Cinema-Topix
「私は何よりもいちばんに、ストーリー・テラーであることにこだわっています」
ベビーも生まれ、公私共々順風満帆のアカデミー賞俳優ラッセル・クロウの最新作は、アカデミー賞10部門にノミメートされた、空前のスペクタクル・ロマン。これはパトリック・オブライアンの傑作・海洋冒険小説を、「いまを生きる」「トゥルーマン・ショー」のピーター・ウィアー監督により映画化したものだ。
時は1805年、フランスのナポレオン勢力の拡大により、英国軍は苦戦を強いられていた。そんな中、不敗神話を誇る船長ジャック・オーブリー(ラッセル・クロウ)率いる英国のサプライズ号も戦いに参戦。荒々しい海の男たちだけではなく、まだ幼い少年兵士たちまでもが乗船し、敵軍に対して果敢に戦いを挑んでいく。
この広大な海原を舞台に描く男たちの信頼と絆のドラマを引っさげ、ピーター・ウィアー監督が来日。残念ながら共に来日が予定されていたラッセル・クロウは、肩の脱臼のためにあえなくキャンセルに。でも、その分監督が、サプライズ号を模したセットを背にして、作品に対する思いのたけをめいっぱい語ってくれた。
まず最初の質問は、この作品の肝であるキャスティングについて。
「ラッセル・クロウの主演は、私が唯一お願いした点です。それは彼が私と同じオーストラリア人だからという理由からではなく、彼がリーダーとしての素質をもち、その風格をかもし出している俳優だからです。そして彼を抜擢した決断は間違っていなかったと思います。
また、今回は時代考証をとても大事にしました。まるでタイムスリップをするように、あの時代に招き入れたいと考えました。だからディテールが重要で、特に出演する俳優の顔にはこだわりました。20世紀初頭の写真や絵画を参考にして、現代人っぽい顔立ちの俳優ではない人をキャスティングしたんです。たとえば、ハンバーガーが似合うような顔の人や、いかにもアメリカ人らしい俳優などは合わないと思ったからです」
監督がこの原作を読んだのは10年以上も前であり、その当時の意外なエピソードも登場。
「私は『トゥルーマン・ショー』を監督した時に、スタジオ側から『記念に何がほしい?』と尋ねられ、『それなら「マスター・アンド・コマンダー」のハードカバーの原作20巻がいい!』と答えたんです。そしたら、初版刷りの20巻をプレゼントしてくれました。でも、その時はまさかこの小説を自分が監督することになるとは夢にも思っていなかったです(笑)。もちろんすごく好きな小説だったけど、映像化することはかなり難しいと思っていたから」
思い入れの強い原作を映画化できるなんて、監督冥利に尽きるというものだ。
実際に映画化するにあたって、変更した点もあったという。たとえば映画の舞台となっている1805年というのは、原作によるとイギリス対アメリカの戦争が繰り広げられているが、映画ではイギリス対フランスという設定となっている。
「原作の20巻のほとんどが1850年代のイギリス対フランスのナポレオン軍との戦いが舞台となっているので、映画の方もそうしました。でも今回、国というのはあくまでシンボルにすぎず、いちばん大切なのは敵軍であるアケロン号をファントムのように描きたかったという点です」
本作でいちばん伝えたいメッセージについては、さらりとこう答えた。
「まず、私はいちばんにストーリー・テラーであることにこだわっています。だから、映画で何かメッセージを伝えようというよりは、登場人物たちと感情を分かち合い、彼らの人間性に触れてほしいと願っているのです。あの時代にこういうことがあったということをありのままに伝えることが大事だと思っています。200年たっても人間というのはさほど変わらないし、彼らの生き様からなんらかのエネルギーをもらっていただければいいかなと」
「監督として私がこの映画に参加できたことは素晴らしい経験だった」と、満面の笑みを浮かべて訴えていた監督。来日記者会見の後半で花束贈呈のために登場した財前直見からも「映画で描かれていた男のロマンに嫉妬しました!」との興奮気味なコメントが。そう、確かに男気むんむんの闘志や絆、友情、師弟愛など、あらゆる要素が盛りだくさんに詰め込まれたこの1本。アカデミーの賞レースも盛り上がっている今、ぜひチェックしておきたい1作である。
公開作品・公開待ち作品紹介
嗤う伊右衛門
[監]蜷川幸雄
[原]京極夏彦(角川文庫刊)
[総]角川歴彦
[脚]筒井ともみ
[撮]藤石修
[音]宇崎竜童
[美]中澤克巳
[出]唐沢寿明 小雪 香川照之 椎名桔平 池内博之 井川比佐志 六平直政
筒井ともみ脚本作品
・ 宇宙戦士 バルディオス 1981
・ ヘッドフォン・ララバイ 1983
・ それから 1985
・ 紫式部 源氏物語 1987
・ 微熱少年 1987
・ 華の乱 1988
・ 風の又三郎 ガラスのマント 1989
・ 119 1994
・ 失楽園 1997
・ 失楽園 1997
・ 失楽園 海外版オリジナル・ヴァージョン 1997
・ 不機嫌な果実 1997
・ 不機嫌な果実
唐沢寿明出演作品
・ おいしい結婚 1991
・ ハロー張りネズミ 1991
・ 未来の想い出 Last Christmas 1992
・ 高校教師 1993
・ 怖がる人々 1994
・ バースデイプレゼント 1995
・ 君を忘れない 1995
・ ラヂオの時間 1997
・ 恋は舞い降りた。 1997
・ 恋は舞い降りた。 1997
・ みんなのいえ 2001
・ マネーざんす 2001
・ 真夜中まで 2001