くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「小さいおうち」「アイム・ソー・エキサイテッド!」

小さいおうち

「小さいおうち」
さすがに、このレベルの映画を作れる人は、今の日本では山田洋次くらいだろう。それなりのクオリティの映画に仕上がっていると思う。

しかし、エピソードのバランスが若干悪いために、ラストシーンがラストシーンたり得ないほどに、もったいない終わり方になってしまった気がする。

いわゆる、物語の中心は、主人公であるタキがかつて奉公していた家で、心から慕う奥様である時子の不倫物語である。そして、それに絡んで、タキの淡い片思いの初恋が描かれているはずなのだが、そこまでの展開に、中途半端な妻夫木聡演じる孫が、祖母タキの自叙伝に、嘘が多いとか、本当の歴史はどうだとかいう薄っぺらな知識によるつっこみが入る。その流れが全体にウェイトが高すぎるのである。

しかも、老年のタキを演じた賠償千恵子に、引きつける演技力が、不足しているために、こちらに迫ってくる迫力がないように見える。

圧倒的な存在感で、ストーリーの中に凛と存在する松たか子が、周りの弱い男優陣を覆い隠すほどの迫力がある。しかし、物語が浮かび上がらないのである。

たしかに、東京の町中に、ちんまりと立つ赤い屋根の、童話にでてきそうなおうちのおもしろさを丁寧に描いていく、淡々としたドラマはさすがに、山田洋次の演出力がさえるが、現代へと飛んだときの展開とのコラボレーションが微妙によくないのである。

映画は、祖母タキの葬式のシーンから始まり、遺品整理する中で、孫の健史が祖母に自叙伝を書くように勧めたことを思い出し、そのシーンから、さらにタキの若き日のお話へと流れる展開となる。

時子が主人の会社の部下の板倉と、いつのまにか、淡い不倫関係となる展開が後半になるのだが、結局、第二次大戦で、二人は別離となる。その板倉の出征の日、最後に会いに行こうとする時子をとめて、そのかわり手紙を届けるというタキ。

会いたいという内容の手紙だったが、板倉は来ず、東京空襲で時子等は死んでしまう。やがて、タキの遺品の中から健史は一通の未開封の手紙を発見、時子の子供を見つけて、今や目の見えない老人になった遺児の前で、手紙をあけると、それは時子が板倉に当てたものだった。

なぜ届けなかったか?それは慕う時子が、破滅に落ちていくのを守るため?いやそうではなくて、タキは板倉に恋していたのだろうと思う。そして、ささやかな嫉妬の中で、手紙を届けず、といって、大切に慕う時子をさしおいて、自分が板倉に打ち明けることもなく、今に至ったのだと思う。

物語は、まるでニコラス・スパークスのムードであるが、原作もある。山田洋次ならもっとハイレベルの作品ができてもいいのではと思うから、辛口の感想を書いたけれど、いい映画である。それは間違いないと思います。


アイム・ソー・エキサイテッド!
変態ペドロ・アルモドバル監督が描く、コメディは、ちょっとシュールで、思い切り下品な群像劇の秀作でした。

笑いの壷は全くわからないし、フェラやらホモセクシャルやら、SEXやら、その手のことはやり放題ですが、さすがに、リズムに乗った映像と、小気味良いテンポでみせる物語は、ばからしい中にも、さすがといえるものがある。

映画は、飛行機や旅行鞄を彩ったイラストアニメで幕をあけ、軽い音楽が、この作品の内容を暗示させる。そして、物語が始まると、とある空港で、今にも出発せんとする飛行機に荷物を積んだバゲッジカーが走り抜けてくる。

車輪止めをはずす男アントニオ・バンデラスとそのバゲッジカーの運転手の女ペネロペ・クルスはどうやら恋人どうして、子供ができたというファーストシーン。

そして飛び立った飛行機は、車輪装置が不具合で、緊急着陸をする飛行場を探す羽目に。そのファーストクラスの乗客は一癖もふた癖もあり、客室乗務員のホモの男が、客の不安を取り除くために、幻覚剤をいれたジュースを配ったものだから、機内はなんでもありとなる。

新婚カップル、SMの仕事の女性、金融犯罪を犯した男、などなどの、お下品な展開に、操縦士も巻き込んではちゃめちゃ。

しかし、さすがにペドロ・アルモドバルのリズム感は見事で、流れる音楽やストーリーテンポにどんどん乗せていくし、どこか、心に迫る感動のエピソードも交えて、ラストは、緊急着陸したラ・マンチャ空港でのほんのり感動させるハッピーエンドで幕を閉じる。

全編に漂う、軽い旋律は絶妙の一本で、笑いの中身は全くのれないが、さすがに、下品ながらもクオリティは高い。これがアルモドバルの世界観かもしれませんね。