの長編にまとめるという手法で描く新宿歌舞伎町の雑多な群像劇なのですが、終盤にかけ…

映画感想「東京リベンジャーズ2血のハロウィン編 決戦」「同じ下着を着るふたりの女」

「東京リベンジャーズ2血のハロウィン編 決戦」 前編で人物と舞台設定を説明して、今回の後編はひたすら喧嘩シーンという、かなり雑な作りになったのと、日向を守るという本来の武道のタイムトリップする原因となる本筋よりも東京卍会の中の友情物語に終始し…

映画感想「君は放課後インソムニア」

「君は放課後インソムニア」 思いのほか良かった。何もかもが前向きに前向きに進んでいくのがとっても心地よくて、爽やかな青春映画の秀作に仕上がっています。脇役もしっかりとさりげなく主人公たちを引き立てているし、ありきたりな後ろ向きな展開が全くな…

映画感想「To Leslie トゥ・レスリー」「告白、あるいは完璧な弁護」

「To Leslie トゥ・レスリー」 いい映画でした。アル中になった一人の女性の再生の物語と言えばそれまでですが、周囲の脇役の配置のうまさ、小さなセリフや主人公との絡みがラストで見事に生きてくる脚本の緻密さに頭が下がります。レスリーを演じたアンドレ…

映画感想「アラビアのロレンス」(完全版)「大名倒産」

「アラビアのロレンス」 TOHOなんば一番スクリーンという大スクリーンで上映ということでまた出かけました。やはりこのレベルになると、背筋に寒気が走るほど見入ってしまいます。やはり本物の名作ですね。何度見たかわかりませんが素晴らしかった。監督はデ…

映画感想「遺灰は語る」「アシスタント」

「遺灰は語る」 物語があるようなないような、また、風刺なのかコメディなのか、シュールな映像世界なのか、如何とも感想できない映画でした。モノクロームとカラーを交え、第二次大戦の戦禍を描くようで、そうでもない。一人のノーベル賞作家の遺灰を巡って…

映画感想「プー あくまのくまさん」

「プーあくまのくまさん」 動機があって行動がある。原因があって結果がある。という常識を完全に無視した無茶苦茶な脚本と、なんの考えもない無意味な陰影作りとスローモーション。残酷シーンはこれ見よがしに引っ張った末、ありきたりののシーンが繰り返さ…

映画感想「乱」(4Kリマスター版)「Life work of Akira Kurosawa 黒澤明のライフワーク」

「乱」 初公開以来の再見、初めて見た時は、ただ長いだけの印象だったが、今回見直して、恐ろしいほどの傑作であることがはっきりわかりました。まず、三時間近くあるのに全く退屈しない作劇のうまさ、そして役者を使い切る見事な演出力、さらに徹底的に様式…

映画感想「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」「ザ・フラッシュ」

「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」 相変わらずの縦横無尽に飛び回る映像が爽快。CGを超えたCGアニメというイメージに、今回も堪能させてもらいました。物語は今回が前編という感じで、さまざまなエピソードのきっかけを描いていくのですが…

映画感想「プチ・ニコラ パリがくれた幸せ」「カード・カウンター」

「プチ・ニコラ パリがくれた幸せ」 軽快な音楽と躍動感溢れるシーンの連続で、とにかく心地よく物語が進む。イラストタッチのシンプルなアニメがコミカルに走り回る様は独特の面白さで、物語はシンプルそのものですがテンポがとってもいい映画だった。監督…