くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アナと雪の女王」「あなたを抱きしめる日まで」

アナと雪の女王

アナと雪の女王
日本のアニメーションは、未だにディズニーアニメを越えていない。それが私の持論であるが、今回の作品もディズニーの底力を見せつけるすばらしい作品でした。アカデミー賞長編アニメーション賞、主題歌賞もとっている。

映像表現の美しさ、エンターテインメントの組立のうまさ、そして、本当にプロのアニメーターが、本物の歌で彩られてトータルな夢の世界を構築していく、その完成度の高さにうなってしまいます。

難点を言うと、若干ストーリーが荒いところ、登場人物の描写の弱いところがあるのですが、それを構成の緻密さですべてカバーして走り抜けてしまう。これが、本物のアニメーションです。

戴冠式の後、エルサの魔力が庶民にばれてしまう、そのまま、雪山に逃げていく下り、宣伝にも何度も登場する、メインテーマ曲をバックにした画面は、寒気がするほどに美しい。こういうシーンが、さすがに世界ではディズニーだけです。そして、ラストシーン、エルサが、あわや斬られてしまうところへ飛び込むアナ、そして、一瞬で凍り付くテンポのリズムのうまさも絶品。

映画が始まると、氷の下から透かして見上げるシーンに、ふんわりと人の影が映ってくる。このファーストシーンも息をのみますが、原題の「FROZEN」と現れる下りの見事さもすばらしい。

幼いエルサが、妹アナにせがまれて、お城の中で雪遊びをするシーン、まるで踊るような映像にわくわく感が起こってきます。そして、それに続く、アナの事故、城の閉門、両親の死、何度も姉と遊ぼうとするアナの寂しい心から、戴冠式へ。一気にストーリーの本編へ流れる。

姉エルサを助けるために森に向かうなアナ、途中で合流するクリストフととなかいスヴェン、雪だるまオラフとのディズニー映画らしいお供が加わり、ストーリーが進んでいく。

手放しで、拍手するほどではないかもしれないが、それは、ディズニーに対する期待の大きすぎるためでしょうか。それでも、映画が終わり、エンドクレジットまで、決して手を抜かない作り方に頭が下がることは確かなのです。

すばらしい一本に出会う瞬間が、未だにディズニー映画にはありますね。

同時上映で、「ミッキーのミニー救出作戦」という短編も併映、これもおもしろかった。


あなたを抱きしめる日まで
これは良い映画でした。なかなかの秀作でした。とにかく、カメラのテンポがとても美しい。反復される映像、繰り返されるユーモアあるせりふ、さりげない演出に、きらきらと光るものがあります。もちろん、ジュディ・ディンチの名演技もあったと思いますが、すばらしい作品でした。

映画は、一人のBBCのジャーナリストマーティンが、健康診断を受けている。一方で、彼が仕事で首になる下りのニュース映像がかぶる。さらに、一人の老婦人フィロメナが、かつて若い頃に一人の息子アンソニーを失う課程が語られる。

細かい繰り返しと、的確な人物描写で、この二人の姿を紹介する導入部が実にうまい。

そして、さりげなく二人は紹介され、マーティンは、フィロメナの息子を捜す手助けをすることになる。時折、機関銃のようにしゃべるフィロメナの、ちょっととぼけたせりふと、本で身につけた物知り顔な知識が、ぽんぽんと飛び出すユーモアと、それに答えるマーティンの掛け合いも、実に巧妙。

監督はスティーブン・フリアーズという人です。

まず二人は、フィロメナがかつていた修道院を訪ねるが、妙によそよそしい。この展開から、ただの、人探し映画ではないことがわかる。そしてミステリアスなムードをい漂わせる。何気ないアイルランドの景色も、美しくとらえられ、実話とはいえ、真摯な映像で語るストーリーは実におもしろい。

やがて、マーティンたちはアメリカに渡るが、、そこで、マーティンは、データベースから、アンソニーは、養子になった後、マイケルという名前になり、ブッシュ大統領レーガン大統領の主任法律顧問になっているのを知る。そして、すでに亡くなっていることも。ここまでで、まだ全体の半分あたりだったから、物語はさらに奥の深いところにいくのだと予感させるのです。

そして、アンソニーは実はゲイで、エイズが原因で死んだことがわかり、その恋人ピートに会うと、なんとアンソニーも、余命少なくなった頃に、アイルランドへ母親を探しに行ったのがわかるのだ。この急展開から、マーティンたちは再び当初の修道院を訪れ、そこにマーティンの墓を見つける。

修道院アメリカに子供を売っていたという衝撃的な内容なのですが、一人の母フィロメナの息子への思いを誠実に描いた映像が実に美しく、決して陰惨にならないフィロメナの受け答えが、この作品を良質な一本にまとめています。

細やかな光や、ガラスをうまく利用した映像作りも美しい一本で、なかなかの秀作でした。