「ニューヨーク・オールド・アパートメント」 もっとほのぼのしたヒューマンドラマかと思っていたが、思いの外辛辣で、しかもどこかおかしい作品でした。不法移民でアメリカに来た家族の厳しい現実の中で出会うさまざまな出来事を掘り下げた展開で描いていく…
「レディ加賀」 典型的なローカルご当地映画なのでクオリティがどうのこうのという映画ではなく、小芝風花目当てで見に行った映画なので、これで十分満足な一本でした。監督は雑賀俊朗。 小学校の学芸会の舞台、一人の少女がタップダンスを踊っていて、男の…
「スケアクロウ」 名作というのはこういう映画を言うのでしょうね。いかにもな賞賛を送るのではなくて、見ているうちに、不思議なほどに好きになってしまう映画。余計なメッセージも何もなく、純粋で素直な人間の感情をストレートに感じて、感動してしまう瞬…
「いますぐ抱きしめたい」 さすがにデビュー作だけあって、荒削りでギラギラした作品ですが、スタイリッシュなカメラワークと洒落た色彩演出、音楽センスの良さはのちの傑作を彷彿とさせる作品でした。物語が同じ展開を繰り返すので、少々中盤以降しんどくな…
「瞳をとじて」 高級な作品ですね。二時間五十分近くあるのに長さを感じさせない作劇のうまさは絶品で、非常にシンプルな話なのに、全体に深みのある味わいを感じさせる映画でした。登場人物の表情から溢れ出る感情がいつの間にか心に何者かを生み出していく…
「梟 フクロウ」 めちゃくちゃに面白かった。史実を元にしたとはいえ、サスペンスの組み立てがしっかりしているし、次々と変転するストーリー展開が実に上手い。しかも、仰々しい演出もなされず、徹底的に観客の興味を画面に惹きつけることしか考えられてい…
「リバー・ランズ・スルー・イット」 淡々と静かに流れるだけの物語なのに、いつの間にか画面に引き込まれていくとっても素敵ないい映画でした。フライフィッシングの美しい釣り糸の流れが映画をとっても美的なものにしていて、作品全体を染み入るほどに優し…
「身代わり忠臣蔵」 こういう気楽で肩の凝らない娯楽映画の存在も必要という一本で、たわいないとしか言いようのない作品ですが、これはこれで楽しんだからそれで良いという映画でした。ムロツヨシは嫌いな役者ですが、前半はともかく後半はその実力だけを前…
「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」 もっとどぎついB級ホラーかと思っていたら、意外と押さえ気味の真面目な人間ドラマとサイコパスの映画だった。特に映像に工夫もなく、怖がらせの面白さもなく、動物ロボットが襲ってくるというある意味、普通の…
「ダム・マネー ウォール街を狙え!」 面白くなる話なのですが、直近の実話を元にしていると言うのもありますが、裕福な投資家がバカで、スラングだらけの小口投資家=ダム・マネー側がお調子者としか見えない下品な映画に仕上がってしまった。言いたいこと…
「罪と悪」 思いの外めちゃくちゃ良かった。役者がどれも物凄くいいし、ストーリーの細かい場面が非常にしっかりと描かれているので、話が嘘くさくならない。それでいて、幼馴染同士の切ない過去とどうしようもない現在との交錯感が素晴らしくて、どんどん引…
「白日青春 生きてこそ」 いろんな話が乱立してしまってまとまらず、全体の物語の構成も悪く、中心にすべきものがなんなのかわからないままにどれも尻切れとんぼで終わってしまった映画だった。大好きなアンソニー・ウォンを見るためだけだったが、さすがに…
「神の道化師 フランチェスコ」 聖フランチェスコを慕う修道士たちのエピソードをコミカルに描いていく作品で、登場人物たちは一生懸命布教活動を行っている姿がかえってユーモア満点に見える様が不思議な作品です。脚本にフェデリコ・フェリーニも参加して…
「ティル」 傑作だった。本来、黒人映画は苦手なのですが、この作品は1955年当時のアメリカの異様な緊張感と黒人差別の現実の重苦しいほどの圧迫感に投げ込まれてしまいました。しかも、映像作品としても非常に優れていて、明るいオープニングの中にも張り詰…
「あるじ」 シンプルな物語を、練った脚本と演出で見せていくコメディ作品という感じで、描かれるテーマは今時に通じる物があるのがなんとも面白い作品でした。監督はカール・テオドア・ドライエル。 ある家族の朝から映画が始まる。忙しく朝の支度をする妻…
「吸血鬼」 影と多重露出を効果的に利用した演出が不気味さと幻想的な味わいを描き出したなかなかの秀作。恐怖を煽る一方で、サスペンスフルなテンポの良さを生み出すカット割りも面白く、若干、わかりづらいところもあるのですが、コンパクトな尺で描くゴシ…
「哀れなるものたち」 これまで身につけた知識や経験を全て捨てて、生まれたばかりの赤ん坊になって世界を見たときに見えてくるものを映像にしたあまりにもピュアな感覚に満ちた怪作だった。自分とは次元の違う才能のある人が作った映画はとにかく面白い。初…
「侍」 これは傑作だった。原作の五度目の映画化だと言いますが、淡々と進む前半がみるみるスピードを帯びてきた、さらに緊迫感が昂るにつれて演出が冴え渡り、役者陣の演技が鬼気迫って行くクライマックスは恐ろしいほどの仕上がりになっています。しかも、…
「コット、はじまりの夏」 落ち着いた良質のいい作品でした。荒い画面が終盤につれてシャープな映像に変化して行くさりげない演出が、主人公の少女の心の変化を見事に表すとともに、子供を亡くした夫婦の希望が見えて来るラストがとっても美しく切ない。エン…
「ゴールデンカムイ」 期待していなかったのですが、なかなか面白かった。オープニング直後はもたもたとした展開と無駄なスローモーションが目についたけれども、中盤から後半はみるみるスピードが増してきて、クライマックスのソリでのバトルシーンは絶品。…
「みなに幸あれ」 古川琴音が出ているというだけで、なんの期待もなく見に行ったホラーですが、予想を裏切らずにクソホラーでした。下手くそな脚本と、あざといほどにもったいぶるだけの稚拙な演出、何を語りたいのかその行先が見えない展開、意味のないスプ…
「緑の夜」 クオリティの低い映画ではないのですが、現実と幻想の狭間のような展開とひたすら暗くくどい流れは見ていて、気持ちが沈んでいくだけの感覚に囚われる作品だった。しかし、主人公の現実逃避が生んだ夢幻のような曖昧さが癖になるほどに面白い映画…
「悪の紋章」 話の風呂敷を広げすぎたという感じの作品で、次々と登場してくる人物が入れ替わり立ち替わり主人公に絡んでいくのだが、そのそれぞれが悲劇の末路へ向かい、肝心の、きっかけになる復讐劇がどこ吹く風で吹っ飛んでしまうクライマックスには失笑…
「悪魔のシスター」 死ぬまでに見たい映画の一本だったが、ようやく夢の一つが叶った。なるほどと思わせるヒッチコックタッチのカメラワークとバーナード・ハーマンの音楽、そしてマルチスクリーンを使ったカット編集のセンスはさすがにブライアン・デ・パル…
「サン・セバスチャンへ、ようこそ」 いつものウッディ・アレン監督らしい洒落っ気が少し弱い気がして、ちょっとファンとしては物足りなさの残る映画でしたが、散りばめられる名作映画の数々とセリフ、美しい色遣いの画面作りはさすがヴィットリオ・ストラー…
「アクアマン 失われた王国」 勧善懲悪のヒーロー映画の王道を徹底したキレのある演出が今回も際立って、派手なCGもプラスアルファになってめちゃくちゃ面白かった。しかも、人間ドラマもさりげなく丁寧に挿入した演出もさすがというほかありません。前作同…
「ファニー・ページ」 A24特集の一本ですが、ストーリーがいつまで経っても展開していかない作りで、なぜか突然エンディングという珍品映画だった。登場人物それぞれが個性的だが叫んでいるばかりで中身が見えない上に、話の根幹が全然まとまっていないので…
「最悪な子どもたち」 オーディションで選んだ子供達をそのままに映画を撮影していくというフィクションの中で描いていく作品ですが、カットとカメラの編集で巧みにリズムを生み出していく手腕は見事。問題児たちという前提から綺麗事に発展するありきたりな…
「エクスペンダブルズ ニューブラッド」 ハリウッド映画はこうでなくちゃいけません。単純に面白いし、中身よりも見せ場というコンセプトがとにかく飽きさせない。スター総出演とはいかないけどそれなりのロートルが所狭しと撃ちまくる暴れまくるから映画を…
「ある閉ざされた雪の山荘で」 原作が弱いのか脚本が甘いのか演出が力不足なのか、使い古されたシチュエーションのサスペンスゆえに個性的な役者を揃えたは良いが。どれもうまく機能していなくて、原作の展開を上滑りになぞっただけの作品に仕上がっていまし…