「カストラード」
ボーイソプラノを維持するために、去勢された歌手=カストラードで、伝説的な人物ファリネッリの生涯を描いた物語。映画は一人の少年が歌っている所から始まる。
突然、二階の廊下に現れた全裸の男が、叫び声とともに飛び降りる。その幻影が、テーブルに突っ伏していた青年、主人公のファリネッリが起きあがるショットへ。傍らには兄リカルドがいる。彼は弟のために生涯をかけてオペラを書いている。
弟ファリネッリは、その声を維持するため、兄リカルドが弟を怪しい薬に体を浸らせ、その日以降、オペラを書き始めた。
ファリネッリは、その中性的な美貌から女性にももてるが、当然,SEXは愛撫だけになる。それを補うために兄リカルドが同じベッドに入ることを取り決めにしている。
耽美的な展開を中心に、透き通るようなボーイソプラノを歌うファリネッリのシーンの繰り返し、そこに、ヘンデルという希代の作曲家を登場させる。
物語は、伝記的な物語のみでなく、どこかファンタジックでさえある。去勢されたファリネッリが、時折、幻想に見る白い馬のシーン、めくるめく官能のベッドシーン、その幻想的な展開に酔いしれる一本。
ラストは、ファリネッリが、愛する女性とSEXし、同時にベッドに入った、リカルドの子供を身ごもるが、リカルドは一人戦場へ旅立ちエンディング。兄は、オペラを完成させ、弟ファリネッリのために子供を残し、二人の行く末を祝福して自ら去っていくのである。
映像は、特筆するものはないが、ストーリーの組立はしっかりしているし、ちょっとした佳作である。後は、好みの問題かな。
「闇金ウシジマくんPart2」
支離滅裂なエピソードの羅列で突っ走る人気コミックの映画版。前回に引き続き、どうでもいいお話が、あちこちに起こって、どうでもいい展開から、どうでもいいラストシーンに、なんのメッセージも、物語の核もないが、妙に好きなのが、この手のバイオレンスアクション。
まだ、第一作は、もうちょっと金融がらみのお話もでてきたように思うけれど、今回は、単純に闇金に翻弄され、落ちていく若者たちをひたすら描いていく。
ただ、最近やたら売り出し中の門脇麦が、なかなかの位置で登場するのが、何とも、俳優の浮き沈みはすごいものがあるなと感心してしまうのです。
今回も山田孝之のクールな主人公は、いつも通りだが、もう少し、前作のように人間離れした強さを見せても良かった気がする。
この手の映画は、少々長くても退屈しないし、行儀悪く見ていても罪悪感がない。その肩の凝らない娯楽に浸るひとときとして、十分楽しかったです。