くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バタフライエフェクト」

バタフライ・エフェクト
評判がいいので、予定にしていなかった「バタフライ・エフェクト」を見てきました。
バタフライ・エフェクト」ーーーある場所で蝶が羽ばたくと地球の反対側で竜巻が起こる。初期条件のわずかな違いが将来の結果に大きな違いを起こすというカオス理論のことーーーー

まさにその通りに物語は一人の青年(当初は少年)が過去を変えることができる能力に目覚めて、愛する女性を護るために奔走する姿を描きます。
といっても、そこにはどこかSF的なところがあるはずなのですが、そんなところはみじんも感じさせずに当然のように物語が進むところがこの映画のすごいところです。

冒頭シーン、いきなり一人の青年(病院の入院服を着ているのでここは病院であろう)が何かから逃げている。
やっとの思いで一つの部屋に入り、そしてなにやらレポートボードに文章を書き始める
「この手段が成功すれば、彼女は助かる、しかし失敗すれば僕は死んでしまう・・・」
そして物語は彼の少年時代に戻るのである。

日常生活の中で突然、記憶がとぎれる瞬間がある一人の少年エヴァン、記憶がとぎれると、その時間何をしていてどこへいたのか全く自分では思い出せない。
彼の父親はいまは精神病院に入っていて、実は母親は息子に父親の異常さが遺伝しないかと心配で仕方ないのです。

母は息子に、とぎれた記憶を呼び起こす手助けにと日記をつけることを進め、エヴァンは7歳の時から欠かさず日記をつけはじめます。

こうして物語は本編に入っていくのですが、エヴァンが記憶がとぎれる時のフラッシュのような効果が、見ている私たちをある種の感覚を形作っていき、しかもそのカットのつなぎ方がなかなか効果的なジャンプカットなので、そのたびに引き込まれてしまいます。
そんな展開がしばらく続き、ちょっと観客が落ち着いた頃、物語はさらに7年後になって、エヴァンは大学生の姿に・・・

ここからがいよいよこのエリック・プレス、マッキーグラバーのコンビ監督の力量が発揮されてきます。
ふと読み返した日記を読んでいると、見る見る日記の文字が浮き上がって揺れはじめる。まるで「ネバーエンディングストーリー」や「ジュマンジ」の世界です。
次の瞬間、周りの景色がゆがんでエヴァンは読んでいる日記の時期にさかのぼっているのです。

そして、そのときにとぎれていた記憶の部分を体験します。
日記を読み返して過去に戻るたびにとぎれていた記憶の時間を体験し、そしてある時、そこで別の行動をしたことで目が覚めると、現代の自分の境遇や周りの人物、友人達の状況が一変していることに気がつく。

この繰り返しが続くのですが、まるで「バックトゥーザフューチャー」を何度も見ているような錯覚さえも覚える展開に、次は何が変わるのか今度はどこが変わるのかと見ている観客ははらはらどきどき。まるで何本もの映画を見ているような状況なのです。
しかし、そのそれぞれの物語の根底にはエヴァンが幼い頃から好きだった一人の少女ケイリー(エイミー・スマート)を護ろうとする気持ちが流れています。

エヴァンは何度も何度も最良の形になるように過去を変える試みをしますが、どれもがどこかで歯車が狂ってうまくいかない。そしてとうとうエヴァンが考えた最後の手段とは・・愛する女性ケイリーを幸せにするために考えたエヴァンの決断。
ラストはとにかくしんみりとしてしまいますよ。

監督をしたエリック・プレスとマッキー・グラバーのコンビはあのカリスマ的秀作「ファイナルディスティネーション」の続編「デッドコースター」の脚本を書いた人で、それを知ると、今回の作品のつなぎ方にどこか共通点があるようにも見えます。

短いシーンの連続と効果的な音楽挿入、大胆なカットと場面展開のスピーディさ派まさしく最近の監督の傾向かも知れません。
特に大作というわけではなく、きっちりとした脚本を丁寧に最大限の工夫を凝らして魅せようとする熱意がこちらにも伝わってきて、最後までのめり込んでしまいます。

なかなかの秀作でした。