「さんかく」
宣伝フィルムを見ているときはちょっとおもしろいかなと思って、かすかな掘り出し物期待でしたが、完全に期待はずれ、映画になっていない中途半端な画面に参ってしまいました。
主人公の百瀬の今ひとつ盛り上がらない演技、小悪魔的な妹役のAKB48の 小野恵令奈扮する桃 がもう一つおもしろみにも毒気にもかける素人演技でうんざり、さらに 田畑智子扮する佳代が過剰演技で、ヒステリックな人間像がこれでもかと繰り返されるシーンの連続と、それにうんざりする百瀬のリアクションの繰り返しがくどすぎて、ここまで引き延ばさなくても良かろうにというほどしつこい。
結局、何を言いたいの?みたいな鈍長な映画に仕上がっていて、ラストの田畑のほほえみも結局作品を締めるものになりませんでした。
「ちょんまげぷりん」
こちらは良い映画でした。やはり中村義洋監督は見せ方がうまいですね。物語の本編へ引き込むショットが実にうまい。このあたり「ゴールデンスランバー」にせよ「アヒルと鴨のコインロッカー」にしても導入部が見事でした。
映画が始まるとともさかりえ扮するひろ子と子供の友也が出かけるドタバタのシーンから、いきなりスーパーの前で武士の格好をした錦戸扮する安兵衛と出会うシーンへ、このいきなりのショットが一気に観客を物語に引き込んでくれます。
この映画の成功点はこの安兵衛、がちがちの古風な武士に描かずに程良い度量の深さのある自由度のある思考の持ち主であること、さらに時代劇慣れしていない錦戸亮を配役にしたために肩の凝らないモダンな映画に仕上がったことです。
一方のともさかりえも今風なところとちょっと一昔前のシングルマザーとして描かれている点がお互いににじり寄った結果になって程良く混じり合っていることである。
そして展開する物語はなぜか江戸時代から現代にきてしまった武士安兵衛と現代的な母子とが繰り広げるたわいのない物語。
なぜか、江戸時代では役目もなく、就活よろしく自動さんの前で手を合わせていた安兵衛は現代にきてお菓子づくりに才能を発揮し有名パティシエの店員になって就職する結果に。
そしてすべてがうまくいくかに思われたところで突然、きたときと同様に足下から水がわき出して江戸時代に帰っていく別れのラストを迎える。ここまでの展開が何とも小気味よくてハイテンポ、さりげない日常的な出来事が起こる程度にもかかわらず絶妙に配置されたプロットのうまさからか、一気にクライマックスへ、そしてエピローグで、江戸時代に戻って御菓子所を操業して現代に受け継がれた老舗店にひろ子たちが立ち寄るエンディングを迎える。
元々タイムトラベルものは好きなのですが、さわやかなリズムと展開で程良い感動を残す作品で、取り立てる名シーンなどは見あたらないまでももう一度見てみたくなる一本でした