2/15Cinema-Topix
カンヌ、ベネチアと並ぶ世界三大映画祭の一つである第五十四回ベルリン国際映画祭は、十四日コンペティション部門の最優秀作品(金熊賞)にファティー・アキン監督の「ゲーゲン・ディー・ワント(壁に向かって)」を選んだ。日本映画は、今回はコンペ部門二十三作品のノミネートにも漏れた。
金熊賞受賞作は、ハンブルグに住みイスラム教の伝統から逃れようと偽装結婚したトルコ系移民の若者の愛と破局を描いた。
ドイツ映画の最優秀作は1986年以来。
韓国映画「サマリア」の金基徳監督が監督賞を受賞した。
今回、日本映画に主要賞はなく萩上直子監督の子供向け映画「バーバー吉野」が独社会団体の推薦作に選ばれたのにとどまった。
Cinema-Now
「国家権力の側にいる刑事がコソ泥に教えを乞うて名刑事になったって話でしょ?そんな映画はこれまでにないですよ」
日本が誇る二大演技派俳優・役所広司と柄本明。
そのふたりががっぷり四つに組んだ芝居が堪能できる、この上ない贅沢な映画が誕生した。それは、元群馬県警警察官である飯塚訓が書いたノンフィクション短編集「捕まえるヤツ 逃げるヤツ」(文庫版タイトル『油断大敵 刑事部屋事件簿』)に書かれている、実在の刑事たちをモデルにした映画「油断大敵」だ。本作で監督デビューを飾る成島出監督に話を聞いた。
これまでにも、数々の作品で助監督や脚本を手掛けるなど映画づくりに深く関わってきた成島監督が、監督デビュー作としてこの作品を選んだ理由はなんだったのだろうか。
「国家権力の側にいる刑事がコソ泥に教えを乞うて名刑事になったって話でしょ?そんな映画はこれまでにないですよ。人生を変えてしまうような出会いは、10代、20代が圧倒的に多い中、30歳を越えて40歳になろうかというオヤジが、そんな出会いをしてしまうところが映画的でおもしろい」
男手ひとつで娘を育てる新米刑事が、凄腕とささやかれる伝説の泥棒を捕まえるところからこの物語は始まる。刑事らしくない実直な新米刑事に惹かれた泥棒は、「捕まえるヤツがとろいんじゃ、逃げるヤツも面白くねぇ」と、新米刑事に泥棒のノウハウを教え込み、刑事の仕事が好きな新米刑事も、着実に一流の泥棒刑事へと成長していく。
「役所さんと柄本さんはお互いを高め合える関係なんです」
監督デビュー作であるにも関わらず、役所×柄本の共演が実現したのは、監督がこれまでの仕事で培ってきた人間関係の賜物だろう。監督は、役所広司主演の「大阪極道戦争 しのいだれ」(’94)の脚本を手掛け、柄本明の初監督作「空がこんなに青いわけがない」(’93)の助監督も務めている。
ふたりをよく知る監督は、
「芝居って相性があって、どんなに名優同士がぶつかってもダメな場合があるが、役所さんと柄本さんはお互いを高め合える関係なんです」と語った。
そんな彼らの相性の良さを目の当たりにした出来事があったという。
「クライマックスの取調室のシーンで、役所さん扮する刑事が、約10分もの間、柄本さん演じる泥棒を前に独白をするシーンがあるんですが、カメラのないリハーサルの段階で、台本も持たず、一字一句間違えず、方言も完璧で最後まで一気におっしゃって、『俺は泣かねぇぞ』って言っていた柄本さんの顔がキュ〜っと赤くなっていったんです。ふたりの科学反応というか、演出ではなしえないことがおこったんです」
実話をもとにしたストーリーと、名優2人の共演を以ってして監督が作りたかった映画とは、正統派の日本映画だったよう。
「日本映画を撮っている者として、ハリウッド映画に目が向いているお客さんを取り戻したいんです。例えば、海外旅行も良いけれど、たまには和風旅館に来てごらんなさいと。海外旅行のお客さんを取り戻すには、和風の温泉旅館しかないんです」
監督の言葉通り、一見地味な作品ではあるが、刑事と泥棒のコミカルなドタバタ劇、彼らの間に生まれた奇妙な友情、そして父と娘の親子愛を映し出し、笑って泣いて、元気になれる娯楽映画に仕上がっている。
公開作品・公開待ち作品紹介
油断大敵
[監]成島出
[原]飯塚訓
[総]尾川匠
[製][企]成澤章
[脚]小松與志子 真辺克彦
[出]役所広司 柄本明 夏川結衣 菅野莉央 前田綾花 水橋研二 津川雅彦 奥田瑛二 淡路恵子
成島出監督作品
・ 大阪極道戦争 しのいだれ 1994
・ シャブ極道 1996
・ 恋極道 1997
・ an adolescent 少女 2001
・ アカシアの道 2001
・ 笑う蛙
役所広司出演作品
・ 闇の狩人 1979
・ さらば、わが友 実録大物死刑囚たち 1980
・ 森は生きている(1980) 1980
・ ひめゆりの塔(1982) 1982
・ 遠野物語 1982
・ 鬼龍院花子の生涯 1982
・ タンポポ 1985
・ 女咲かせます 1987
・ アナザーウェイ D機関情報 1988
・ オーロラの下で 1990
・ 極東黒社会 1993
・ 紅蓮華 1993
・ 大阪極道戦争 しのいだれ 1994
・ KAMIKAZE TAXI 1995
・ Shall We ダンス? 1996
・ シャブ極道 1996
・ 眠る男 1996
・ CURE 1997
・ うなぎ 1997
・ バウンス ko GALS 1997
・ 失楽園 1997
・ 失楽園 1997
・ 失楽園 海外版オリジナル・ヴァージョン 1997
・ たどんとちくわ 1998
・ 大往生 1998
・ 絆 -きずな- 1998
・ ニンゲン合格 1999
・ 金融腐蝕列島〔呪縛〕 1999
・ 降霊 1999
・ EUREKA 2000
・ SWING MAN 2000
・ どら平太 2000
・ カリスマ charisma 2000
・ 回路 2001
・ 赤い橋の下のぬるい水 2001
・ 突入せよ! あさま山荘事件
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新着DVD紹介
ロジャー・コーマン DVD-BOX
「黒猫の棲む館」や「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」を手がけ、コッポラ監督にも多大なる影響を与えたと言われる、カルト映画の巨匠ロジャー・コーマン。彼のスリラー代表作3本をBOXでリリース。
「血まみれギャングママ」
1930年代初頭。不況で家を失いそうになった主婦ケイトは、4人の息子を引き連れてギャングになった。最初は観光気分で強盗を繰り返していたケイト親子だが、情夫ケヴィンにそそのかされ、金持ちのベンドルバリーの誘拐を計画する。(1970年・米)
「恐怖のロンドン塔」
王位簒奪の野望に酔うグロスター公リチャードは、長兄のエドワード4世の死期が近いことを知ると、次兄クラレンス公ジョージを殺害。その後、エドワードの跡継ぎである二人の王子をロンドン塔に幽閉して、念願の王位に就いた。(1962年・米)
「X線の眼を持つ男」
視力を向上させる目薬を開発したザビア博士が、新薬の効果を試してみると、物が透けて見えるようになった。だが次第に透視能力が進行し、同僚の誤診を発見したためにトラブルに巻き込まれ、ついには殺人罪で警察に追われるはめになってしまう。(1963年・米)