日本映画お得意の様式美の世界が久しぶりにスクリーンによみがえりました。
美しい。!
冒頭のタイトルバックからして文楽の舞台から始まる下りは見事。
しかも随所にやや押さえているもののサイケデリックな光の演出が見られ、日差しや家の中に漏れる光や雪、明かりなどに様々な工夫が見られるのです。
壮大な物語故に素直に大作として描こうとすると緞帳になりがちな物語をそうして細やかな光の演出で見事に風格を持たせている行定勲監督の力量には頭が下がりました。
真っ白な北の大地が描かれるかと思えば鮮やかな紅葉の風景をバックに物語が展開し、春になれば雪水が流れる川の岸には黄色い花がきらりと一輪咲いています。
もちろん挿入部分の淡路の春の景色も花盛りの暖かい風景を描いて私たちを楽しませてくれます。
そしていきなりの文楽の首切りのシーンから一気に本編に入って行く。
素晴らしいシーンから始まって壮大な北の物語がスタート。
どんどんと物語が進む中に主人公たちの心のドラマが映し出されるのですが、さすがに吉永小百合はすごい。
彼女がスクリーンにアップになると映画が大きくなるのです。
さすがに映画黄金期のそして日本映画史に燦然と輝くと言っても良い大女優。この迫力は体の大きな渡辺謙も小さく見せてしまうのだからすごい。
「ラストサムライ」でトム・クルーズの前に渡辺謙が現れるとトム・クルーズでさえ小さく見えたのに吉永小百合はそれ以上の風格があるのでしょうか?
思えばトム・クルーズに比べれば吉永小百合は映画史の中では雲の上のようなキャリアなのですから・・・
しかし、エンドクレジットには大勢の一流陣が配役として名を連ねているのにほとんど気がつきませんでした。
おそらく、これだけのレベルの俳優をハリウッド的に作れば何百億でしょうね。日本はやはり安すぎるのでしょうかね。
話はそれましたが、三時間近い作品にもかかわらずドン調査の感じない凝縮された演出はお見事。大作にふさわしい素晴らしい作品でした。
もう一つ細かい演出に感服したシーンをご紹介します。
注(ラストを知りたくない方は読まないでください・・・)
クライマックス、豊川悦司をかばおうとした吉永小百合が鉄砲に打たれるのですが、その後その傷を押さえる彼女の手は真っ赤な血に濡れ、その血が妙に毒々しく、その血糊の手で豊川悦司の手に包まれるところはリアル。こんな血糊の手は始めてみました。
非常に細かい演出で感嘆しました。
難を言えば、きりがないのでそれはまたそれとしておきましょう。
とにかく良い映画でした。日本映画、日本発の大作ここにありです。!!
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