デジタルマスター版が大流行しているおかげで、過去の名作のリバイバル上映が相次いでいる。
大阪でもようやく「大脱走」を見ることが出来た。
それにしても素晴らしい作品です。
リメイクやパート2ものが作れない名作が映画史の中には存在しますが、この作品はまさにその中の一本です。
中学生時代に淀川長治さんのテレビ映画劇場の常連的な作品で、そのときもおもしろくて眠れませんでしたが、やはりスクリーンで見ると、感激です。
パンフレットの解説にも書かれていますが、「ワンカットも無駄なカットがないといわれる傑作」という言葉が本当に納得します。
脱走計画を進めるシリアスなドラマの所々にマックイーンの演じる主人公の活躍を見事なタイミングで挿入し、一本調子にならないように観客を引き込んでいく。
しかも、物語が中盤に向かって娯楽中心的にわーっと盛り上がったところへ、脱走計画に耐えきれなかった男が思わず飛び出してしまって撃ち殺され、物語は一転して緊張したクライマックスへと向かう。
ところが娯楽作品でありながら、目の見えなくなったドナルド・プレザンスとジェームズ・ガーナーのエピソードでしっかりと人間ドラマを描き、胸を熱くしたりする。
脱走後のエピソードも手を抜くことなく、マックイーンのオートバイの名シーンのみではなく、ドナルド・プレザンスの死やリチャード・アッテンボローが捕まる場面、射殺される場面等で最後まで観客を引き込んでいく物語展開は天才的といわざるを得ません。
本当の名作とはこういう作品を言うのでしょうね。
しかも、エンドタイトルも当時は映画会社も自分の会社でスタッフを抱えていたので、今の映画のようにだらだらとタイトルバックが流れず、主要な登場人物を再度紹介して終わるので、映画を見たという実感で劇場を後に出来ました。