「リトルフォレスト夏編・秋編」
まったり、ゆるゆるの癒し系映画。これといった物語はなく、山深い山村で一人で自給生活をする主人公いち子の姿を、せりふは程々に、一人語りの形式で描いていく。時折、母親の姿を交え、都会にいた一瞬を描くがほとんどは村の人々との交流になる。
彼女が、自分で育てた野菜や、自然の植物などを使って作る料理の数々を素朴なタッチで描写していくのが本筋となる。
今回は夏編と秋編。夏編が終わるといったんエンドクレジットが流れ、改めて秋編になるという、変わった構成であるが、これというストーリーもないので、淡々とエンディングである。
橋本愛の姿を見に行くだけの結果になった気がしないでもないが、ゆるゆると流れるスローライフな世界に一瞬浸って、日頃の喧噪や煩わしいことを忘れる一瞬になった気がしないでもなく、その意味で、楽しめたのかもしれません。
「女の小箱より 夫が見た」
男と女の情念の世界、典型的な増村保造作品であるが、作品の出来映えは、個人的には中くらいの映画でした。
物語は、普通の会社の社長になり、実業家として成功しようという野心のある、キャバレーのオーナー石塚と普通のサラリーマンで石塚に乗っ取られようとしている会社の株式課長の男、そしてそれぞれの妻とフィアンンセ。
男たちは出世のために、妻やフィアンセを道具として利用しようとし、女たちは、男のために体を捧げるが、終盤で、夢をとるか自分をとるかの選択をせまる。
結局、女の強さに、崩れていく男の物語としてのラストシーンとなるのだが、息苦しいほどの緊迫感も見られず、若尾文子らの裸のシーンだけが妙に目立つだけの映像になっている。
ねちっこい女たちの描写はみられるが、今一歩それが、ストーリーの中に絡み足りない結果、いつもの迫力が描かれなかった気がします。しかし、一方で、典型的な増村保造作品であり、女のために、なにもかも捨てていく男の姿は、ある意味、増村作品の究極の世界なのかもしれません。