くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「サンダーバード」

オリジナル版を知る人は果たして、どれくらいいるのだろう。
約四十年前になる。テレビのカラー放送が開始され、いよいよ、テレビ社会が本格化しはじめた頃、イギリスのテレビドラマ、サンダーバードがNHKで放映された。
人形劇でありながら、不自然さよりも、見事なメカニックデザインや、物語の組み立ての緻密さ、時代背景が近未来という設定などから、当時の子供たち(もちろん私も)は熱狂し、隊員たちがそれぞれの乗り物に乗るときの移送装置などの真似をして遊んだ。

もちろん、プラモデルも発売されたが、一号から五号までそろえられた子供は英雄のようにもてはやされた。
確か、五号は一番高くて、オルゴールが付いていたと思う。
二号が一番人気で、中に装備されたミニサイズのモデルなどで遊んだ。
三号は五十円の一番廉価モデルであった。
別格として、ペネロープ号があり、これを持っていることは一つのステイタスであったが、友達同士で遊ぶときは使い道がなかったといえる。

さて、今回の映画はそんな名作の実写版リメイク。
冒頭のタイトルバックからして、アニメを使い、オリジナルにオマージュを捧げるようなそうでないようなスタートを切る。
物語はオリジナル版の前日談のような物語で、アランはまだ隊員ではない。
物語の構成ははっきり言って、あまい。一時間三十分が長く感じるのは組み立てのミスといわざるを得ない。
オリジナル版の一話が一時間であるから、映画版にするなら、もっと緻密な作り方もできたはずである。

しかも、オリジナル版に見られる緻密な設定を無視した物語は残念。
追跡装置は自動的に感知できるというのがオリジナル版であり、また、隊員の姿はテレビや写真に写さないというのが定番の設定であった。
しかし、今回の作品では当然のように人々の前に隊員が姿を現す。
テレビ中継も何の制約もなく行われる。オリジナルを知る人にはつらいね。

オリジナル版はそのSF的な緻密な物語の中に、コミカルな会話や隊員たちの人間ドラマも多すぎない程度に挿入され、かちかちになってみなくても笑いもあり、感動もあった。
それを生かそうと緊張しすぎた結果が今回の映画版の失敗であろう。

ただ、ペネロープのソフィ・マイルズは最高に素敵で、今回の映画で彼女だけが光っているのが救いである。
ソフィ・マイルズは将来がかなり期待できる素敵な女優さんである。
アメリカ俳優にない品のあるルックスとシャープな身のこなし、時折見せるコミカルな細かい表情。
さらに、美しさとかわいらしさを併せ持った独特の個性、床顔も素敵で、これだけ生まれながらの才能を持った所有さんに久しぶりに会いました。

オリジナルが素晴らしければそれだけリメイクは難しいし、ましてやオリジナルがアニメや人形劇などの場合はそのファンタジー性もリアルに表現しないといけないので、大変なことになる。
今回の映画、失敗かもしれないが、見てそんはしない価値は充分ある力作でした。スタッフの方の努力に感激しました。