くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「レイクサイドマーダーケース」

東野圭吾は私と同い年の1958年生まれなのです。しかも大阪府出身。出身大学は大阪府立大学工学部電気工学科というからばりばりの理系なのです。
そのせいでしょうか、非常にプログラム的に整然と組み立てられた物語になっているのです。

仲間由紀恵主演の「g@me」も見事に機械的に組み立てられた物語でした。

さて、今回の「レイクサイドマーダーケース」もまたしかり。緻密に組み立てられたストーリー構成は寸分の隙もなく私たちに犯人探しを要求してくるのです。
推理ドラマなので物語の核心には触れられませんが、お受験をテーマにしながらもどこか非常に恐ろしいホラー映画になっています。

三人の子供たちの中でその中心的な演技をする牧野有紗の存在感がなかなかのものです。
一つ一つのセリフといい、アップの時の視線の使い方といい。なかなか物語を引き締める効果があります。
さらに、薬師丸ひろ子もなかなかのものです。デビュー当時「跳んだカップル」の頃のような叫ぶようなセリフ回しはさすがに年齢と共に押さえられるようになってきて、一方で顔や目の表情で細やかな演技ができるようになってきました。

実際、これらの二人の演技が名優役所広司が目立たないのだからすごい。
しかしそれがまたこの作品の弱点かもしれないのです。役所広司こそがこの作品のテーマを雄弁に語る存在であるからです。

青山真治監督のカメラワークは天助からの俯瞰を多用し、時に長回しで見せるかと思うと、どーんとアップで核心をつき、また広く画面を撮って人間の心の動きを微妙なニュアンスで描く、どこか毒のある画面作りは私の好みとはいえませんが、推理ドラマには最適の演出家でしょうね。

中盤あたりで犯人の姿がかいま見えるように思えるところもありますが、そこが東野圭吾、「g@me」同様、さごまで観客を欺き通しますよ。
感激するほどおもしろいドラマ仕立てではありませんが、非常に奥の深い物語になっていて、ラストシーンは「太陽がいっぱい」を思わせるどきっとするお話になっていてなかなかの佳作でした。


レイクサイド 新装版
東野 圭吾

さまよう刃 探偵倶楽部 片想い 超・殺人事件―推理作家の苦悩 神のふたつの貌