山村の小さな村の一軒の家、そこで暮らす主人公とその恋人。しかし、主人公は、東京の大学に行きたい。大学をでて、一人前になり成功したいと考えている。
何とか大学へ行くが、世の中はそう甘くなくて、挫折して村に帰ってくる。しかし、父が残してくれた郵便年金証書を母が出してきて、もう一度やり直しなさいといわれ、未来に向かっていく。恋人とも結婚しめでたし愛でたし。
郵便局の宣伝映画らしいが、構図がとってもきれいで、俯瞰でとらえる村のショットや、主人公と恋人が縁側で座るカットなど、丁寧に計算された画面が映画らしさを見せてくれる。
サイレントの字幕が、独特で、非常に読みにくかったけれど、単純なお話であり、これはこれで楽しむことができた。
「団栗と椎の実」
30分ほどのたわいのないお話である。しかし、子供たちの生き生きした動きが実に的確なカメラアングルと演出で描かれていく。
物語は、もらい子であるが、都会から田舎にやってきた少年。村の少年たちのようなワイルドな遊びができずに、つまはじきにされる。そんな子供に厳しく接する父親。そして、ある日、父親は少年を一人で栗の木に登らせて、帰ってくる。雨が降ってきたので父親がいってみると、子供はいない。しかも、栗を山ほどとって帰ってきたのだ。
そこから、急に子供らしい野生をもちはじめ、村の子供たちと仲良く遊ぶ。
村の大将と喧嘩をするシーンの生き生きしていること。冒頭の、大将が子供たちを集める時に、橋のど真ん中で大声を出すファーストシーンから、この映画はぽんぽんと弾むように展開していくのである。
画面づくりも丁寧で、スタンダードなのに、大勢の子供たちを画面の中に配置し、山村の風景をとらえるショットの数々も美しい。
たわいない話ながら、さすがにこの時代の作品ははずれがないなと感じてしまうのです。
「奈良には古き仏たち」
奈良を描くドキュメンタリーである。珍しい一本であるが、製作された1953年ごろのならの風情を楽しむだけでも面白い一本で、ドキュメンタリーとはいえ、あちこちに清水宏らしい映像がちりばめられている。