くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「亡国のイージス」

亡国のイージス 上  講談社文庫 ふ 59-2亡国のイージス

福井晴敏の原作を先に読んだ。
とにかく原作は最高におもしろい。読み出したら止まらずに一気にクライマックスまでいってしまう。
細かい描写、緻密な伏線、それらが場面場面で生き生きしているのである。しかも非常に映像的な展開で引き込まれてしまう。

そんな原作がついに映画化、監督は阪本順治、期待できないはずがない。一方であの原作のスリリングさが映画になって具体化されたときによみがえるのかが心配であった。
結果として、映画化作品は非常に丁寧にまじめに原作を映画化している。何の遊びもなく徹底的に物語を追っていくので、ある意味では非常に好感が持てる映画であった。

しかし、そこに物足りなさを感じたのは私だけではないと思う。大筋の物語を忠実に描こうとしたために原作では緻密に描写されているここの人間ドラマが表にでてこないのである。
宮津副長がなぜこうした行動にでるようになったのか?如月行がなぜあんな組織に所属することになったのか?ヨンファがなぜこうした事件を起こそうとしたのか?仙石先任伍長の性格描写などが非常に物足りない。それほど原作は見事にそれぞれの登場人物の描写が緻密に行われているのである。

あまりにまじめに何もかも放り込もうとしたために結局、どれも完璧に映像化できなかった。
確かに自衛隊が全面協力しただけあって、ものすごいリアリティと迫力である。しかし、原作を知らなければこのドラマの奥深さが理解できないし、おもしろみもないのである。

もっとポイントを絞って、たとえば仙石伍長の活躍に徹底的に焦点を絞るか、ヨンファの愛国心に焦点を絞るか、宮津副長のドラマを中心に展開させるか、つまり、一つに的を絞った脚本にすべきであったのではないでしょうか?小説と映画は違うのですから、原案として「亡国のイージス」を使い、映像作品としてオリジナリティのある作品作りをした方が良かったのではないかと思います。

4048538578映画「亡国のイージス」公式大綱
福井 晴敏

『亡国のイージス』防衛のジョーシキ早分かりQ&A もうひとつの 「亡国のイージス」 ~オールアバウト・如月行~ 原作版《いそかぜ》 精密フィギュアセット 亡国のイージス オリジナルサウンドトラック HOW TO BUILD福井晴敏