くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「夫婦」「妻」「山の音」「舞姫」「浮雲」

夫婦
『夫婦』
1953/東宝/白黒/87分〈New〉
脚本:水木洋子井手俊郎 撮影:中井朝一 美術:松山崇 音楽:斎藤一郎 出演:上原謙杉葉子三國連太郎小林桂樹藤原釜足岡田茉莉子、滝花久子、中北千枝子  

『めし』に続いて倦怠期の夫婦に焦点をあて、日常に追われる内に通い合わなくなった夫婦間の心情を、転勤で余儀なくされる家探しと予期せぬ妊娠を軸に描く秀作。急病の原節子の代役を杉葉子が好演。


妻
『妻』
1953/東宝/白黒/96分〈New〉
原作:林芙美子 脚本:井手俊郎 撮影:玉井正夫 美術:中古智 音楽:斎藤一郎 出演:上原謙高峰三枝子丹阿弥谷津子三國連太郎高杉早苗中北千枝子新珠三千代  

結婚十年目、愛も冷め生活に張りを失っていた主婦が夫の不倫を知るが、妻の座にしがみつこうとする。決定的事件の起きてしまった夫婦と周囲の波紋を緻密な心理劇に仕上げ、普遍的な人間ドラマとなった。

山の音
『山の音』
1954/東宝/白黒/95分〈ニュープリント〉
原作:川端康成/脚色:水木洋子/撮影:玉井正夫/美術:中古智/音楽:斎藤一郎 出演:原節子山村聡上原謙長岡輝子杉葉子丹阿弥谷津子中北千枝子金子信雄、角梨枝子  

川端康成が戦後最初に発表した小説の映画化。息子の浮気に心を痛める舅と、その嫁の間に芽生えるほのかな感情に生起するエロチシズム。浮気する夫との忍従の辛さを噛みしめて寂しく生きる嫁を、原節子が好演。成瀬の代表作のひとつ。◆キネマ旬報ベストテン6位


舞姫
舞姫
1951/東宝/白黒/85分/16ミリ 原作:川端康成 脚色:新藤兼人 撮影:中井朝一 美術:中古智 音楽:斎藤一郎 出演:高峰三枝子山村聡岡田茉莉子木村功片山明彦、二本柳寛、沢村貞子、見明凡太朗  

考古学者とバレリーナの夫婦に訪れる倦怠期をバレエの世界を舞台に描く。『めし』に至る夫婦と子どもの悲哀を描いた秀作。川端康成原作、新藤兼人脚本。岡田茉莉子のデビュー作。


浮雲
浮雲
1955/東宝/白黒/124分〈ニュープリント〉
原作:林芙美子 脚本:水木洋子 撮影:玉井正夫 美術:中古智 照明:石井長四郎 音楽:斎藤一郎 出演:高峰秀子森雅之岡田茉莉子中北千枝子山形勲加東大介千石規子金子信雄  

戦中から戦後にかけての混乱期をただ流されていった一人の女への鎮魂歌。どうしようもない男女の愛欲彷徨を、高峰秀子森雅之が名演し、日本映画史上に輝く成瀬畢生の傑作となった。 ◆キネマ旬報ベストテン1位・監督賞 ◆毎日映画コンクール作品賞・監督賞 ◆キネマ旬報ジャンル別オールタイムベストテン「ラブストーリー」日本映画第1位(2004年12月上旬号)


成瀬巳喜男監督特集として、この日上映の五本を一気に見てきました。
「夫婦」「妻」「山の音」「舞姫」「浮雲」の五本です。
それぞれについての感想を書くのは非常に難しいので、まず非常にテーマや展開のよく似た「夫婦」「妻」「山の音」の三作品について書いていきます。
いずれも倦怠期を迎えた夫婦がお互いの行動に無関心でありながらも浮気等により心が揺らめき離婚するか家庭を守るかの選択に揺れる心理を描いています。
どの作品に登場する人物も男性はどちらかというと悪役のような設定になっています。つまり、女性の心理描写に重点が置かれているのは成瀬監督の個性なのでしょうか

おそらく、学生時代や独身時代に見てもこれらの物語の奥深いテーマは理解できないところかも知れません。
徹底した殺陣の構図、つまり手前から奥に広がる背景を中心に物語が進んでいきます。
路地のこちら側から常に通りの途中にある主人公達の家の玄関口を伺うような構図で展開するのは、これが成瀬監督のスタイルなのであろうと納得してしまいます。

実際のところ、この三作品に成瀬巳喜男監督の偉大さは見いだせませんでした。というより、私がまだまだ勉強不足なのでしょう。作品としては素晴らしいことは感じられるものの、具体的に文章にできないのです。平凡な日常生活が淡々と語られる中で、小さな事件がものの見事なリズムで挿入されていく。まさしく、平凡な中の非凡というべき展開は感嘆せざるを得ません。

ただ、ほとんど静止したキャメラで物語を追っていく「夫婦」と「妻」に比べ「山の音」は大きくパンしたりクレーンキャメラのような動きのある演出もなされています。こうした違いはさすがにこれだけ一気に見てこそわかる変化かも知れません。

さて、「舞姫」ですが、これは「山の音」同様川端康成の原作です。この作品で岡田茉莉子がデビューしますが、彼女はどう見ても川端文学の少女像ではありませんでしたね。やはり、川端康成の少女像は「雪国」の岸恵子につきますね。

舞姫」はバレー教室が舞台になりますが、こちらも夫婦間の諍いや親子間の葛藤などがテーマに描かれています。この点でも先の三作品と似ているテーマです。

そして、最後、成瀬巳喜男監督の最高傑作にして、日本映画史に残る傑作「浮雲」をついに見ました。
さすがに前4作品とはその迫力が圧倒的に違います。
ココに登場する主人公は夫婦ではなく、不倫とはいえ男女の恋愛物語です。

戦後の混乱期を舞台に波乱に満ちた一組の男女が出会い、別れ、諍いを繰り返しながら、悲しい結末を迎える物語は素晴らしいというほかありません。
森雅之と高橋秀子の圧倒的な演技、さらにこれでもかと訴えてくる重厚な中にしっかりと計算され尽くしたような成瀬演出は見ているものをスクリーンの中に引き込んでしまいます。

この作品でも前4作品でも説明した縦に奥深い構図が頻繁にでてきますが、一方で斜めに俯瞰で取ったシーンや階段を多用したりして、変化に富んだ構図を作り出し、きめ細やかな背景を作り出して混乱した当時の世相を主人公達の心の混乱にかぶせるなどの素晴らしい組み立てもなされています。

所々に見せる細かいフラッシュバックがストーリーにリズムを持たせ、計算されたシーンごとの長さのテンポはどろどろした男女の物語を軽快に引っ張っていきます。
いつの間にか主人公達の心が一つになっていく様は見るものの胸を打ちます。

しかし、この作品の本当の良さを私が十分に理解できているのかはいささか疑問に思ったので、劇場で解説本を買って今読んでいます。本当の成瀬芸術を理解するために・・・

B0000XB5OC成瀬巳喜男 THE MASTERWORKS 1
成瀬巳喜男

稲妻 あにいもうと 木下惠介 DVD-BOX 第3集 銀座化粧 木下惠介 DVD-BOX 第4集

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